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全国水族館の旅【20】熱川バナナワニ園

熱川バナナワニ園。本施設は水族館にカテゴライズされるのか不明ですが、水族展示の数はとても多いため、「水棲生物の飼育展示施設」であることに違いはありません。「広義の水族館」には大いに当てはまると思います。

ワニと出会える水族館は多くあります。ですが、可愛い小型種から恐ろしい人食いワニまで網羅的に飼育している専門的な展示施設と言えば、ただ1つだけでしょう。
驚異的な強さと恐ろしさで、人々を虜にするワニたち。彼らの魅力を最大限感じられる楽園が、静岡県の温泉地にあるのです。


伊豆に築かれた雄大なワニの楽園

バナナワニ園の所在地は、伊豆半島の東部。伊豆急行線の伊豆熱川駅が最寄り駅となります。関東から向かう場合は、特急踊り子の利用が鉄板です。
伊豆地方には、とても雄大な自然景観があります。踊り子の車窓から景色を楽しみつつ、これからのワニたちとの出会いに想いを馳せましょう。

東京駅スタートの場合、特急踊り子で快適に向かいましょう。踊り子のスピードなら日帰りも十分可能です。

伊豆熱川駅に到着すると、改札の外ではバナナワニ園のマスコットキャラクター「熱川ばにお」のパネルがお出迎え。駅からバナナワニ園への道が案内表示されていますので、そのままダイレクトに直行できます。
ご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、伊豆熱川は有名な温泉地です。バナナワニ園では、温泉の熱をワニや熱帯植物の飼育に利用しています

バナナワニ園の代表「熱川ばにお」。ご当地の名スポットということもあり、伊豆熱川駅ではバナナワニ園が強く宣伝されています。なお、駅の切符売り場でも、入園チケットを購入可能です。
駅からバナナワニ園への道案内標識があります。ワニたちの楽園はすぐ側です。

駅から階段を上がってすぐに展示施設が見えてきますが、チケットの買える「本園・ワニ園」は1つ向こうの建物になります。バナナワニ園は3つの施設から成っており、それぞれの園でワニや多くの水棲生物が飼育されています。
セオリーとしては、チケット売場のあるワニ園を観覧後、その場のノリで他の施設を巡っていくスタイルとなります(笑)。なお、本施設の売りはもちろんワニですが、日本で唯一の「ある希少水棲生物」の生体展示もありますので、動物好きの方なら全般的に楽しむことができると思います。

こちらは「本園・植物園」。最初にお目にかかるバナナワニ園の施設ですが、ここではチケットは買えません。ここから1分ほど歩いたところにあるワニ園で、当日入園券を購入しましょう。
バナナワニ園の中心「本園・ワニ園」。まずはここから観覧を始めましょう。

水域の王者たちが佇む飼育展示施設

全世界の多種多様なワニが大集合

本園・ワニ園はまさに「ワニの王国」です。アリゲーター、クロコダイル、ガビアルといった世界中の多種多様なワニたちが一堂に会しています。かっこよさと可愛さを兼ね備えたワニとの出会いに出発です。

受付窓口でチケットを購入したら、長い階段を下りましょう。ワニたちとの楽しい1日が始まります。
水と緑に覆われた広大な飼育展示エリア。心身共にリラックスして観覧できますね。
展示エリアでは多くの水槽やプールがあり、近い距離でワニの姿を拝むことができます。当然ですが、ワニに手を近づけてはいけません

まずは、可愛いワニたちを見ていきたいと思います。映画で見るようなモンスターレベルの超凶暴ワニの姿には、かなり誇張が入っています。ワニたちが愛らしく利口な生き物であることを学びながら、観覧を進めていきましょう。
展示水槽はかなり広く、見せ方も工夫されています。きっと、ワニたちの美しい姿には見惚れるはずです。

アリゲーターの仲間、クチヒロカイマン。広々とした水槽で全体が見やすくなっています。
こちらの通路は天井にも水槽があります。よく覗いてみると……。
天井面の水槽にヨウスコウワニを発見。他のエリアでも、来園者を楽しませてくれる工夫が満載です。
可愛いワニの代表、コビトカイマン。短めの口吻がキュートですね。

それでは、お待ちかねの大きくて強そうなワニたちの展示に入ります。クロコダイルもアリゲーターも、大型種は危険です。一方で、その強さと恐ろしさが彼らの魅力でもあります。
ときに人間を襲う大型のワニたち。彼らの迫力とかっこよさには、目を奪われること必至です。

