見出し画像

ブルーライトカット眼鏡は善か悪か

ブルーライトカット眼鏡が巻き起こしたもの

ブルーライトカット眼鏡が巷を賑わせてから、早10数年。パソコン・スマホ対策として、使っている方も多いでしょう。

当時、一部の眼科医が噂程度に話していた、パソコンから出るブルーライトが眼に与える影響を、眼鏡業界大手の会社が上手くプロモーションしたことにより、ブルーライトカット眼鏡は爆発的にヒットしました。

その大手に続けと言わんばかりに他会社やレンズメーカーもこぞってブルーライト対策レンズを発表。眼鏡業界はブルーライトカットレンズに踊らされた10年でした。ある意味、眼鏡のすそ野を広げてくれたブルーライトカット眼鏡ですが、様々な議論を呼び起こしたことは言うまでもありません

ブルーライトカット眼鏡は善か悪か

最新研究(と言っても、2年ほど前)では、小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見が眼科学会から発表され、業界内でも話題となりました。簡単に説明すると、

①デジタル機器の液晶画面から発せられるブルーライトは曇天時の自然光より少ない 
②小児にとって太陽光を浴びないことが近視進行のリスクを増大させる 
③太陽光の一部の光を遮断させるブルーライトカット眼鏡を掛けることが小児時の発育に影響を与える 
④そもそも、ブルーライトカット眼鏡には眼精疲労を抑制する効果はない

このような衝撃の研究結果が発表されました。

体内時計を考慮し、就寝時前などそれを掛けることで脳の覚醒を抑えるなど多少の効果があるとしたものの、眼科学会などは日中の近業などは明るい空間で作業をすることを第一に推奨しています。

あたかも眼精疲労に効果があると謳ったブルーライトカット眼鏡を積極的に販売している眼鏡業界をけん制した発表でした。

ブルーライトカット眼鏡に縋っている眼鏡業界

しかし、未だに眼鏡業界はブルーライトカット効果のある眼鏡やレンズを推奨し販売しています。眼科学会などに配慮しテレビCMや雑誌紙面などでの広告は減ったものの、水面下では販売員が店頭でそのリスクを説明することなくブルーライトカット眼鏡を作製、販売しているようです。

そして、それはリーズナブルな眼鏡店ほど多いように感じます。
J社やZ社は既成老眼鏡のように度なしの既成ブルーライトカット眼鏡を未だにリスクの説明なく販売しています。そして、M社のHPではブルーライトカットレンズを子ども眼鏡の推奨の一部としています。

ブルーライトカットを謳えば、分かり易く、お客様受けが良いのでしょう。

大手がブルーライトカット眼鏡の効果を学会の発表を知らないわけではないと思います。それでも、販売を継続しているのは企業利益を追求するためか、あくまで個人の価値観や主観にゆだね企業責任を放棄しているのか、もう後に引き下がれないのか…真相は分かりません。


そもそも、ブルーライトカット眼鏡が嫌いな私

私も長らく眼鏡業界にいるので、ブルーライトカット眼鏡を作り使用した経験はあります。でも、正直これが嫌いで、現在使用している眼鏡すべてブルーライトカットは入れていません。
まず、発売当初からこのレンズ特有の青(紫)に反射する感じが嫌いで、視界が黄色く濁るのも苦手でした。カッコいい眼鏡フレームを掛けていてもこのレンズの青光りでダサく感じます。また、この反射で掛けたときの印象も悪くなります。

そして、一番嫌いな理由は全く効果を感じなかったからです。これで私の眼精疲労は軽減されませんでした。これで症状が軽くなったという方はプラシーボ効果なんじゃないの?と本当に疑いたくなりました。

もちろん、患者さまやお客さまのご希望であれば、効果やリスクを説明した上で販売いたします。しかし、他の眼鏡対策で眼精疲労は軽減できるので積極的なおすすめはしておりません。

ブルーライトカット眼鏡が残したもの

ブルーライトカット眼鏡の効能が全否定されたというわけではありません。しかし、眼鏡が眼という非常に繊細な身体器官を矯正する道具である以上、それを販売する企業側にとっても、最新の医療的知見をふまえた適切な製造・販売姿勢が常に求められます。

ブルーライトカット眼鏡単体での効果は少ないですが、それに付随した話題性や販売効果、そしてレンズメーカーの研究開発などの副産物が今後業界で大きく活かされることを願います。


参考サイト

https://www.gankaikai.or.jp/info/20210414_bluelight.pdf

「小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見」PDF



いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集