【心問書簡】色彩
伝えたいことを、伝えたい人に、
伝えられなかったことがあります。
そのことで、長年後悔し、
月日と共にそれは薄まっては行くのだけれど、
物悲しさの記憶がしぶとく、
油のように心の水面に薄く、膜を張っているのです。
やがて、ほとんどそれを乗り越えて、
なんの問題も無いくらいになると、
もうその頃にはその経験が、
自分の中の土台の一部になっているのがわかります。
かなしみの色は、何色くらいあるでしょうか。
なんとなく、よろこびよりも、種類が多そうです。
かなしみの色は、
クレヨンで想像することも、
色鉛筆で想像することも、
色ペンで想像することも、
自然の中に例えを探すことも、
油絵でも水彩画でも墨汁でも、
想像することができそうです。
よろこびなら、クレヨンと色鉛筆と色ペンと水彩画が、
しっくりきそうです。
先日、私は少し疲れていて、
やらなきゃいけないことに、
何日間もずっと追われているような気分でした。
そんな1日の用事を終えて、
ちょうど家に着いたその時、
暮れていく空に、久しぶりに虹を見たのです。
私はたぶん、虹は七色じゃなくて、
虹色なんだ、
と、そのときはじめて気がついたのでした。