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全国水族館の旅【30】伊豆・三津シーパラダイス

あわしまマリンパークの閉館報告にショックを受けている水族館ファンは多いと思います。豊漁の海に面した沼津市には複数の水族館が立っており、まさに「水族館の街」であると言えます。
アニツーリズムで活気づく沼津市。駿河湾に面する港街の南側には、誰もが楽しめる学びとエンタメの水族館があります。


アニツーリズムで大成功した水族館の街

全国的に見ても、水族館はアニメ・ゲーム作品とコラボすることが多い学術施設です。特に、沼津市の水族館はその傾向が強く、人気アニメが常設展のエリアにまで食い込んでいます。
お察しの方もいると思われますが、当該作品こそ、有名コンテンツ『ラブライブ』シリーズです。水族館巡りの旅をしていれば、必ずラブライブと出会います。第2作目にあたる『ラブライブ!サンシャイン』は沼津市が舞台であり、みとしーが作品内にも登場しています。
JR沼津駅に到着すると、さっそくラブライブが出迎えてくれました。アニツーリズムと水族館の関係について気になるところですね。

沼津駅に到着。街の景色の中にラブライブが溶け込んでいます。
ラブライブのラッピングバス。内浦方面まで行く便もあり、伊豆・三津シーパラダイスにも直行できます。
沼津駅前の商店街もラブライブがいっぱい。アニツーリズムに対しては様々な意見があると思いますが、沼津市はラブライブとのコラボで経済が活性化しました

水族館に馴染みのあるアニメですので、筆者もサンシャインを全話視聴いたしました。ストーリーに関しては賛否両論あるようですが、ライブシーンは美麗の極みであり、とても楽しませていただきました。ですが、個人的に一番おもしろいと思ったのは虹ヶ咲です

ラブライブの空気に触れたら、みとしー(伊豆・三津シーパラダイスの愛称)へと出発です。筆者は沼津駅前でレンタカーを借りて、海沿いの道を走って内浦へと向かいました。
海岸線の景観は心が洗われるほど見事であり、特に本土から眺める淡島の姿は最高です。天気が良ければ富士山も見れるので、輪にかけて雄大な情景となります。

内浦の海岸線から拝む淡島。富士山とのコントラストが素敵です。

そして、沼津といえば最強においしい魚介類です。海岸線には内浦漁協直営の食堂「いけすや」が立っています。ここでは、プロ漁師の方々が丹精込めて育てた活アジ料理を味わえます。水族館を目指しつつ様々なスポットに立ち寄って、沼津をとことん楽しみましょう。

内浦の海に面した「いけすや」。海の幸が堪能できる食堂と売店にて構成されています。
最高においしい「活あじ丼」。沼津が誇る極上のマアジ、ぜひ現地にて味わってください!

極上の景色と海の幸を味わいながら、さらに南へ進むと、待望の伊豆・三津シーパラダイスに到着。海洋生物の生態と保全活動についてたっぷり学べるうえに、華麗なる動物たちのショーも楽しめる人気の水族館です。入館前から、高揚感で心が踊っています!

みとしーに到着。道中で沼津の素晴らしさをたっぷり体験したので、テンションはかなり上がっています。
展示施設の隣には、立体駐車場があります。やはり車での来館がオススメですね。
いざ、みとしー観覧へ。潮風を感じながら、生き物たちとの出会いを楽しみましょう。

学びも遊びも100%以上! 沼津が誇るスーパー学術エンタメ施設

伊豆と世界の水域からスターたちが大集結

チケットを購入して入館したら、来館者は長いスロープを下って水族展示エリアへと向かいます。レリーフ調の内装には太古の海の生き物たちが描かれており、時を遡っているような感覚に見舞われます。冒険の始まりの予感がして、最高に胸が高鳴ってきます。

水族展示へと続くスロープ。この先にたくさんの生き物が待っていると思うと、子供だけでなく大人もワクワクしてきます。
壁面の内装はレリーフのようであり、太古の海洋生物たちが描かれています。母なる海に還っていく心地になって、水族展示へ向かいましょう。

スロープを下りると、鰭脚類(アザラシやセイウチの仲間)の展示水槽が目の前に現れます。巨大なセイウチの迫力と存在感には、来館者は猛烈に圧倒されることでしょう。
なお、本館には、セイウチをモデルにしたマスコットキャラクター「うちっちー」がいます。ラブライブの作中にも登場しており、今や日本全国に名が知れ渡っています。

本館で飼育展示されているセイウチ。冷たい海を好む彼らの生態に合わせて、屋内プールの温度も調整されています。
セイウチをモチーフにしたマスコットキャラクター「うちっちー」。愛らしい姿が子供たちに人気であり、本館のアイドル的存在です。

