全国水族館の旅【2】さいたま水族館
この度、埼玉の羽生市にある「さいたま水族館」に行ってきました。以前から、東武鉄道に乗って小旅行に出てみたいと考えていたので、都内からは距離的にちょうどいい日帰り旅となりました。何より、水族館の展示内容が学術的に素晴らしかったので大満足です。
希少種にあふれた淡水生物専門水族館
埼玉県には海がありませんが、荒川や利根川をはじめとする数多くの河川が流れており、淡水域の生き物はとても豊富です。そんな埼玉県の羽生市が擁する本館は、淡水魚好き必見のイチオシ水族館です。
さいたま水族館に来れば、地球上で埼玉県にしか生息していない希少淡水魚と出会えるうえに、他の場所ではなかなかお目にかかれない珍しい生き物たちと対面できます。
水族館は羽生水郷公園の中にあり、休日には地域の方々で賑わいます。道路を隔てた反対側には体験型農業公園「キャッセ羽生」があるので、水族館観覧の前(もしくは後)でおいしい野菜ランチを味わうのがベストだと思います。
淡水環境の魅力を知り、希少種の未来を考える!
淡水に棲む美しい生命との出会い
本館では埼玉県に生息する数多くの淡水生物と出会えます。河川や湖沼の魚・水生昆虫・両生類などとてもバラエティ豊かで、展示を通して日本の淡水域の自然に関心が湧いてきます。
そして、日本の自然環境について由々しき問題ーー外来種の水棲生物の生体展示もあります。本来あるべき場所で幸せに生きているはずの彼らが、日本の水域に違法に放され、駆除の対象になっている現状を認識させられます。
なお、外来種とは別に、海外の淡水生物も展示されています。日本とはまた違うユニークな彼らの姿を楽しみましょう。
そして、筆者が本館で目を奪われた展示は、神秘的なほどに美しいアルビノや白変種の魚たちです。アルビノとはメラニン色素を作る遺伝情報が欠けている個体のことを指し、白変種は色素の減少により体色が白くなった個体です。
そんな特殊な色合いの魚たちが本館には数種類いて、特にアリゲーターガー白変種の神々しさには息を呑むほどうっとりしました(笑)。ぜひその美麗さを直に体感していただきたいと思います。
埼玉県産の超珍しい生き物たち
本館の生体展示の中で筆者が強く推したいのは、地球上で埼玉県の熊谷市にしか生息していないムサシトミヨです。本種を展示している施設は少なく、ぜひその美しい姿を目に焼きつけていただきたいと思います。
ムサシトミヨの水槽の近くでは、浮遊性の水生植物ムジナモが展示されています。なんとこの水草、朝ドラ『らんまん』の主人公のモデルである偉大な植物学者・牧野富太郎先生が発見した希少植物です。
ムジナモは水生の食虫植物であり、水の中のプランクトンを食べます。また、ほんの一瞬しか花を咲かせないという不思議な一面があり、神秘に満ちた貴重な水草なのです。なお、本館を擁する羽生水郷公園の中には、国内唯一のムジナモの自生地・宝蔵寺沼があります。
これらの希少生物は、環境省のレッドリスト上で絶滅危惧レベルが高い部類に入ります。ゆえにムサシトミヨやムジナモを飼育・展示している本館の存在は、我が国にとっても極めて大きいと思います。本館を訪れて、絶滅の危機にさらされている生物が地球上にたくさんいること、それら希少種の保全のために大勢の人々が日々活動していることを改めて実感しました。
さいたま水族館 総合レビュー
所在地:埼玉県羽生市三田ケ谷751-1
強み:埼玉県に生息する種類を中心に淡水魚の展示に特化した高い専門性、ムサシトミヨ・ムジナモなど県が誇る希少種の展示、アルビノや白変種といった視覚的に注目度の高い生き物たち
アクセス面:水族館は最寄り駅から7 km離れています。関東在住で自家用車をお持ちの方は、ぜひ車で来館しましょう。それ以外の方は公共交通機関を推奨。東武伊勢崎線の羽生駅東口よりバスで水族館へアクセスできます。特定期間の土日祝のみ運行する無料バス、平日運行の有料バスがあります。他の地方水族館でも言えることですが、バスの本数が少ないので発車時刻を間違えないように。
超貴重な埼玉県の魚ムサシトミヨ、牧野富太郎先生ゆかりの水生植物ムジナモ、各種アルビノに白変種ーーといったように生き物好きなら誰もが興奮する展示がたくさんあります。珍しい生き物との出会いを楽しめるだけでなく、絶滅危惧種の保全活動についても考えるきっかけとなるので、老若男女問わず多くの人々に来館していただきたいです。上下移動もなく観覧しやすい施設ですので、大人数で来てもスムーズに回れると思います。
休日に来館した場合、バスの本数は1〜2時間に1本(平日なら2〜3時間に1本)ほどですが、幸いにして水族館の近くにキャッセ羽生があるので軽食や買い物しながら、バスが来るまでゆったり過ごせます。空き時間が長い場合は、宝蔵寺沼へ行ってムジナモの群生地を直に見てみるのもいいでしょう。