イリエワニの白変個体「きぼう」。まだ子供で可愛いですが、成体のイリエワニは全てのワニの中で最も危険だと言われています。
イリエワニとシャムワニの交雑個体。現在のクロコダイル類の大半は属が共通しており、交配が可能です。
ミシシッピワニ。アリゲーターはクロコダイルよりおとなしいと言われていますが、本種は人を襲った事例があります。どんなワニでも、相対したら油断はできません。
長い口吻が特徴的なマレーガビアル。主食は魚であり、人を襲った事例はほとんどありません。ただ、哺乳類を捕食することもあるので油断は禁物です。

本園の主役はもちろんワニですが、脇を固める水棲生物たちの展示も豪華です。本園では、熱帯魚や爬虫類の姿を見られます。その中には、とってもレアなワニトカゲもいます。

魚たちを飼育する大型水槽。ワニのみならず、水棲生物の展示が充実しています。
ティラピアやコロソマなどの熱帯魚を展示。ワニたちの生息環境をイメージしたキャスティングなのでしょうか。
チュウゴクワニトカゲ。ワニトカゲ科という、非常に珍しい種類の爬虫類です。生息地の中国やベトナムでは個体数が減っており、絶滅危惧種に指定されています。

魚類の飼育水槽と同じエリアには、古代の日本産ガビアル類マチカネワニの骨格が展示されています。現代のワニを凌ぐ圧倒的な大きさに驚くことでしょう。対比として現生種の頭骨が展示されているので、種類ごとの顎の形態がとてもわかりやすく学べます。

全長7 m以上もの巨体を誇るマチカネワニの複製骨格。数十万年前の日本に生息しており、あらゆる種類の動物を捕食していました。
現生のイリエワニの頭骨。物を噛む力は動物界で最強を誇ります
インドガビアルの頭骨。マチカネワニと同じく細長い口吻は水の抵抗が少なく、水中で素早く動かすことができます。

ワニ園の観覧が終わったら、ジューススタンドで小休止を入れましょう。バナナワニ園に来たからには、可愛くて甘くておいしいワニ大福をぜひ堪能したいところです。

ワニ園のジューススタンド。スイーツやドリンクが味わえますので、ぜひここで小休止を入れましょう。
ジューススタンドで食べられるワニ大福。本施設のおいしい目玉スイーツです。

美しく妖しい水棲生物と間近で対面

続いて、最初に通りすぎた展示施設「本園・植物園」に戻りましょう。水族展示に力が入っており、この施設でしか見られない珍しい水棲生物も飼育されています。

駅側にある「本園・植物園」。水棲哺乳類や数々の両生類の展示が見どころです。
園内には色とりどりの植物であふれています。施設の中を歩くだけでも心が満たされます。
水上に咲くスイレンの花はとても高貴! 皆様もぜひお気に入りの花を見つけましょう。

絶対見ておきたいのは、日本国内でバナナワニ園でしか会うことのできないアマゾンマナティー。おとなしくゆったりとした姿は、究極の癒し系です。水槽の下に隠れていることもありますので、マナティーが目の前に来るまでじっくりと待ちましょう。

アマゾンマナティー。日本国内では、バナナワニ園でしか会えません
水面に鼻を出して呼吸するアマゾンマナティー。他の水族館や動物園では見ることができないので、この機会にしっかり観察しておきましょう。

アマゾンマナティーと並ぶ大物は、特大のチュウゴクオオサンショウウオです。飼育水槽が通路のすぐ脇に設置されているので、ほぼゼロ距離でオオサンショウウオの巨体を拝むことができます。
なかなか見ることのできないオオサンショウウオのお顔も、存分に堪能することができます。巨大両生類のただならぬ迫力に、きっと誰もが圧倒されます。

でっかいチュウゴクオオサンショウウオ! ゼロ距離まで接近して見ることができます。
チュウゴクオオサンショウウオの頭部。噛む力が強く、狩りの際にはすさまじい勢いで獲物に襲いかかります。

オオサンショウウオの他にも、魅力的な両生類の生体展示があります。
注目すべきは、アルビノのアフリカツメガエル。目立ちすぎるので自然界では生存に不利な形質ですが、水族館での生体展示としてはアルビノは好適な個体であると言えます。

アフリカツメガエルのアルビノ個体。うっすらとゴールドっぽい色調であり、とても神々しく見えます。
愛好家の多いアカハライモリ。動きの1つ1つが愛らしいです。

本エリアにもワニが展示されており、育ち盛りの可愛い子供たちを見ることができます。卵の時期から飼育スタッフさんたちに見守られ、愛情深く育てられている子ワニたちです。
最強クラスの捕食者たちも、幼年期は超可愛いです。なおかつ、ワニらしいかっこよさの片鱗も見せてくれるので、とても魅力的に感じられます。

