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海外人事実務のポイント③「社会保険や税金」【明日から役に立つ!海外人事のヒント#7】

みなさんこんにちは。SaveExpats広報です。

SaveExpatsは、海外駐在員が健康で活き活きと働く社会を目指して活動していますが、駐在員だけでなく、それを支える海外人事の方々にもお役に立てればと思い、海外人事の皆様に向けたコラムをスタートしています!

さて、実務ポイントの3回目は「社会保険や税金」について見ていくことにしましょう。

前回のコラムで、給与の決定方式には大きく分けて3つの種類があるとお話ししました。そのうち「購買⼒補償⽅式」と「併⽤⽅式」については、国内にそのまま勤務していたならば支払われるであろう理論金額を手取りで計算する必要が出てきます。この手取り金額の計算には、社会保険と税金の知識は必須となります。



手取り金額

給与計算とは、基本給など各人ごとに決まっている給与金額に家族手当などの固定的手当と残業などの変動する手当を加え、総支給額を決定します。
そこから法律で決まっている健康保険料、厚生年金保険料ならびに雇用保険料などの社会保険料を控除し、さらに所得税を差し引いて、手取りの金額を算出します。

社会保険料のうち、健康保険料と厚生年金保険料は、基本的に毎年4~6月の給与支払い実績をもとに計算された標準報酬月額に料率を掛け保険料が決定されます。雇用保険料は毎月の総支給額に定められた料率を掛けて計算します。

所得税は、総支給額から社会保険料や通勤手当など、控除額や非課税と認められたものを除いた課税対象となる金額を計算し、扶養家族人数などを考慮し税額表にあてはめ毎月の所得税額を算出します。

しかし、手取りの理論金額はこれだけでは計算できません。


所得税の額というのは、毎月給与が同額であることを前提にしたものであり、ほとんどの場合毎月の給与額は変動しますので、年間を通じて過不足が発生します。また扶養家族人数以外の所得税控除は年末調整で行うことになっています。

ですので、理論年収を計算し、その金額をベースに各種の所得控除額を算出したうえで、年末調整を行い、理論年収と年税額を算出して、それらを用いて理論年収における手取り金額を計算する必要があるのです。

社会保険の標準報酬額決定や所得税の年末調整まで行えるというのは、少なくても給与計算担当部門のマネージャーがつとまるレベルです。実務を行えなくても、ルールを理解して、チェックするポイントを押さえられるだけでもかなりの専門性が必要となります。

購買力補償方式の場合、係数データをコンサルティング会社から購入しますが、あわせて理論手取り額の計算シートなどを提供してくれる場合もあり、それを使えば?と考えられる読者もおられると思います。

しかしそれらの提供されるシートはある一定の前提条件をベースに作成されていて、自社の都合に合わせる場合には、そのシートを解析し、カスタマイズする必要も出てくるため、万能とは言えません。

制度設計や仕組みの説明にも不可欠

駐在員の赴任説明時には、給与制度に関する説明も行います。

ただでさえ複雑な仕組みを、専門家ではない駐在員に理解してもらうには、制度の構成やロジックを熟知したうえで、できるだけ平易な表現でお伝えすることが必要です。そのためにも社会保険や税の知識は欠かせません。

また、駐在員給与だけでなく、駐在員に関するさまざまな制度や取扱いについて、企画、検討する際にもこれらの知識は必要となってきます。

たとえば、社会保障協定という赴任先国と日本の社会保障制度との保険料の二重負担を避ける仕組みがあります。

この制度は経済活動のグローバル化に呼応する形で締結する国が増えつつありますが、それ以前に赴任先国の社会保障制度に会社負担で加入していた場合、赴任先国の年金受給の対象となるケースなどが発生し、その取り扱いを検討しなければならない、といったようなことがあげられます。

駐在員ならではの取扱いもたくさん

国内勤務者の社会保険や税の知識以外にも、駐在員には特有の取扱いがたくさん存在します。健康保険や厚生年金保険の加入可否の判断基準や標準報酬月額の元となる報酬の範囲、労災保険の特別加入などがあげられます。

所得税では、非居住者になった場合の賞与や年末調整の取扱い、また帰赴任に際しての移転料などの手当の課税処理、住宅取得控除や退職金に関する取扱いなど、駐在員に関する特別な取り扱いが存在します。
さらに駐在員だけではありませんが、住民税の仕組みを理解しておくことも欠かせません。

良質な参考書で知識習得

押さえておくべき知識がたくさんあり、海外人事担当になりたての方がこのコラムを読まれるとビックリするかもしれません。
しかし安心してください。
これら社会保険や税については、海外人事のなかでも参考書が存在し、セミナーが開催される数少ない分野なのです。

所得税については、今年実施された定額減税のように、2、3年ごとに税制が改正されます。制度改正についても常に最新版にアップデートすることが必要になってきます。必然的に税制についての理解も深まっていくことになります。

良質な参考書を購入し、つねに手元で確認できるよう準備しつつ、セミナーなどの情報をこまめに収集し、参加することで、海外人事を担当しながら給与計算や社会保険の知識を習得することができます。これは人事キャリアの幅を広げる絶好の機会と言えるのではないでしょうか。


いかがでしたでしょうか?
次回も実務のポイントをお話します。テーマは「厚生制度」です。

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