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古典ハイライト〔廃刊メルマガ記事より〕(2014年12月6日)
■古典ハイライト
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『児(ちご)の空寝(そらね)』
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僧「もの申しさぶらはん。おどろかせたまへ。」
(現代語訳)「もしもし。目をお覚ましなさいませ。」
高校古典の入門として定番の「児の空寝」ですが、僧のこのセリフの言葉遣いにはずっとひっかかっています。
児の身分が高いからだといった説明が確かに無難かもしれませんが、それだったら、大人の僧たちで最後に児を笑い者にするのはどうなのかと思います。
そこで私が考えているのは、漫画『おぼっちゃまくん』のような舌っ足らずの丁寧な言葉づかいです。
「もちも~ち、起きてくだちゃ~い」
子ども同士が大人の世界を真似した時に出てくる滑稽さのようなものが、このセリフにはあるのではないかと私は思うのです。
そうすると、僧たちが児の周りをそっと取り囲んで笑いをこらえているような映像が私の頭には浮かんできます。僧たちは最初から、児が寝たふりをしていたのがわかっていたし、お餅も食べさせてあげるつもりでいたのではないでしょうか。
この「古典ハイライト」は新シリーズとしてメルマガ内で継続する予定でした。しかし、当時の職場での激務に追われ、メルマガはこの記事を掲載した第33号で休止、その後廃刊の処理をいたしました。