BFC5落選展感想「不夜城のサングラス」+「火はどこに消えるのだろう」吉美駿一郎
ハードボイルドな雰囲気がある作品。不夜城といえば、馳星周さんの作品が思い浮かびますが、関係あるのでしょうか。
この作品ではバッティングセンターやラウンドワンが不夜城なのかなと思いましたが、サングラスは?というのが初読時の感想でした。読み返すと、「適切な色眼鏡がないからだ」という一文があり、ここがサングラス要素なのかな、と考えました。「五十代で打撃に開眼した」藤田を適切にカテゴライズする色眼鏡を人々は持っていない。
一方で藤田は「朝七時のラウンドワンには化粧をした十代の少女が大勢いた。着飾った恰好が板についている。男性は身を持ち崩したようなタイプか、べったりとした長髪の不健康なタイプかの二種類に分類できた」と他者をはっきりとカテゴライズしています。
タイトルにこだわってしまったのは、どうしてこの作品にこのタイトルをつけたのかが、すぐには分からなかったらからです。(悪い意味ではありません。意味の広がりがあるいいタイトルだと思います)
吉美さんのツイート(ポスト)によると、続きを書く予定があるそうなので、藤田が、またはそれ以外の誰かが、別のサングラスをしているのかもしれません。もしかしたら、読者こそがサングラスをしていることが明らかになるのかもしれません。
別の不夜城が出てくるのかもしれません。
今の状態でも余韻があるいい終わり方だと思いますが、続きを読めるのが楽しみです。
BFC4の予選優秀作。
「生き物を殺した話を誰かがはじめた」という出だしに引き込まれます。真っ二つになったトノサマガエルの描写もすばらしい。好みの世界観です。
比喩としても読めるし、素直にアニマル・ウェルフェアについての作品としても読める。
去年の作品ですが、今の世界情勢の中で改めて読まれるべきではないかと思い、一緒に紹介します。みんな、読むんだ!
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英語を教えながら小説を書いています/第二回かめさま文学賞受賞/第5回私立古賀裕人文学賞🐸賞/第3回フルオブブックス文学賞エッセイ部門佳作