海外人事実務のポイント①「赴任手続き」【明日から役に立つ!海外人事のヒント#5】
みなさんこんにちは。SaveExpats広報です。
SaveExpatsは、海外駐在員が健康で活き活きと働く社会を目指して活動していますが、駐在員だけでなく、それを支える海外人事の方々にもお役に立てればと思い、海外人事の皆様に向けたコラムをスタートしています!
これまでのコラムでは海外人事の仕事の意味や役割、特殊性について、考えてきました。さて今月からはいよいよ実務におけるポイントを7回に分けて一緒に考えていきたいと思います。実務ポイントの1回目は「赴任手続」です。
赴任手続の目的
駐在員の赴任が決定すると赴任に向けた手続きがスタートします。この仕事の目的はどのようなものでしょうか?
それは駐在員が現地での生活を早期に立ち上げ、本業である仕事で本来のパフォーマンスを発揮できるようにすることです。ここで重要になってくることは、「スケジュール通りに赴任してもらう」、「赴任に伴う不安をできる限り払拭する」の2つです。
赴任がスケジュール通りに進まないと、現地や交代要員が戻る職場のビジネスにダイレクトに影響し、最悪の場合には事業計画が達成できなくなる可能性さえ出てきます。
また、人は誰しも先が見えない状況には不安を覚えます。
不安が大きくなると新しいミッションへの前向きな気持ちも冷めてしまうかもしれません。
ポイントは2つ
赴任手続におけるポイントは、スケジュール管理とコミュニケーションです。
海外への渡航手続きは、ビザの取得など私達の努力だけではどうすることもできないアンコントローラブルな要素がたくさん存在します。
さらに赴任前は、後任者との引継ぎなど通常業務も忙しくなります。自分たちでコントロールできるタスクのつぶし込みに集中するためにも、スケジュール管理は欠かせません。
赴任に関する手続きは、人事担当者だけで完結するものはほとんどないといっても過言ではありません。実際に現地に行くのは駐在予定者本人ですし、手続きをすすめる際にも本人の都合が関係することがたくさん出てきます。それになにより、赴任前の不安を解消するためには、いつもの仕事をすすめるとき以上にコミュニケーションの量と質を増やす必要があります。
1.スケジュール管理
駐在員をたくさん送り出している企業であれば、赴任手続のスケジュールテンプレートが存在すると思います。縦軸に必要なタスクをならべ、横軸に赴任予定日を起点に赴任先国のビザ取得にかかる月数を織り込み、バックキャストで各タスクの期限が設定される一覧です。
タスクのなかで一番時間がかかり、重要かつ問題が発生しがちなのが、ビザ取得と健康診断です。ガイダンス終了と同時にこの2つのタスクに取り掛かってもらい、状況を共有しながらウオッチしていくことが大切です。
ビザ発給に関しては、安定している際にはだいたいのスケジュールは読めますが、テロや政治的な理由など相手国の一存で発給状況が一変することも珍しくありません。
また駐在員として派遣される社員は、経験豊富なベテランも多く、生活習慣病を抱えているなど、検診が一発OKとなることは少ない前提で、リスクをスケジュールに織り込んでおくことをおススメします。
2.コミュニケーション
赴任手続のスタートは赴任前ガイダンスです。
駐在規定の説明からはじまり、駐在員給与などの処遇取扱いや現地での生活全般、駐在員に特有の取扱いやルールの説明、現地事情の情報提供などが一般的な項目です。
ここで忘れてはならないのは、「駐在員のミッション」の説明です。
海外展開をしている企業が高いコストをかけて駐在員を派遣するのは、それなりの理由があります。
・会社の競争優位の源泉である日本国内のビジネスの仕組みを移植する
・現地法人を進出国の企業の一員となるように現地化を推進する
など、各社各様のミッションがあります。
本来であれば、駐在の人事異動について、内示する上司が駐在期間中に期待することとあわせて伝えるべきですが、すべての上長がきちんと行ってくれる前提は非現実的ですので、ガイダンスであらためて伝えることで単なる手続き説明だけではない、ガイダンスの付加価値が生まれます。
ガイダンスは赴任形態により、
・家族帯同
・家族を残した単身赴任
・独身者の赴任
の大きく3つのパターンに分けられます。
このなかでもっともていねいに手続きをすすめていきたいのは、家族帯同のケースです。
帯同家族の渡航手続きや生活の立ち上げは、単身で赴任する場合と比べて、かなりのボリュームとなります。
また帯同での渡航を決めた家族であっても、家族が離れて暮らすかどうかの二者択一を迫られ、やむを得ず渡航を選択した場合も少なくありません。
そういった場合、赴任する社員以上に家族は不安なものです。
現地の生活事情やコミュニティ、学校や学習環境など数え上げればきりがありません。このような家族の不安をできる限り和らげることで、結果として社員の家族ケアについての負担が軽減され、仕事に専念できる環境を整えることができます。
しかし、家族が必要な情報を高いレベルで提供するとなると、ことは簡単ではありません。そこで活用したいのが、社内にいる駐在経験者のご家族です。
ある会社では、過去に家族帯同で赴任した社員の配偶者を家族向けガイダンスのゲストスピーカーとして招いて、現地事情の説明や質疑をしてもらいました。
人事担当者ではなかなか思いつかない、日常生活目線での情報交換ができたと好評だったそうです。
ガイダンスに招かないまでも、帰任した社員や家族へのアンケートやヒアリングなどを実施してデータベース化し、赴任先ごとに現地事情ガイドとしてまとめておいて活用するなど、自社の経験を形式知化しておくことは、競合との海外進出競争で大きな優位性となります。
ネットワークは人事屋としての財産
事業所から遠い本社の人事部門にいると、なかなか現場の社員と直接やり取りすることは少ないのが現実です。一方で現場社員から聞こえてくるのは「本社は現場を知らない」という声です。
駐在員として海外赴任する社員というのは、多くの企業の場合、各職場の「キーパーソン」が選ばれます。グローバルで展開している企業では、海外駐在をキャリアパスとして設定しているケースも少なくありません。
赴任手続というのは、そのような現場のキーパーソンと数か月の間、密度の高いコミュニケーションをとりながら、海外駐在における早期の生活立ち上げというファーストミッションを支援するものです。
計画どおり現地に着任することで、みなさんの仕事ぶりは感謝され、その後一生モノの社内ネットワークに発展する可能性を秘めた仕事だと言えるのではないでしょうか。
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