マナティーの区画の隣では、カイマン類の幼体が飼育されています。子供でも、ワニらしいかっこよさを感じます。
ワニたちは、卵の段階から施設スタッフによって大切に育てられています。今後も、赤ちゃんワニたちにはすくすくと成長してほしいですね。

水域最強のワニたちが見せる和みの光景

最後に訪れる施設は「分園・果樹園」。ちょっときつい坂道の上にありますので、園専用のマイクロバスに乗って移動することをオススメします。バスの内装・外装には可愛らしい装飾がされていますので、移動中にじっくりと見てください。

専用のマイクロバスに乗って移動。バスは数分おきに出ていますので、乗り遅れても、すぐに継ぎの便に乗れます。
「分園・果樹園」に到着。ここでもワニたちが飼育されています。
バナナワニ園のもう1つの主役、バナナ。なお、バナナは決して木ではなく草本の一種です。

このエリアでは、魚たちへの餌やり体験ができます。すっかり学習しているようで、人が水槽の縁に近づくと、魚たちがものすごい勢いで接近してきます。
飼育されているのは、シグリッドやティラピアといった大きめの淡水魚です。こちらに向かって一斉に肉薄してくる様は、けっこう迫力があります(笑)。

この水槽では、シグリッドやティラピアに餌やり体験ができます。人間が近づくとものすごい勢いで迫ってきます。
魚たちに与える餌。なるべく水槽の中央付近に投げ込むのがポイント。

果樹園のワニたちは、中央の大きな池にて飼育されています。湖沼や河川における生態系の最強王者とされるナイルワニも、優雅に日向ぼっこしている姿は可愛く見えます。ワニたちの魅力が、決して恐ろしさだけではないことを感じ取っていただきたいと思います。

ワニたちが飼育されている池。大型のクロコダイルなど、ちょっと怖い種類も見ることができます。
ナイルワニ。大型動物さえ捕食する恐ろしいワニです。
シャムワニ。リラックスしていて微笑ましいですが、強靭なクロコダイルの一種です。
日向ぼっこしているワニが多く、とても癒されます。水辺の最強ハンターも休息時は可愛らしいです。

かっこいいワニたちを観覧した後は、園内レストランでお腹を満たしましょう(笑)。果樹園内の「フルーツパーラー」では、おいしいランチやスイーツを味わえます。
オススメのスイーツは、バナナワニ園ならではの「熱川バナナプリン」。園内で採れた新鮮なバナナスイーツであり、とっても甘くておいしいです。

ランチや軽食がとれるフルーツパーラー。店内には、かっこいいワニの内装が施されています。
オリジナルフードの1つ、熱川バナナプリン。バナナチップを振りかけて食べるのがポイント。
店内からは伊豆の海を見渡せます。雄大な自然に抱かれた地域だからこそ、ワニたちものんびり暮らせるのでしょうね。

熱川バナナワニ園 総合レビュー

所在地:静岡県賀茂郡東伊豆町奈良本1253-10

強み:小型種から大型種まで世界各地の多種多様なワニたちの飼育展示、ワニたちの展示環境を彩る豊かな園内の植生、アマゾンマナティーやオオサンショウウオなどの大型水棲生物を間近で感じられる水族展示

アクセス面:バナナワニ園は、伊豆急行線の伊豆熱川駅からして目と鼻の先の位置にあります。駅から案内標識が出ていますので、迷うことなくアクセスできます。東京方面から伊豆熱川駅へ向かう人は、特急踊り子を利用すれば十分日帰りが可能です。遠方から来園される場合は、ぜひ連泊旅行を企画しましょう。

全17種類、約140個体もの飼育数を誇る世界一のワニ飼育施設です。恐竜のごとく強そうでかっこいいワニたちの展示ラッシュは壮観の極みであり、生き物好きのみならず、老若男女問わず誰もが最高の興奮を味わえます。強大なナイルワニやイリエワニは文句なしにかっこいいですし、典型的なワニとは違うフォルムのマレーガビアルには独特な味があります。
ワニのみならず、日本国内では本施設だけに飼育されているアマゾンマナティーの展示も大きな強みです。チュウゴクオオサンショウウオのインパクトもすさまじく、水族館好きの方ならきっとツボにハマると思います。
各所で様々な動植物と出会えますので、探検するような心地で園内を歩き回れます。ジューススタンドやフルーツパーラーなどの飲食店もあるので、ランチ休憩を挟みながら、体力的にも無理なく園全体を観覧できると思います。総じてエンターテインメント性は非常に高く、ワニたちと1日中楽しく過ごせる飼育展示施設です。

伊豆熱川駅の近くには足湯があります。熱川は温泉地として有名なので、バナナワニ園と合わせて温泉旅行を企画するのもいいかもしれません。

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