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ワークショップ熟達者のファシリテーションとは?【論文備忘録】

こんばんは、"もっちゃん”です。

過日、ワークショップのファシリテーションに関する論文を取り上げました。

そこで自分の中で上がっていた疑問がありました。
「熟達者の暗黙知」
ということです。

論文を探していくうちに、ちょうど同じ筆頭著者が2年後に書いていた論文があったので、今回はそれを取り上げようと思います。

⓪今回取り上げる論文:安斎勇樹・東南裕美(2020). ワークショップ熟達者におけるファシリテーションの実践知の構造に関する記述研究. 日本教育工学会論文誌 44(2). pp.155-174

タイトルからして、まさに前回読んだ論文で欲していたところを満たすようなものかと思い、読んでみました。

本論文も安斎勇樹氏をはじめとするミミクリデザインの方々によるものです。自分の無知さに呆れてくるところではありますが、もはやミミクリデザインが何者なのか気になって仕方がない自分がいます。

①要旨

今回も抄録をそのまま転載させていただきます。

本研究の目的は,ワークショップ熟達者のファシリテーションの実践知を構造的に明らかにすることである.本研究では,3名の熟達者を対象とした観察調査とインタビュー調査を行った.分析の結果,熟達者はファシリテーションの場面において知覚した情報を,個人の心理や集団の性質・関係性に関する概念的知識に照らし合わせ,参加者の観察・プログラムの調整・情報伝達の調整・関係性の調整・リアクションの調整に関する手続的知識を用いて具体的な行為を決定していることが明らかになった.また,これらの背後には,ワークショップが権威や規範から解放された民主的な手法であることに価値を置くメタ認知的知識が共通して存在していること,またそれらのメタ認知的知識同士には葛藤関係があり,それによる熟達者固有のファシリテーションの困難さが存在していることも示唆された.分析結果から,実践者育成に関するいくつかの示唆が得られた.

上記論文の抄録を転載

②研究全体に関する個人的な感想

まず、前回の研究に続き、本研究でも扱うデータが膨大で驚きました。
今回の研究では、分析対象の中心はインタビューデータかと思われます。

ワークショップ実践前と実践後の半構造化インタビュー

ということだったので、それだけで大変だと思います。
研究対象は3名の熟達者ということで、それが×3。

インタビューデータのコーディングも行う必要があるため、文字起こしもしなければならない。

本研究ではコーディングも2名の著者それぞれが行なっているので、×2。
一致率まで出し、擦り合わせていかなければならない。

非常に丁寧な手続きを経て書かれた論文のように思います。

というか、論文てここまでやらねばならぬのか!とまで感じてしまうような論文でした。

③研究結果について

それぞれのワークショップ領域に固有の実践知を記述したところで、
それを引っ括めて考察しているところに意義があるように感じました。

結果として、実践知の構造を以下のような図でまとめています。

本論文 図1 熟達者によるファシリテーションの実践知の構造
を転載

※図を転載してよいか非常に迷いましたが、自分的に学びの多い図だったので載せさせていただきました。
※必要に応じて削除いたします。

とてももっともな図であり、数々のワークショップ実践者のファシリテーションの過程が、端的に表されていると思います。

個人的には、この図と、本論文中のコーディングされた各熟達者の発話を見ているだけでも、ワークショップの熟達に近づけるようにも思いました。

実践知の記述というのは、思っているより障壁が多いと思います。実践者にとっては自分の中だけにとどめておきたい部分も少なからずあるかもしれません。

それが研究という形で皆が触れられる環境に出るというのは、とても有難いことのように思いました。

④実践者育成に向けて

本論文も含めて、一連の研究がどこに向かうのかを考えた時に、

「ワークショップ実践者の育成」

に他ならないと思います。きっと、研究協力者の実践者の方々も、そこに直結する思いがあるのだろうと思います。

最終的にはハウツーを多くの人が獲得できる状況までいってほしいとも思います。

⑤領域固有のワークショップ実践知

これまでも少しずつ書いてきましたが、こうして
ワークショップ全体を一括りにして考える立場には若干懐疑的
でいる自分もいます。

ワークショップが広まり過ぎてきた現在、いっそうそれを強く感じる次第です。

もちろん本研究のようなメタ分析的な研究は、汎用性も高くとても有意義なものと感じます。

完全に個人的な興味ではありますが、それぞれのワークショップ実践者の事例それ自体が面白く、その固有性をもっと推しても良いのかなとも思います。

あくまで本当に個人的な考えです。

⑥学校現場に向けて

教職大学院で学んでいる身分ですので、やっぱり学校現場にどう落とし込むかも考えていかなければならないように思います。

正直、ワークショップと学校教育がどこまで共存できるのかもわかりません。
学校におけるワークショップ型授業にどこまで援用できるのかもなんとも言えないところだと思います。

本論文のような貴重な知見を、
教員という立場からどのように生かすことができるのか
ということについては、今後の自分の課題のようにも思います。


ということを考えました!

前回の論文に引き続き、自分にとってとても興味のある分野でもあったので、一気に読み進めてしまいました。

解釈の間違い等ありましたら申し訳ありません。ご指摘いただけたら幸いです。

私もまたワークショップ研究したくなってきたなぁ…。


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