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全国水族館の旅【54】串本海中公園

「海の中を歩いて、野生の魚たちを間近で見てみたい」と思った水族館ファンは多いと思います。その願いを叶えるには、美しい海洋を有する地域に赴かなくてはなりません。
本州では貴重なサンゴ礁の海を擁する和歌山県。豊かな生態系を全身で感じながら、大平洋に臨む水族館を楽しみましょう!


野生の魚に出会える水族館! 海の中の世界へ出発!!

海洋生物が好きな人の中には、よく和歌山県に行かれる方も多いと思います。和歌山南部(紀南地方)には、超美しい海域が果てしなく広がっています。サンゴ礁が育む海洋生態系は壮大で、たくさんの魅力的な生き物と出会うことができます。

生物マニアなら、ぜひとも行ってみたい海。筆者はレンタカーで熊野街道の海岸線を走り、串本を目指しました。ただ、関西国際空港からスタートしたので、すさまじい超長距離ドライブをすることになりました(笑)。紀南の海を眺めながらの運転は誠に爽快で、身も心も洗われました。

紀南地方の海は本当に素晴らしい。無数の生命に恵みを与える本海域は、まさしく地球の宝です。
本州最南端の道の駅・くしもと橋杭岩。道の駅や物産店などで休憩を挟みつつ、紀南の海岸線ドライブを楽しみましょう。

紀南に来たら、大自然が生んだ絶景と対面しましょう。そこでは、たくさんの生き物たちとの出会いが待っています。

絶景と生物観察を同時に味わえる名スポット。それが地球の芸術的地形ーー橋杭岩はしくいいわです。
南北850mにわたって、まるで橋杭のように巨大な岩がダイナミックにならんでいます。堆積岩の地層の中にマグマが細長く入り込んで固まり、その後の浸食によってやわらかい堆積岩の部分が削られ、現在の橋杭岩ができあがったのです。

地球の大地の活動によって生まれた橋杭岩。まさに、大自然の芸術です!
生き物好きの方は、巨大な岩の足元を覗いてみましょう。干潮時には、潮溜まりにたくさんの海洋生物が潜んでいます。

干潮時、窪んだ岩場の隙間には潮溜まりタイドプールが形成されます。そこには、小さな海の生き物たちがたくさん隠れています。紀南の爽やかな海風に抱かれながら、生物観察を始めましょう!

生物観察スタート。干潮時にできた潮溜まりを覗いてみましょう。
いました、ハゼ類の魚たちです! 潮間帯は多くの生き物を育んでおり、貴重な生育の場となっています。
ウミウチワの一種。硬い体をしていますが、実は海藻の仲間です。
ウニ類にとっても、潮溜まりの岩の隙間は絶好の隠れ家です。橋杭岩から少し離れた磯にて発見しました。
海岸に流れ着いたサンゴ類。雄大なサンゴ礁を擁する紀南の海ならではと言えます。

くしもと橋杭岩から車で熊野街道を西に15分ほど走ると、海岸線に立つ学習展示施設・串本海中公園に到着します。その名の通り、海の中の環境が観察できる海中展望台を有しており、紀南の海洋生態系を間近で観察できます。
入館前からテンションは爆上がり。未知と驚異に満ちた海中探検に出発しましょう!

今回の目的地となる水族館・串本海中公園。くしもと橋杭岩から車で15分ほど走れば到着します。
水族館と海中展望台が融合した、究極の海洋学習施設! 海洋生物マニアなら、絶対訪れておきたいスポットです。

水槽展示と海中展望台の両刀で攻める超水族館

世界に誇る串本の海洋生態系を大学習

串本海中公園の観覧順路の前半は、紀南の海を表現した水族展示となります。串本の海域の素晴らしさは、海洋生物マニアの方ならよくご存知だと思います。

和歌山南部の海には、本州屈指の壮麗なサンゴ礁が広がっています。串本のサンゴは多様性がとても高く、伊豆の約3倍、館山の約5倍ものサンゴ種数を誇っています。サンゴの森を育む串本の海洋生態系を、本館で徹底的に学びます。

観覧の前半は飼育水槽展示。大小様々な水槽にて、多数の海洋生物に出会えます。
メイン展示は串本の海の生き物たち。和歌山南部の海洋生態系を理解するなら、本館での学習は必須と言えます。
水槽の形状は多彩。水族館の雰囲気に浸りながら、楽しく生物観察できます。
和歌山南部の海といえば、本州屈指のサンゴ礁。本館の水槽では、串本の海で見られるサンゴがたくさん展示されています。
デジタル資料にて、海洋生物の知識を学習。本館は、ムラサキハナギンチャクの繁殖に世界で初めて成功したという実績を持っています。

本館のサンゴ展示は誠に素晴らしいと思います。串本の豊かな海を水槽で再現するために、サンゴの飼育管理には数多くの工夫が実践されています。
暖海の海の豊かさを知る指標とも言うべきサンゴ。彼らの美しさと尊さを生体展示から感じてください。

