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「稚拙で猥雑な本能寺の変」16

○シーン16 光秀の屋敷・庭先

上手前より光秀、追って織部。その後ろを秀満、忠興、平太。

織部  「ちょっと待ってください光秀さん、どういうことですか?」
秀満  「それが光秀様のご判断なのです。どいてください!」
織部  「どきませんよ!そんなの絶対に間違ってます。秀満さんだってそう思うでしょ」
秀満  「あなたは天照大神のお使者ですよね」
織部  「そうでした」
秀満  「あなたが持ってきた預言の書、それに書いてある通りになることに問題があるのですか?」
織部  「問題は・・・ないですし、その方がいいような気もするんですが・・・でもダメです。やっぱりこんなの間違ってます」
秀満  「これが光秀様のご判断です」
織部  「ご判断・・・光秀さん、謀反を起こしてどうしようって言うんですか」
光秀  「織部様」
織部  「はい」
光秀  「私はこの国の平和のため、民のために織田信長を討つのです」
織部  「民のため・・・」
光秀  「そしてそれがしずたちを救うことにもなる」
織部  「はあ」
秀満  「分かったら邪魔をしないでください」
忠興  「織部様、お下がりください」
織部  「民のためにあなたは大切な人を、信長さんを殺すんですか?」
秀満  「・・・」
忠興  「・・・」
織部  「どうなんですか!」
秀満  「・・・支度がありますので。これにて」
忠興  「では」

光秀、秀満、忠興、行こうとする。
取り残された平太。

平太  「・・・」
織部  「それで・・・それでしずちゃんは本当に助かるんですか?」
光秀  「秀吉を信じるしかあるまい」
織部  「秀吉さんを信じる?光秀さんは信じてるんですか?」
光秀  「分らん」
織部  「僕は秀吉さんを信じられません」
光秀  「ではどうしろと言うのだ!」
織部  「どうしろって・・・」
光秀  「気持ちはありがたい。しかしこうするしかないんです」
織部  「しずちゃんとたねちゃんを助けに行きましょう」
秀満  「助けに?」
光秀  「無理だろう。秀吉の守りは堅牢だ」
織部  「それでも必ずチャンスはあるはずです」
秀満  「織部様、我らは秀吉の援護で毛利征伐に向かうよう信長様に命じられているのです」
忠興  「本能寺に向かうまでは表立った動きをするわけには行かないのです」
織部  「じゃあどうしたら・・・」

間。

平太  「・・・俺が行きます。俺がしずとたねを助けに行きます」
織部  「平太さん」
秀満  「それは無茶だ」
平太  「お願いします。こうしてる間もしずとたねは辛い思いをしてるんです。俺は二人の兄貴なんです。俺がなんとかしないと・・・お願いします!」
光秀  「分かった。だがくれぐれも無理はするな」
忠興  「助けてやりたいのは山々なのだが・・・」
平太  「大丈夫です。ね、織部さん!」
織部  「えっ?僕も?いやいやいやいやいやちょっと待ってください。怖い人と会うんでしょ!絶対無理だから」

暗転。

<17>に続く

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