ここからのエリアは「魚のくに」。伊豆の淡水環境から駿河湾の深海まで、怒涛の水族展示ラッシュが始まります。展示生物の種類はとても豊富ですので、水族館好きなら観覧を進めるに伴ってどんどん夢中になっていくことでしょう。

「魚のくに」に入場。幅広い水域環境の多様な水棲生物のオンパレードが開幕します。最初のエリアでは伊豆の淡水環境の展示となります。
ホトケドジョウ。一般的な底生のドジョウとは異なり、本種は水中を活発に泳ぎます。
ニホンウナギ。いつ見ても、彼らの可愛さに癒されます(笑)。
水槽の隣に設置されたタブレット。わかりやすくユーモラスな解説画像によって、展示生物の特徴を伝えてくれます。

水族館のエンターテインメントはたくさんありますが、多くの方々は展示の工夫やユニークな生き物との出会いを期待しておられることでしょう。本館では、不思議な生き物たちの魅力的な展示が設けられており、大人も子供も見とれてテンションが高揚すると思います。

無数のクラゲが舞う「くらげ万華鏡」。壁面にはミラーが設置されており、まさしく万華鏡のごとくクラゲたちのミステリアスな雰囲気を増幅させています。
水槽の底にどっしりと佇むアカウミガメ。ものすごい威厳を感じます。
花畑のごとく咲き誇るムラサキハナギンチャク。水槽内の照明が味わい深いムードを醸し出しています。

本館の水族展示は生物種のバラエティーが豊かで、見ていてとても楽しいです。無脊椎動物には可愛い子がたくさんいる印象でした。節足動物・軟体動物共に興味深い外観や生態をしているので、この機会にしっかり観察しておきたいですね。

たくさんの水槽が立ち並ぶ通路。まだまだ楽しみは続きます。
ゾウリエビ。スリッパのような形をしていて可愛い!
壁の鏡面に貼りつくスナダコ。柔軟な体と体色変化能力を有する海の忍者です。
イシダタミヤドカリ。大きな巻貝を背負った姿、とっても強そうです。

もちろん魚たちの展示も圧巻です。大小問わず豊富な魚種が次々に現れ、まさに百花繚乱! 大きさも生態もそれぞれ魅力があふれているので、きっと推しが見つかると思います。凛々しさと怖さを併せ持つアカメは存在感がすさまじく、思わず見惚れてしまいました。

赤い目と大きな体躯を備えるアカメ。日本3大怪魚の1つに数えられます。
岩ではなく魚です。オオモンカエルアンコウのヒレは「泳ぐ」ためのものではなく、海底を「歩く」ために発達しました。
「ウツボのどうくつ」。水槽の下に潜って、円形の窓からウツボたちを至近距離で観察できます。
「海のお姫さま」ことヒメコダイ。漢字では姫小鯛と書き、名前も姿も可愛いプリンセスなのです。

沼津市が面する豊漁の駿河湾。その深奥には、闇に満ちた未知の海洋環境が広がっています。駿河湾は日本一の深さを誇っており、過酷な深海の世界においても生命は見事に適応し繁栄し続けています。
ここからはディープ・オーシャンの生き物たちとの不思議な出会いが始まります。闇の世界に息づく生命、みんなたくましく魅力的な子たちです。

深海生物たちの大型水槽。別世界のような空気感を放っています。
巨大深海魚オオクチイシナギ。大型の個体では全長2 mに達します
ヒゲナガチュウコシオリエビ。名前に「エビ」と付いていますが、ヤドカリの仲間なので正確にはエビではありません。
威厳をたたえて佇むホンフサアンコウ。極限環境の深海では、あまり動かず省エネに生きることも有効な手段なのです。
ヌメヌメした体をしている深海生物クロヌタウナギ。我々が食べているウナギとは別グループの生き物です

本記事に登場した展示生物はごく一部です。とても一度には紹介しきれないほど種類が多く、改めて伊豆の水域環境の豊かさを実感します。魅惑の水族展示に加えて、タカアシガニに触れられる体験展示も設けられていますので、全身で沼津の生命を感じましょう。

タカアシガニに触れるタッチングプール。優しくタッチしてあげましょう。
深海の軟骨魚類ラブカの剥製。駿河湾の水深200~300 mのポイントにて、トロール網で捕獲された個体です。

駿河湾は巨大な水槽! 圧巻の屋外展示!!

