【連載】大阿久佳乃が翻訳するアメリカ現代詩 #6 (フランク・オハラ『ランチ・ポエムズ』)
アメリカ文学エッセイ集『じたばたするもの』(サウダージ・ブックス)を刊行した文筆家の大阿久佳乃さん。同書で取り上げた詩人たちの作品を、大阿久さんの翻訳でお届けします。
歌
フランク・オハラ
大阿久佳乃 訳
それは汚いのか
汚く見えるのか
それが街で考えること
ただ汚そうに見えるだけか
それが街で考えること
呼吸を拒むことはない そうだろ
とても性格の悪い奴がやって来る
そいつは魅力的だ。ほんとなの。うん。とても
性格が悪いから魅力的なんだ。そうなの。うん
それが街で考えること
自分の苔のない心に指を這わせてみて
それは考え(thought)じゃない煤(sout)だ
そいつからたくさんの汚れをとってやり
性格はちょっとましになったの。いや。常に改善している
呼吸を拒むことはない そうだろ
(1959)
訳者コメント
俗っぽいちょっとした不穏さと軽みが同居した詩。「歌」というタイトルの通り口ずさみたくなる。本人の朗読も残っているのですが、けっこうぶっきらぼうな感じです。
大阿久佳乃(おおあく・よしの)
2000年、三重県鈴鹿市生まれ。文筆家。2017年より詩に関するフリーペーパー『詩ぃちゃん』(不定期)を発行。著書に『のどがかわいた』(岬書店)『じたばたするもの』(サウダージ・ブックス)、月刊『パンの耳』1〜10号、『パイナップル・シューズ』1号など。
https://saudadebooks.thebase.in/items/71651397