串本の海に棲む色とりどりなサンゴの飼育展示。サンゴは温暖な海域の生き物なので、水温が20 ℃以上に保たれるように、本館では様々な工夫が施されています。
サンゴの一種オオトゲトサカ。網によく引っかかるので、串本の漁師さんにとっては手強い相手のようです。
大型展示空間「串本の海水槽」。自然の海水をかけ流すことで、サンゴにとって好適な水質を維持しています。
大型水槽の天井はガラス張りとなっており、太陽光がさし込んでいます。サンゴは体内の藻類から栄養をもらっているので、藻類の光合成のための光が必要となります
サンゴのみならず、「串本の海水槽」には多様な海洋生物が飼育されています。和歌山の海は、常に無数の生命を育み続けているのです。

サンゴ礁あるところに無数の生命あり!
美しきサンゴは、海の生き物たちに多くの糧と隠れ場所を提供します。サンゴ礁を棲み家とする小型生物がやってきて、小型生物を捕食する大型生物たちもサンゴ礁に集まってきます。生態系という1つの世界が、美麗なサンゴの森に秘められているのです。
サンゴが育む串本の海洋生物たちを、本館の展示でさらに詳しく見ていきたいと思います。、

ニシキエビ。体重5 kg以上にもなる大型のイエセビ類です。
立派な体格のタマカイ。ハタの仲間の大型種です。
アカシマシラヒゲエビとウツボ類を同時に飼育展示。このエビは別名クリーナーシュリンプと呼ばれており、魚の体表の寄生虫などを食べています。
可愛らしく泳ぐアカエイの子供。様々な成長段階の個体が見られるのも水族館の醍醐味ですね。
サンゴの味方(?)であるホラガイ。オニヒトデというサンゴの天敵を好物としています。

魅力的な串本の海洋生物ラッシュは、まだまだ続きます。小型水槽展示コーナーでは、不思議でかっこいい無脊椎動物たちが大勢待っています。甲殻類も頭足類(タコやイカの仲間)もヒトデ類も、みんな個性的で惚れ惚れします。これほど多様で麗しい生き物たちが棲んでいると知り、串本の海の素晴らしさを改めて実感しました。

大きなハサミを装備するソメンヤドカリ。イソギンチャク類と共生しています。
アカモンガニ。昼間はサンゴ礁に隠れて過ごし、夜になると活発に動き回ります。
キンチャクガニ。自衛のために、ハサミにイソギンチャク類を挟んでいるのが特徴です。
アオリイカの幼体。なんと美しく可愛らしいのでしょう!
猛毒を有し、サンゴを食べるオニヒトデ。ちょっと怖そうな見た目がかっこいいと思います。

水槽展示の回廊を抜けると、目の前には巨大なウミガメの模型が現れます。中生代白亜紀の海に生きていた、アルケロンという古代のウミガメです。
本空間「マリンアートギャラリー」では、海洋生物にまつわる様々なアートや写真が展示されています。海を愛する人々の手によって作られた芸術。水族館とアートの融合した展示空間は、来館者に感動的な衝撃を与えてくれます。

マリンアートギャラリー。中央部には、古代の巨大なウミガメ類アルケロンの実物大模型があります。
壁面には、串本の海の写真がいっぱい! 本海域はダイビングスポットとしても人気であり、素敵な海中写真を撮ることができます。
トビウオの木彫り立体造形。各種のアートから、海洋生物への強い愛情が伝わってきます。

いざ海の底へ! 自然界の魚たちを観察しよう

清らかな海洋と砂浜を有する串本には、多くのウミガメたちが現れます。和歌山県には全国有数のアカウミガメの産卵地が存在しており、本県におけるウミガメ類の保全は、地球規模の観点から見て非常に大きな意義があります。

ウミガメ類の聖地ということで、串本海中公園におけるウミガメ展示にはスペシャリティを感じます。広いプールでの生体展示はもちろん、アカウミガメの赤ちゃんのキュートな姿も素敵すぎます。なんと、本館は1995年に世界で初めて人工飼育下でアカウミガメの繁殖に成功した施設なのです
究極のウミガメ保全施設で、ウミガメ類の真理を学び、ウミガメたちを観察。本当に素晴らしい学術体験です。

ウミガメゾーン。屋外には広いプールが設けられており、ウミガメたちが悠々と泳いでいます。
プールで飼育されているウミガメは3種類。串本の海で見られるのアカウミガメ・アオウミガメ・タイマイです。
最高に可愛いアカウミガメの赤ちゃん。本館では、野生動物の保全のため、ウミガメの繁殖事業が実施中されています。
ウミガメ類の生態を説くキャプション。猛スピードで水中を泳ぎ、水深1000 mにも潜れるウミガメたちは、強健なアスリートであると言えます。