深海生物ゾーンを抜けると、舞台は屋外展示へと移ります。駿河湾を拝む解放感、たまりません。潮の香りに包まれながら、海洋生物を観察するという水族館ファンにとって至上の贅沢。この時間を大切にしなければと思いました。

屋外展示スタート。眼前には豊漁の駿河湾が広がります。
素晴らしき沼津の海。水は透き通っていて美しいです。

本館の大きな魅力の1つは、駿河湾の海岸の一部を飼育展示場として活用している点です。真っ先に目につくのが、大きな魚たちを展示している巨大な生簀です。
こちらで飼育されているブリやマダイは、駿河湾の主要な養殖魚です。有料の体験展示として、養殖用の餌を魚たちに与えることができます。ぜひとも、可愛い大型魚に給餌しながら、沼津の海で生産業者の方々がどのようなお仕事をされているのかイメージしてみてください。

駿河湾の岸辺を展示施設に利用。来館者に至上の臨場感を与える大胆なアイディアと言えます。
生簀の中では、大きなブリやマダイが飼育されています。これらの魚たちは駿河湾にて養殖の対象となっています。
魚たちの養殖についての解説パネル。元気な魚を育てるために、みとしーではバランスよく2種類の飼料を与えています。
本エリアでは魚への餌やり体験が可能です。餌はカプセルトイ方式で販売されています。 

お隣の区画では、水族館の人気者バンドウイルカが飼育されています。ショーも担当している子たちであり、とても人懐っこく、よく水面から顔を出してくれます。ボートに乗って接近する体験企画もありますので、ぜひとも至近距離で海のアイドルたちとの出会いを楽しみましょう。

バンドウイルカが近づいてきました。この個体はとても人懐っこいです。
水面から顔を出してアピールしてくれるので、多くの来館者から大人気。好奇心の強さはイルカの魅力の1つですね。

大型魚やイルカたちの飼育場の近くには、コツメカワウソの展示スペースがあります。彼らも体験展示の常連であり、とても人懐っこそうに見えます。カワウソと目が合った瞬間には、とてつもなくキュンとします(笑)。

ハンモックでリラックス中のコツメカワウソ。目線が合うと、とっても嬉しいですね。
走り回る姿も可愛い。たくさんのアイドル動物たちの魅力も、本館が大人気となっている理由の1つだと思います。

駿河湾を利用した飼育場はもう1つ存在し、そこでは3種類の鰭脚類(カリフォルニアアシカ、ゴマフアザラシ、キタオットセイ)と出会えます。自然に近い環境の中、ゆったりと泳ぐ彼らの姿はとても平和的で癒されます。筆者も時間を忘れて、のんびりと観察しました。

鰭脚類の自然飼育場。このエリアも駿河湾の一部を活用しています。
優雅に泳ぐアシカ・アザラシ・オットセイたち。暖かい伊豆の海は過ごしやすそうですね。
お昼寝中のカリフォルニアアシカ。いい夢を見てそうですね。
同エリアにはフンボルトペンギンも飼育展示されています。日本で最も多く飼育されているペンギンですが、自然界では個体数が減少しています。

さて、大人も子供も待ちに待った華麗なる動物ショーの開幕です。演者となるカルフォルニアアシカやバンドウイルカたちはプロのパフォーマーであり、大胆な技の数々で我々の度肝を抜いてくれます。海洋哺乳類たちの抜群の身体能力に、誰もが感動と高揚感を覚えることでしょう。

会場にてショーの開演を待ちます。ギャラリーの子供たちはワクワクを押さえきれない様子でした。
カリフォルニアアシカの力強いパフォーマンス。ヒレの力だけで全体重を支えるのはすごいですね。
飼育員さんとの息もぴったり。卓越したパフォーマンスは、強固な信頼関係の上に成り立っていると感じました。
バンドウイルカたちのアクロバティックな芸は圧巻! 前列を観覧する場合は、水飛沫を浴びることも覚悟しましょう

沼津の海の学術基地「みとしーラボ」に潜入!

みとしーは「楽しいショーの水族館」というイメージが強いかもしれませんが、博物館施設ならではの高い学術性も有しています。
その学びと出会いの場こそ「みとしーラボ」。生物マニアが唸るほどの学術的な展示に加え、みとしーで取り組まれている環境保全についても学習できます。いざ、水族館の裏側へ!

本館の学術基地みとしーラボ。生き物たちの秘密を楽しく学びましょう。
立ち並ぶ透明標本。筋肉を透明化し、骨格を色づけすることで、骨の配置を立体的に観察できるのです。
深海魚の液浸標本。リュウグウノツカイの幼魚、とても神々しいです。
地球上から絶滅したと考えられていた甲殻類・オオスナモグリの液浸標本。これまで化石でしか存在が知られていませんでしたが、2010年代に沼津市や土佐市で生体が発見されました。
海洋哺乳類の頭骨の展示。種類ごとに、顎の形態や歯の本数を見比べてみましょう。

