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あのクズを殴ってやりたいんだ 完走感想

はい。スッキリしました。

奈緒が主演ということで見始めました。彼女はどこにでもいる普通の女の子という役が本当にぴったりだと思ってます。芸能人ってメチャクチャかわいいとかキレイというイメージなのですが、彼女はそうではない(と思う)。ただ役者としてのキレイやかわいいがとてつもなく備わっている稀有な女優だと思っております(伊藤沙莉も同様)。芝居の中でスーパー輝く役者、そういう女優が好きです。

第1回でどんな話になるのか見当もつかなかったんですが、結婚式をドタキャンされて、さらに酷いクズ=海里と出逢うという・・・。そこから何故か女子ボクシングの話となり、なんだなんだと思っているうちに最終回まで行ってしまったような・・・。でもドラマの本質はそこじゃないのがまたいいんですよね。

ただのクズだと思っていた海里はボクサー時代に自分の大好きな先輩と対戦をし、結果先輩が死んでしまった過去を持つ。スポーツの中とはいえ自分の拳で大好きな先輩を殺してしまったという重圧に耐えかねてボクシングから逃げてクズの道に走った。ま、最初は「だからってイケメンクズになれるんだからいいわな」とも思っていたわけです。

そんなクズ海里に騙されたほっこー(ほこ美=奈緒)は、縁を切ることが出来ず「だったらあのクズを殴ってやる!」とボクシングジムに入会。そこで海里の過去を知ることになる。まっすぐなほっこーの想いに応えられるはずもない海里はほっこーをおちょくりながらも、どんどんほっこーの心根の優しさに惹かれていくわけで。

先輩の死を抱え続け、未来に希望を持つ自分を許せない海里。だがほっこーに後押しされて「自分も前へ進みたい」と思うようになっていく。しかし先輩の親族にとって海里はやはり【加害者】であり、到底許すことなんてできない。

(というのは分かるが、ボクシングで正々堂々戦ってその上で死んでしまった息子の気持ちになってみれば、海里をあんなステロタイプな対応で許さないという父親はちょっと違うかなとも感じる。許さないんじゃなくて、許したくても許せない芝居というのをやって欲しかったとは思う)

そんなわけで海里は「やはり俺は前へ進んではいけないんだ」という思いに戻ってしまう。そのたびほっこーはそんな海里を優しく殴りつけるのであった。(あ、物理的にではなく、感情としてです)

やがてほっこーは自分が前へ進む姿を見てもらうことが、海里が前に進む力になるのではと思うようになり「プロボクサーを目指す」というすごい展開なんですが、ここを乗り越えられた視聴者だけが最終回で泣けるわけです。

最終的には撫も悟も悪い奴ではなく、悪い人が出てこない僕好みの作品であったわけです。みんな弱い。弱いから妬んだり、いじめたりする。でも強いほっこーにも自信があるわけじゃない。妬めなかったり、いじめる側になれないだけ。そんな弱い女の子が心が死んでしまいそうな男の子を助けるという非常に泣ける話でした。最終回の最後にもきれいなピリオドが打たれていてとても気持ちいい終わり方だった。

キャストについて。

奈緒は言うに及ばず。玉森くんが奈緒に引っ張られたのかとてもとても良い芝居をしてくれていた。特に後半、奈緒と見つめ合うシーンが多かったが、心が繋がるのが見える、芝居の奇跡が幾度もあったように思いました。羽根木ジムの渡部くんと岡崎紗絵もいい感じでした。渡部くんは本当にいい感じの枯れ方をしてますね。イケオジなんですが、ちゃんとダメ人間であることを忘れてない。ほっこーのことを最後まで「佐藤さん」と呼ぶのがとても良かった。
市役所チームの小関裕太と撫ことしおりんも良かったと思います。特に小関裕太さんは「どうしちゃったの?」っていうくらい表情で芝居ができていてすごいのでした。撫はあれでいいんです。必要十分な芝居をしてくれていて変なことをしない半悪役をしっかり演じてくれて素敵だった。しおりんだから根っから憎みきれないところを持ち合わせていたのでしょうか。
どうでもいいけど斉藤由貴さんがここまで芝居が達者になるとは。アイドル時代の彼女を(スケバン刑事とかね)知っている人であれば、時代を感じてしまいますね。ミポリンも亡くなってしまったわけですよ。それを言いだすと止まらなくなるので控えますが。

とにかく愛すべきキャラのオンパレードというとてもハートフルなお話だったし「女子ボクシング」という奇抜なネタをブッコんできたところに勝負どころを感じましたし。いいドラマでした。

結局、唯一の悪役は海里の先輩のお父さんだけだったという・・・。これは演出の綻びだよね。惜しい。でも仕方ないのかもしれない。


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佐藤雀@すずめ組
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