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中学理科の教員から見た「小学校理科」【読書のキロク・保存版】

こんばんは、"もっちゃん”です。
記事に興味を持ってくださり、ありがとうございます。

今回は【読書のキロク】です。
教職大学院の実習も近づいてきて、少し教科に関することも考えておきたいと思い、選んだ書籍になります。

教職大学院にいると、現場ではそこまで密に関わることのない「小学校の先生」方とも関わる機会がたくさんあります。

そこで話をしながら読みました。今回は「初等理科」に関する本です。
今回は、中学の理科の教員が、小学校の理科のテキストを読んで感じたことを、つらつらと書いていきます。

◯今回読んだ本:『初等理科教育法~先生を目指す人と若い先生のために~』 磯﨑哲夫 編著 学校図書

教員養成の大学の講義でテキストとして使用するような書籍かと思われます。
各章で著者が異なる、編著になります。

◯概要

第1章 世界の中の日本の理科教育(子どもの学力)
第2章 日本の理科教育の歴史
第3章 小学校理科教育の目標
第4章 小学校におけるアクティブ・ラーニング
第5章 小学校理科の基礎知識(エネルギー)と教材研究
第6章 小学校理科の基礎知識(粒子)と教材研究
第7章 小学校理科の基礎知識(生命)と教材研究
第8章 小学校理科の基礎知識(地球)と教材研究
第9章 子どもの発達の段階と学習指導の在り方
第10 章 小学校理科学習の評価と授業改善
第11 章 小学校理科の単元計画と授業の準備
第12 章 小学校理科の授業の実際(第3 学年):学習内容と学習指導案
第13 章 小学校理科の授業の実際(第4 学年):学習内容と学習指導案
第14 章 小学校理科の授業の実際(第5 学年):学習内容と学習指導案
第15 章 小学校理科の授業の実際(第6 学年):学習内容と学習指導案
第16 章 生活科や中学校理科との関係性

第4章では,近年の教育改革の基盤になっているアクティブ・ラーニングの視点から小学校理科での取り組み方を,第10章では,新しい評価の在り方を小学校の理科を事例にしながら解説しており,この2つの章は,世界的な教育学の動向を考慮しながら理科を事例にした内容となっている。また,第11章から第16章までは,実践の場で用いるため,教育実習はもとより現職の各種研修をも対象として使えるように学習指導案を示している。

上記ホームページ目次、主なポイントより引用

なんとなくなつかしさを覚える構成です。

現職の先生が書かれた章があり、指導案なんかも載っていて、現職の教員でもかなり読み応えのある1冊だったように思います。

恥ずかしながら、「初等理科」についてほとんど知識のない私にとっては、勉強になることばかりでした。

◯小学校理科の系統性

テキストを読んでいて一番感じたことは、
“初等理科の系統性”
です。

問題解決に際して、各学年で育成したい力が非常に明確に定められているのだなぁ、と感じました。

テキスト内で共通で書かれているのは、
3年生:比較
4年生:関連づける
5年生:条件を制御する
6年生:多面的に考える
ということです。これが学習指導要領にも示されているとのこと。

個人的にはこれが非常にわかりやすいと思いました。
各学年でこれだけ指導のポイントが明確になっているということは、現場の教員にとってはとても動きやすいものと思います。

自分としては、"多面的に考える"のイメージが掴みきれめいない気もしますが、
この3年生から6年生までの流れがとてもわかりやすいと思います。

◯中学理科で重視するのは探究の学習過程

上記を踏まえて、
中学理科では何を重視するのか
ということを考えると、

探究の学習過程

かと思います。

上記のように小学校で培った「考え方」を生かしていくわけです。
各教科の「見方・考え方」と言いますが、上記の小学校で問題解決の中で培われてきたのは「考え方」かと思います。

それを踏まえて、中学校の課程では、
1年生:問いを見出す
2年生:方法の立案と結果の分析
3年生:探究活動に対するリフレクション
といったイメージでしょうか。

探究のサイクルを回していくわけです。
1年生では〜、みたいな書き方をしましたが、小学校ほど明確ではないと思います。
むしろ、全学年で上記の活動を繰り返し進めていくような形かと思います。

◯理科の発端は幼児期から

本書においては、幼児期の学びや小学校低学年の生活科と理科との連続性についても書かれていました。

確かに、理科の学習のベースとなるのは、子どもたちの自然体験になるわけです。

生まれ落ちたその時から自然に身を置く私たちですから、理科との出会いは生まれた瞬間からあるわけですよね。

そして、それが誤概念であったとしても、なにかしらの形で対象をとらえてきているわけです。

そういったものの上に初等理科が積み重ねられ、その上に中学理科があるのだ、ということを、改めて感じさせられました。

◯理科はスパイラル・カリキュラム

本書では、小学校からの連続的な理科のカリキュラムに関して、

スパイラル・カリキュラム

という言葉を使っていました。

あまり聞きなれない言葉ではありましたが、なんとなく言葉だけでイメージできることでもあります。

「スパイラル=螺旋構造」だと思っていますが、

要するに、
日本の理科のカリキュラムは、
何度もその分野と他の分野を行き来しながら、繰り返し学習し、
徐々に学びを深めていく構造になっている

ということかと思います。

たとえば、
小3で「ものと重さ」について学習し、
小5で「ものの溶け方」(溶けても重さが保存される)ことを学び、
小6で「水溶液」(ものがとけている水)を学び、
中1でまた「水溶液」を学習し、
中2で「化学変化」の中で、原子や分子について学び、質量保存の法則を学ぶ。
もっと言えば中3で再び「酸とアルカリ」について学習します。

これでもか、というくらい、何度も同じようなことをやりながら、学習を深めていくスタイルなのです。

これぞ「スパイラル・カリキュラム」
なんとなく名前がかっこいいから言ってみたくなりますね。

◯スパイラル・カリキュラムの良いところとそうでもないところ

中学から高校にかけては、理科のカリキュラムは大きく隔たりがあるように思います。科目は選択制になるし。

でも、初等理科から中学理科にかけては、この「スパイラル・カリキュラム」のコンセプトのもと、系統だって学習できる体制が整っているように思いました。

順当に学びが進めば、とても良い学びになると思います。

一方で、このスタイルは相性の良くないカリキュラムのスタイルもあるようにも思います。

プロジェクト学習とか、コアカリキュラムとか。
経験主義的な学習観に立ったときに、大きな改変が必要になってくるようにも思います。

また、何度も同じような学習が繰り返される、ということは、
後半になるにつれて新奇性は失われ、冗長なものになりかねない、
それまでの学習が前提となる場合が考えられる、

ということでもあると思います。

(この辺に関しては、なんとなく中学校で指導していて弊害と感じているところでもあります。)

現在のカリキュラムの良いと思うところとそうでもないところを、うまい具合に整理しながら、今後自分の理解を深めていきたいと思います。


そんなことを考えた1冊でした!少し長くなってしまって申し訳ありません。

本当はここには書ききれないくらい考えたことはあるのですが、このくらいで。
大学院では講義が少ないシーズンでもあります。
こういう機会に、読み応えのある本を読んで、自分の力をつけていければと思います。

自己紹介はこちらから。

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