全国水族館の旅【24】幼魚水族館
どんな生き物でも、赤ちゃんはとても可愛いです。それは魚とて例外ではありません。
自然界の生命にとって、赤ちゃんとは「種族の未来」です。希望が詰まった存在だからこそ、たくましく気高いし、とても愛しく思えます。そんな可愛くて尊い幼魚たちに出会える素晴らしい水族館が静岡県にあります。
水族館業界に新風を巻き起こす気鋭の飼育展示施設
今回訪れる幼魚水族館は、2022年にオープンした若い水族展示施設です。その名前の通り、水棲生物の赤ちゃんたちが主役の水族館であり、水の中の天使たちがたくさん育まれています。
何事も発想が大切。幼魚展示がテーマという独自のアイディア、素晴らしいです。可愛いお魚が大好きな筆者は、もちろん大興奮して突撃します(笑)。
三島市の大型複合商業施設「サントムーン柿田川」の中に水族館が入っています。三島駅からさほど遠くはありませんので、車であっという間に着きました。
到着してみると、施設の大きさにびっくり。お客さんもたくさんいました。
オアシス館に入り、水族館を目指します。とても活気ある商業施設であり、アニメや漫画とのコラボも多くて賑わっています。サントムーンは三島の人々の笑顔の中心なのだと実感させられます。
エスカレーターで3階の幼魚水族館へ到着。どんな可愛い魚たちが待っているのでしょうか。もう抑えられないほどに心臓がドキドキしています。
生命を愛する心にあふれた幼魚の楽園
胸キュン必至! 幼魚への萌えが止まらない!!
興奮気味に観覧スタート。本館独自の素晴らしい強みと幼魚の可愛さをお伝えしたいので、成魚よりも幼魚の展示を優先して紹介させていただきます。それでは、よく目を凝らして、小さなアイドルたちの姿を見届けたいと思います。
キュートなのは魚だけでなく、キャプションもハンドメイド感があって、とっても可愛いです。親しみやすく読みやすいので、生き物たちの生態の理解が一気に進みます。
幼魚たちの可愛さは無敵。まさに海のアイドルです!
同じアイドルということで、お隣の沼津市のアニメとのコラボが実現しています。たくさんのアニメファンの方々にも水族館を見ていただきたいので、こういった企画はいろいろな施設でどんどん進んでほしいなぁと考えております。
幼魚の展示はまだまだ続きます。皆様のライフゲージは大丈夫でしょうか?
可愛い子の超絶ラッシュで、筆者の心拍数は相当ヤバイことになっています(笑)。一呼吸置いて、中盤戦もどんどん萌えていきます!
魚以外の海洋生物も、幼生はとってもキュート。見ているだけで、身も心も骨抜きにされます。軟体動物や棘皮動物に萌えるという貴重な経験ができます。
強くてたくましい幼魚たちの生き様
突然ですが、椙下聖海先生の傑作漫画『マグメル深海水族館』をご存じでしょうか。
深海生物の水族館を舞台にした本格的な飼育員さんのお仕事漫画であり、生き物の姿がリアルなタッチで表現されています。深海生物の生態と魅力が感動的に描かれているので、「水族館の好きな人には絶対読んでほしい」レベルで強くオススメできる作品です!
いつか本物の水族館とコラボするだろうなぁと思っていたところ、なんと幼魚水族館に展示エリアができていました!
それでは、深海生物の赤ちゃんたちに会ってみましょう。成体はユニークな形態をした種類が多いですが、幼体はどの子も「めちゃくちゃ可愛い」という共通点を持っています。
ラブリーかつミステリアスな生体たちの向かい側では、深海生物の液浸標本が展示されています。死亡した個体を標本にすることで、彼らは学術的に意義深い存在となります。彼らの命に敬意を払いながら、1点1点じっくりと見ていきます。
お次は人工繁殖によって誕生した幼魚たち。水族館の魚も、我々の食卓に上がる養殖魚も、人々の強い想いで育てられた個体なのです。
どんな生き物でも、自分の手で飼育すれば、とても可愛く思えてきます。どのような生き物たちがどのような人々の情熱を受けて育てられているのか、生体展示とタブレット解説にて学べます。
愛らしい幼生たちは、海洋だけでなく河川や磯にもあふれています。身近な水域に目を向けると、自然界の中でたくさんの生き物の赤ちゃんを発見できるでしょうか。次なる区画では、淡水域や潮溜まりで暮らす幼生たちが待っています。
観覧を通して、たくさんの赤ちゃんたちに出会ってきました。私たちの観点からすれば、ちっちゃな可愛い魚たちですが、彼らは決して弱い存在ではありません。小さな幼魚たちは自然界という厳しい戦場に生まれ、襲いかかる敵との戦いに勝ち抜き、数えきれないほど試練を乗り越えて成魚になるのです。
たくましく生きる幼魚たちからは、我々も学ぶところがあると思います。彼らの力強い生き方を知ると、明日からの人生を強く生きようという活力が湧いてきます。
幼魚水族館 総合レビュー
所在地:静岡県駿東郡清水町伏見52-1 オアシス館3階
強み:愛らしい幼魚の展示をテーマにした強力な独自性、水棲生物の生態を様々な展示内容でわかりやすく伝える創意工夫、多数の人工繁殖個体を産み出す飼育技術の高さ
アクセス面:自家用車かレンタカーで来訪するのが理にかなっていますが、サントムーン柿田川はとても賑わう商業施設であり、休日は駐車場が混雑している可能性も考えられます。運が悪くて満車になっていた場合は、周囲の有料駐車場を利用しましょう。なお、サントムーンは最寄りの駅(JR東海道線・伊豆箱根鉄道の三島駅)からそれほど遠くはありませんので、公共交通機関を利用するのも大いにありです。仮にタクシーを利用しても、時間もお金もさほどかからないと思います。そのときの自分にとってベストなアクセス手段を選びましょう。
幼魚たちの可愛らしさ、たくましさが最高でたまりません。ただ魚の赤ちゃんが可愛いだけでは終わらず、彼らが持っている生態的な特徴やしたたかな生存戦略についても説いてくれます。また、生物飼育や標本展示の意義を考えさせられる構成となっており、あらゆる面で多くの学びが得られます。
個性派の水族館ですので、展示内容には独自の工夫がたくさん見られます。成体と幼体が同時展示されている種類もいて、成長過程における生き物たちの差異を直に理解することができます。加えて、手作り感満載のキャプションは極めてわかりやすく、それでいて学術的なポイントをしっかり押さえているので、来館者にしっかりと生き物の秘密が伝わっています。
個人的に、これだけの幼魚を定期的に展示に供給できる飼育技術・採集技術はすごいと感じました。水族館がたくさんの人々の努力の上に成り立っているのだと、改めて強く感じます。生き物への愛が詰まった楽しい幼魚水族館、ぜひ多くの人々に訪れてほしいと思います。