超絶嬉しいことに、本エリアの水族展示はバックヤードと一体化しています。大切に育てられている水棲生物の幼体を観察できるうえに、スタッフさんのお仕事を見学する貴重なチャンスなのです。
生き物の飼育保全の現場を見ることは、環境教育において重要だと思います。水族館は生命を守り育て、地球環境保全の意志を次世代に継承する場なのだと感じました。

公開型バックヤードの展示。スタッフさんたちの仕事を見ながら、生き物の飼育・保全することの意義を学べます。
生き物を増殖させて、保全するのも水族館の大切なお仕事。こちらのエボシカサゴは、成魚でも珍しいのに激レアな幼魚を見られるとは本当にラッキーです
ハナビラウオの幼魚はクラゲを食べるので、小型のクラゲと一緒に展示されています。ちょうど、クラゲを食べる瞬間を撮ることができました。
シャーレの中にあるミズクラゲのポリプをライブ配信中。運が良ければ、赤ちゃんクラゲの誕生に立ち会えるかもしれません。
工夫された解説資料を用いて、来館者にわかりやすく水棲生物の生態や飼育の秘密を伝えています。後ろのタンクの中では、ミズクラゲの餌となる動物プランクトンを育てています。

本エリアでは、みとしーの環境保全活動の詳細な解説展示があります。来館者の方々に、ぜひじっくり読んでいただきたい重要な資料です。
不思議で魅力的な深海魚も、かっこよく愛らしい海洋哺乳類たちも、豊かで美しい自然環境なくしては生きていけません。人類が地球の仲間たちと共に暮らしていくにはどうすればいいのか、展示パネルを読みながら考えていただきたいと思います。

みとしーの生物保全活動についての解説パネル。希少生物の飼育保護に加え、自然界での生息環境保全にも取り組まれています。
環境教育も水族館(博物館施設)の大切なお仕事。みとしーは地域の人々に素晴らしい学びの機会を提供し、生命と地球の大切さを伝えています。
みとしーで実施されている環境中のゴミ対策。沼津のみならず美しい地球の自然を守るために、私たち1人1人の意識が重要となってきます。
海洋ゴミが魚たちに与える影響は深刻です。深海の棲むミズウオの胃の中から、多量のゴミが出てきました。ゴミを自然界に投棄すると、生き物たちの命を奪うことになるのです。

学びも、遊びも、とことん楽しめる学術エンタメ水族館みとしー。生き物たちと沼津の海が大好きという想いが、水族館全体にあふれています。きっとその愛情が唯一無二のエキサイティングな展示につながっているのだと思います。
万人向けの水族館として、筆者は強くオススメします。生物マニアも、家族連れも、ラブライバーも、全ての人が奇跡の非日常に没頭できます。

建屋には『ラブライブ!サンシャイン』の装飾もあります。筆者が好きな『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』も、いつか水族館とコラボしてほしいですね。

伊豆・三津シーパラダイス 総合レビュー

所在地:静岡県沼津市内浦長浜3-1

強み:陸水域から駿河湾の深海まで伊豆地方の多様な環境における膨大な水棲生物展示、動物ショー・生き物たちへの餌やり・タッチングプールといった各種体験展示の高いエンターテインメント性、希少生物の増殖や環境保全について詳細に学べる教育性・学術性の高さ

アクセス面:水族館は内浦の沿岸部に位置してていることもあり、車を運転して行くのがオススメです。淡島などの観光スポットに立ち寄ったり、美しい海の情景を眺めたりすることもできますので、旅行者の方はレンタカーの活用を推奨します。公共交通機関としては、沼津駅から内浦行きの路線バスが出ており、ラブライブのラッピングバスに乗って行くのも楽しい思い出となるでしょう

伊豆の水域環境に棲む数多く生き物たちの生体展示、迫力満点の動物ショーと愉快な体験展示、さらに環境保全学習も超充実。水族館の魅力的な要素をぎっしり詰め込んだ、スーパー学術エンタメ展示施設と言えます。水棲生物の保全・飼育技術の展示に生き物マニアは大興奮し、ダイナミックなイルカやアシカたちのパフォーマンスに酔いしれて家族連れもエキサイティングな1日を過ごせると思います。
水族館で生態学や環境保全を学びたい人はもちろん、家族や友人との休日レジャーを楽しみたい人にもオススメできる展示内容であり、観覧後には誰もが生き物たちの虜になっていることでしょう。伊豆の海や河川の豊かさ・美しさを知ることもでき、地域の水域環境の学習理解に最適の施設と言えます。
アニツーリズム目的で訪れたラブライバーの皆様の中には、本館の展示をご覧になって、水族館が大好きになった方もいらっしゃるのではないでしょうか(笑)。

みとしーの近くのビーチにて『ラブライブ!サンシャイン』のワンシーンを再現。たくさんの水族館を盛り上げてくれた本作には、とても感謝しています。

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