本館には、串本の魚類たちを飼育する長さ24mのトンネル水槽があります。美しく舞い踊るメジナやアジ、雄々しく泳ぐメジロザメやクロマグロ。神秘的な空気に酔いしれ、海の中を漂っているような心地になれます。海中展望台へつながる水族展示として、最高にして最上だと思います。

長さ24 mのトンネル水槽。この水槽でも自然海水が活用されているので、串本の海の空気を感じることができます。
光が差し込む水の回廊。魚たちが我々を串本の海に誘っているかのようですね。
トンネル水槽では、サメ類やエイ類などの軟骨魚類と出会えます。大型魚類の乱舞は見ごたえ満点!
頭上を翔ぶ魚たちの姿を観察できるのも、トンネル水槽の魅力。海中展望台に入る前に、とことんテンションを上げておきましょう!

それでは、本館の強烈なアイデンティティーー海中での野生の海洋生物観察を体験しましょう。
来館者はいったん屋外へ出て、海に築かれた海中展望台へと向かいます。生命が満ちる串本の海へ飛び込むときが来ました。サンゴの茂る海の中で、自然界の息吹を感じてください。

屋外の路を歩き、海中展望台を目指します。野生の海洋生物たちに会いに行きましょう。
橋を渡って海中展望台へと向かいます。どんな魚たちに会えるのか、ワクワクが止まりません。
いざ、海の底へ。子供たちに負けず劣らず、大人もテンションが爆上がりします。
長い螺旋階段を下り、最下層に来ると、そこはもう串本の海底です。水深6.3 mでの生物観察が始まります。

超絶高揚しながら、海の生物観察スタート。これまでの水族展示で見てきた通り、串本の海にはとても多くの魚が暮らしています。よって、かなりの高確率で野生の魚と対面できます。
海底の自然環境を拝める機会は、そうめったにあるものではありません。野生の魚の観察体験を通して、多大なる知識と感動が得られます!

海中展望台の全方位に設けられた観察窓。あらゆる方向から、串本の海洋生物を探してみましょう。
さっそく、多種多様な野生の魚たちがお出迎え。ホウライヒメジの赤いボディが鮮やかですね。
ヘラヤガラを発見! 細長い体が特徴的な魚です。
立派なアオブダイがやってきました! 大型魚が視界に現れると、子供も大人も大興奮します。
サンゴの付近を泳ぐカゴカキダイ。いつどんな魚が現れるのか、ワクワクしながら観察を楽しめます。

海に抱かれながらの自然学習、最高以上の体験となりました。串本の海を守り、サンゴ礁を守り、海洋生態系を守ることは、地球環境全体の環境保全につながると筆者は考えております。海と生命の尊さを学習するために、多くの人々に串本海中公園を訪れていただきたいと思います。

無数の生命を育む串本の海。広大なるサンゴ礁の海洋は、永遠に美しく保全されなくてはなりません。

串本海中公園 総合レビュー

所在地:和歌山県東牟婁郡串本町有田1157

強み:串本の海洋生態系に特化した濃密な生体展示及び解説キャプション、当地の海の世界を感じられる多様な海洋生物の生体展示、野生の海洋生物を間近で観察できる海中展望台

アクセス面:自家用車もしくはレンタカーを推奨します。本館は紀南地方に位置してるため、和歌山市内からスタートしてもかなりの長距離ドライブになります。ここは泊まりがけの旅行を計画して、ゆったりと熊野街道を走りながら行くのが吉です。JR串本駅から水族館行きの路線バスも出ていますが、本数は決して多くないので、バスを利用する場合は入念な時刻表の確認が必須となります。なお、和歌山県南部には自然観察スポットや水族館がたくさんあるので、魅力的な生き物たちといっぱい出会うためにも、やはり移動にはレンタカーか自家用車をオススメします

豪華な水槽展示に加えて、海中展望台で野生の海洋生物を観察できるというミラクルな水族館! 壮麗な紀南の海沿いという最高の立地条件を活かした、和歌山ならではの唯一無二の体験型海洋学習施設となっています。海そのものを超壮大な水族展示として活用するスケールの大きさは、本館の究極の強みと言えます。
水槽展示の豪華さも特筆すべきであり、串本の海洋生態系を徹底的に学べるスタイルになっています。サンゴ礁やウミガメ類の濃密な解説展示によって、串本がどのような環境を擁する海域なのか、体系的に理解することができます。
当地の海の魅力を徹底的に掘り下げ、串本に息づく生命の実像を伝える本館は、まさしく「海と1つになった水族館」。ぜひ、サンゴ豊かな串本の海に抱かれながら、地球と生命の素晴らしさを感じてください。

水族館の隣にはレストランがあります。壮麗な紀南を海を眺めながら、最高のランチタイムを楽しんでください!

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