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続:ここ一年以内に読んで、自分に影響を与えた本
先日、ここ一年以内に読んだ本について書評を投稿しました。引き続き、最近読んだ本についてレビューしますね。今回は印象に残った5冊をご紹介したいと思います。
『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』(山口周)
人生を会社のように戦略的に経営するという視点が新鮮で、実用的な内容です。早速ですが、特に印象に残ったのが、限られた時間という資本をいかにして効率的に使うべきか、明確な指針を示されていたことです。時間を投資することをスタート地点に、人的資資本→社会資本→金融資本という順番で人生の基盤となる資本を築いていきます。
例えば。。。
まずは「スジの良い学習」や「適切な仕事」に時間を投じることで、資格やスキルの習得といった「人的資本」を形成します。
そして、そのスキルを実際の仕事で活用し、高いパフォーマンスを発揮することで、上司や同僚、または会社や取引先からの信頼を得ることができます。これが「社会資本」につながります。
最終的にその信用が給料や報酬といった金銭的な価値、すなわち「金融資本」へと転換されていくことになります。この順序を守ることが重要で、逆に最初から人脈を広げようとしても、信頼の根拠となるスキルのような人的資本が伴わないと、最終的に金融資本にはつながらないということです。
著者自身のエピソードとして、過去に、異業種交流会に参加してネットワークを広げようとしたことがあったそうですが、それが直接的な成果につながることは少なかったようです。
このようなことはなんとなく理解してはいたものの、きちんと言葉にして論理的に説明してくれた本は本書が初めてです。そのせいか、読後すっきりと霧が晴れた気持ちになりました。
『健康になる技術大全』(林英恵)
健康に関する情報は世の中にあふれていますが、その信頼性には疑問を感じるものが多いです。医者でもなく、アカデミックな裏付けのない「専門家」の書いた本は、どうしても信憑性に欠けることがあります。
しかし、本書の著者である林英恵さんは、ハーバード大学の公衆衛生学の博士号を持つ専門家であり、本書内では科学的根拠となるデータを基に健康になるための情報を提供してくれています。
例えば、加工肉を食べることで発がんリスクが何%上昇するのか、科学的な研究結果をもとに明確に示されており、「体に悪い」と言われるだけではなく、どの程度のリスクがあるのかを根拠となるリサーチデータとともに解説しています。
データの出所と、リサーチ方法などの条件もあきらかにしているため、紹介されている説が自身に当てはまるかどうかもわかります。例えば、「アメリカ人を対象としたデータではこのような結果がでている」といった場合、アジア人の我々は話半分で聞いておこうかなと判断できます。
なお、本書は最初から読み進めても良いし、興味のある分野の章にまず目を通すといった百科事典のような使い方もできると思います。
『エミン流「会社四季報」最強の読み方』(エミン・ユルマズ)
日本株の投資をする上ですでに「会社四季報」を活用されている方は多いと思いますが、その読み方をエミンさん流の視点で改めて学ぶことができます。
本書は単なる四季報の解説本ではなく、株を選定する際に注目すべき指標についても詳しく解説しています。どの数字をどのように読み取るべきか、実践的な視点で説明されています。
例えば、「PER」という利益に対する株価の妥当性を測る指標があります。この指標は日本の平均的な企業だと15ぐらいなのですが、急成長のスタートアップ企業などの場合200、300といった非現実的な値になり、正しい評価の対象から外れてしまいます。
そこで、著者のエミンさんは、「PEGレシオ」という「PERを利益の成長率で割った指標」を推奨しています。もしもPERが200のベンチャー企業が、過去一年で利益が3倍になっている場合、PEGレシオは200/200(%)=1となります。(PEGレシオが1以下だと一般に割安株と見なされる)
このように四季報の読み方にとどまらず、一般的な株価の評価にも使える情報も網羅しており、非常に勉強になります。
『弱い円の正体――仮面の黒字国・日本』(唐鎌大輔)
コロナ発生以降のこの4年間、円安が定着していますが、その背景について新しい視点を提供してくれた本です。
多くのメディアでは「日米の金利差が円安の主な原因」と報道されることが多いですが、本書ではそれだけでは説明がつかないと指摘しています。著者は日米の金利差が縮まってもなお円安が続く主要因び一つとして、「デジタル赤字」という概念を挙げています。
デジタル赤字とは、日本の企業や個人が、AWSのクラウドサービス、Amazonプライム、YouTube、ChatGPTといった海外のデジタルサービスに多額の支出をしていることで生じるサービス収支のマイナスのことです。これが積み重なることで、日本円が海外に流出し、円安が進行しているというのです。
「ん?となると日本人がこれらのネットサービスに依存する生活習慣が変わらない限り円安は継続するの?ということは原材料を輸入に頼る日本は円安起因のインフレは当分継続するのかな?」
本書を読んでこのような疑問が浮かびました。
本書のおかげで、為替動向を考える際に、従来の金利差という枠組みだけでなく、デジタル赤字という新たな要因を理解でき、自身の視野が広がったと感じます。読後、著者の唐鎌さんの有料noteも購読しはじめました。
『ミチクサ先生』(伊集院静)
最後に紹介するのは、夏目漱石の生涯を描いた小説『ミチクサ先生』です。この本は最近ではなく、2年ほど前に読んだのですが、おまけで今回の書評の対象にします。
理由は私が愛読している経済や投資の本は、読み始めるとすぐに眠くなるという妻に「面白い小説を教えてほしい」と頼まれ、先日この本を薦めたところ、一気に上下巻を読み切っていたからです。そこまで惹き込まれたなら、本投稿でオススメするに値すると感じました。
内容ですが、漱石があらゆる時代で聡明な生き方をしていたこと、正岡子規との友情、『吾輩は猫である』のモデルとなった猫の描写など、読んでいて飽きることがありません。個人的に感激したのが、漱石がイギリス留学時に研究には励んでいた校舎が、私と妻が30年前に留学していたロンドン大学の隣にあったということです。
私はもともと伊集院静さんの『大人の流儀』シリーズのファンで、この小説は日経新聞に連載されていたときから気になっていました。そして、書籍化と同時に読んでみたところ、期待以上の作品で、今でもたまに読み返すほどです。
さいごに
こうして振り返ると、読んでいる本に一貫性はなく乱読とも言えますね。でも、それぞれに異なる視点や知見を提供してくれたので良しとしています。
次に読む本がどんなものになるのか、今から楽しみです。
以上になります。今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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