暮らしの実験室2:台湾の発酵食品「梅乾菜」づくり
台湾に「梅乾菜」という菜っ葉のお漬物があります。これは、塩漬けしたアブラナ科の葉を干したもので、乳酸発酵の酸味があり、「都こんぶ」の匂いが漂うというと想像がつきますでしょうか。
奈良の在来野菜「大和まな」で仕込んでみましたが、客家の人たちは、これ専用に自家採種していて、2−3倍くらい長いんですよね。
客家(はっか)とは?
多民族の島台湾には、「本省人」と呼ばれる日本統治時代以前(16世紀くらい)から台湾に移り住んだ渡来人と、戦後、国共内戦で破れた国民党に伴って移り住んだ「外省人」、それからマライポリネシア系の原住民が暮らしています。
「本省人」の多くは、「台語」と呼ばれる福建省の南部、閩南語を話す人たちで、約75%を占めます。客家も「本省人」にカウントされますが、12%と、福建にルーツを持つ人たちに比べるとかなり少数派。客家は元々は大陸の中原に住んでいた部族で、戦争で領土を追われ、広州に多く住んでいましたが、いまでは全世界に散らばっています。移住先でも独特の言葉と文化を保持し続けたので、「客人」と呼ばれているそうです。
台湾の薬膳の先生に「客家ってどんな民族?台湾では少数民族的な存在でしょうか?」と尋ねると、「うーん、少数民族っていうか、関西人みたいな感じかな」との妙答。あるエリアに住んでいる&倹約家でもったいない精神からいろんなものをとっとくのだそう。いつでも移動できるように、将来の難に備え、あらゆるものを保存してしまうという興味深い客家の食文化。お漬物、干し柿などの乾物に加え、客家独特の発酵、紅麹をつかった紅麹糟や、柑橘醤など、醤類(ソース)がとにかく豊富なんです。
前回記事:客家のオレンジソース
菜っ葉の漬物いろいろ
多様な発酵食品の知恵が暮らしに根付く客家。芥菜(ジエツァイ)を塩漬けした後、乾燥の程度で名前が変わります。
「酸菜(スァンツァイ)」:からし菜の即席漬け
「福菜(フーツァイ)」:酸菜を干して水分を飛ばした後瓶詰めしたもの
「梅乾菜/梅干菜(メイガンツァイ)」:福菜を完全に乾かしたもの
乾燥の程度、それは、保存期間の長さを意味する。即席漬けの酸菜は付けっ放しにしておくと酸っぱくなったり傷んだりしやすくなる。それを干して長期保存できるようにしたのが福菜。旧正月まで保存して食べられるということで、「福」が来たるおめでたい漬物なのだ。
⇩瓶詰めされる福菜
(こちらは台湾の「関西」にて。台湾にも関西という地名があって、客家の人たちが多く住むエリアの日常風景。発酵食にたくさん出会えるはずです)
福菜は、固い茎の部分を使われることが多く、梅乾菜は、やわらかい葉をからからに乾燥させて、しばったもの。実に多様な発酵食品の種類に驚きます。食べ方もそれぞれ違うんです。
梅乾菜をつくる
普段は台湾に行った時に購入していたのですが、手に入らなくなりやむなく手作り。
2週間塩漬け→干す→塩抜き(浸漬)→干す→結ぶ→仕上げの乾燥
なんで何度も洗っては干しを繰り返すのか謎だったけど、やってみて納得。干してると塩が吹いてくる。これを洗い流してまた干す。
やっぱりからし菜だとこの工程の中でチリチリになってしまう。その点、大和まなはなかなかいい。繊維がしっかりしていて弾力があるのと、旨みも出る。梅乾菜むきなんだな。奈良の在来種なのがまたいい。
ちょっと湿ってるくらいのときに束ねておく。
とりあえず第1段。第2段はまた塩分濃度とからし菜の品種を変えて実験してみます。
6月の薬膳民泊では、梅乾菜を使ったお料理を作る予定なので、興味のある方は是非一緒に作りましょう!
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