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第82回 国語教育全国大会を研究要項で自学する⑤(2019年12月8日)

 毎年参加している日本国語教育学会の夏の全国大会ですが、今年は仕事の都合で参加できませんでした。
 残念に思っていたところ、毎年一緒に参加している友人が、研究要項を貸してくれました。公開授業やワークショップはもちろんその場にいないとなりませんが、基調提案とそれを受けてどのような実践報告等がなされているかを分析することはできると思いました。
 そこで、今回からしばらく、大会の研究要項を自分で読んでいきたいと思って始めた連載の第5回目です。第1回目から第4回目は以下をクリックしてご覧下さい。

 国語科の学習活動は「言語活動」を通じて行われるため、「言語活動の充実」には学習者が本気になって活動する「場」の充実が欠かせないこと、普遍的な「場」の存在はないとしても、それを自覚したうえで、地域や学習者の実態に即した国語単元学習は常に開発され、実践報告されてきていることを、鳴島甫先生は基調講演でお話しされています。そして、国語単元学習は、これまでの実績からしても、時代の要請に十分にこたえうるという認識を示されています。

 そこで、本ブログでは前回の小学校に続き、今年の大会での中学校の公開授業である「単元名 言葉を見つめ、今改めて問う~われらこそ 水戸の初花~」(一年生)について分析してみました。

◯年間帯単元「最高漢字学年を楽しもう」/A「お気に入り漢字カードを交流しよう」/B「漢字遊び計画を立てよう」
茨城大学教育学部付属中学校 安 曉彦先生

①「本単元のねらいは、学習者が言葉による見方・考え方を働かせ、「問い」を立てる資質・能力を育成することである」とあり、8時間の単元計画の内4時間が問いを立てるための情報収集、グループでの問いの出し合い、問いの分類・整理そして精選にあてられている。

②「問い」はどのような題材と方法で立てられるのか。「本校の校歌に示された歌詞の意味を解釈する言語活動を設定」し、「著名な資料や地域に現存する資料から得られる情報、歌詞に関連する示された言葉と関連する様々な立場の他者との対話から得られる情報を関連付ける」としている。

③結果、「歌詞に示された言葉の意味を解釈し、改めて歌詞に込められた思いに対する自己の考えや意見を表明したり共有したりする」ことで、「主体的な学習者としての態度を涵養したい」とある。

 上記に対する授業者の手立ては三点で、
・「問い」を喚起する学習課題の提示
・「問い」を精選するために分類・整理する力を身に付ける方略
・「問い」の最適解を追及するための多様な他者との対話
である。

 今大会での公開授業は全8時間の内の第5時で、専門家、OB・OG、ボランティア活動者らゲストティーチャーへのインタビューやフリートークを行うものであったようです。どんな方々がどのくらいゲストティーチャーとしていらしたのかが誌面からだけではわからないのですが、授業を見ている会場の先生方も楽しくなる、にぎやかなものであったのではないかと想像されます。

 本時の目標は「立てた「問い」の最適解を得るために必要なことは何か」とあり、実はまだ問いの答えに到達する時間ではないのがわかります(問いの追及は第6・7時で、グループでの考察を通して行われます。その上で、第8時では「校歌の歌詞にはどのような思いが込められているか」と、「本単元で身に付いた力」について考察し、最後は自分の考えを200字の作文にしています)。

 会場のにぎやかな様子のみならず、生徒たちがどのような問いを立ててインタビューをしたのかも誌面ではわからないのですが、私もこの授業は生徒たちと一緒に取り組んでみたいと思わせる要素がいくつもありました。

 まず、問いを立てて「最適解」を求めるために、グループのメンバーやゲストティーチャーという「多様な他者」との交流や意見交換のあることです。一人では起こりえない気づきが学びへとつながるあり方、まさにアクティブ・ラーニングと言える活動ではないでしょうか。

 次に、「地域学習財を活用した、地域ならではの国語単元学習」であることです。新指導要領での「我が国の言語文化に関する事項」を我がこととして学べる教材である校歌が、地域の資料や地域で生活する方々と生徒たちとをまた、結び付けてもいます。

 そして、普段歌っている校歌の歌詞が、自分の生活に連なる生きた言葉として立ち上がっていることです。生徒たちが次に校歌を歌う時にはきっと言葉に思いがのることでしょう。
 普段あまり意識もしてこなかった言葉が、自分たちの活動によって生きた言葉に変化した経験を味わった生徒たちが、これまで以上に身の回りにある言葉に関心を深めていくのではないかという期待のある実践であると私は思いました。
 日本全国からいらした先生方も“地元にあるこれを教材として使いたい”というアイディアをいくつも思いつかれた授業であったのではないかと思います。

 最後に、「問い」が優れたものであればあるほど、対象への洞察は鋭くなり、理解が深まるというのは一般的にも言われていることです。もちろん「問い」を立てるだけに終わらず「最適解」へのアプローチまでひとそろいとなった構想という点でも注目すべき単元であり、実際の授業を見られなかったのはとても残念です。(つづく)


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