自炊って、「自立」だし「自由」だし「自信」なんだな。
5年前に突然厄介な食物アレルギーになって、外食も旅も家族との食事もままならなくなり、いつしか「食」から目を背けるようになってしまっていた。
「食」はつらいもの。
常にボクを落ち込ませるもの。
あんなに愛して、あんなに楽しんで、レストランガイドを主宰したり本を何冊も書くくらいは得意分野であったのに。
まぁ愛が強すぎた分、必要以上に目を背けていたんだと思うけど。
そんなある日、「一日3回ある食事に対してこんなにネガティブでは、さすがに人生的にあかん!」と深刻に反省し、「食の楽しみ」を取り戻すために「自炊」を始めようと思い立った。
ミニマルでいいから継続できる料理であること。
そして、体と心にいい料理であること。
あと、「レシピに支配されない」ことも大事。
大さじ1とか小さじ2とか小麦粉何グラムとか水500gとか大根1/2とか鶏胸200gとか、細かいレシピに囚われているとそのうち面倒になって続かなくなる。
独身時代に丸元淑生さんの本を片手に自炊してた時期はあるけれど、いま考えるとシンプルを謳っていた丸元さんのレシピですら凝り過ぎだ。経験上すこし忙しくなるとすぐ疎かになって続かなくなる。
うまく説明できないけど、続かないともっと嫌いになっていく気がした。
もっと食から離れる気がした。
だから「自炊を続けられること」を重要視して探してた。
うーん、何かないかなぁ、続く自炊料理。。。
ネット上のレシピサイトを見ても、何故か趣味でたくさん持ってる料理本を見ても、ピンとくるものが全然ない。。。
で、辿り着いたのが「一汁一菜」だった。
レシピに支配されず自分の裁量で作れる範囲の料理だと思ったし、なにより超がつくくらいシンプルだ。
具だくさん味噌汁にすれば栄養も充分。足りないタンパク質はプロテインを飲めば良い。
しかももともと玄米と味噌汁は大好物。
つまり食べ飽きない。
ご馳走は食べ飽きるけど、これなら食べ飽きない自信がある。
いい味噌を使えばダシがいらないのも福音だった(アニサキスアレルギーだと魚介ダシはNG)。こう並べると焼き鮭とかシラスとかも欲しくなるけど、そこは言っても仕方がない。
心の師匠は土井善晴さん。
以前読んだ『一汁一菜でよいという提案 』を再読し、いまこそこれだと膝を打ったなぁ。あぁこれなら出来る。これなら続く。土井さんの他の本もいろいろ読んで思想的バックボーンを構築した(理屈っぽいボクには必要なアプローチ)。
自炊料理家の山口祐加さんの『自分のために料理を作る 』もドンピシャだったなぁ。まさに「自分のために料理を作る」なのだ。まさにこれ。勢いで山口さんにメールして、今度「自炊料理」を習うことにした。またそのうち報告しますね。
そして少し毛色は変わるけど『ザ・ラストダイエット 』。
「ご飯=炭水化物=糖質=太る=カラダにも悪い」というイメージがここ数年でつきすぎていたのだけど、このイメージを変えてくれた。元ボクシングの世界チャンピオン(つまりダイエットのプロ)の木村悠さんが書いているのも説得力あるし、周りで「ごはんで痩せた人」が何人もいる。
しかも、友人のトレーナーであるYUTAさんは「トレーニングの後、しっかり糖質を取ってください。そうしないと代謝がおちて逆に太りやすくなりますよ」と口を酸っぱくして言ってくれる。自分の中で「糖質=悪」というイメージが壊れ、一汁一菜への道がクリアになった。玄米は栄養たっぷりだし。
で、自炊料理を始めた。
毎朝と、たまに昼と、たまーに夜も。
11月4日から始めているから、まだ1ヶ月と10日くらいだし、全部で73食しか作っていない。
でも、少しずつわかってきたことがある。
自炊って「自立」だし、自炊って「自由」だし、自炊って「自信」なんだな。
自分を養う、という意味において、自炊は自立に直結している。カラダ的にもココロ的にも。
そして、自炊できるようになると、外食や中食に囚われなくなり、その日の気分で自由に自分を楽しませることができる。外食を知っているわりに料理ができない、というコンプレックスからも自由になってくる。
それらが自信につながってくる。ちょっとの食材があればなんとかできる、というサバイバル感も伴っての自信。
一汁一菜の食事が、地味だけど滋味溢れ、ものすごく満足感があるのも大きいなぁ。
腹の底が喜ぶというか、細胞が喜んでいるのが感じられ、満足感に満たされる。これも自信につながっているかもしれない。
このタイプの自立感と自由感と自信感って、いままでの人生であまり感じてきたことがないものだ。
まだ「食の楽しみ」までには至っていないけれど、ここから延長線をすぅっと未来に向かって引いていくと、毎日の彩りとしての「食の楽しみ」につながってくる気がしている。
というか。
60代以上の男性にとって、毎日の自炊は必須科目だなあ。
あ、ジェンダー的な男性というより、いままで自分のための料理をしてこなかった象徴としての男性ね。その料理もいわゆる凝った「男の料理」ではない、毎日の地味な自炊料理の話ね。
誰かに食べさせるための料理ではなく、自分のためだけのための自炊料理。
家族に頼らず、自分で自分を養う自炊料理。
それは「自立」と「自由」と「自信」につながってくると実感しているのだけど、それらこそ、エルダー期(シニア期とか高齢期とかいう言葉が嫌いなのでボクはエルダー期と呼んでいる)の人に必要かつ大切なもの。
そして「いつか家族と別れて独りになる可能性」を考えると、やっぱり必須科目だと思ったりする。
いや、すいません。
ちょっと自炊を始めたからってわかったようなことを言って。ずっと料理をしてきた人には普通のことですよね。でも、初心者だから気が付くこともきっとあって。
ということで、自炊、続けてます。
ランニングが1551日続いたように(膝を壊して休止中)、この年齢になって継続力がついてきた気がするので(←若い頃は何も続かなかった人)、たぶん続けられると思うし、続けてみてもっといろいろ発見したいと思ってる。
ちなみに、毎日の一汁一菜&自炊生活用にインスタ専用アカウントを作りました。もし良かったらご覧下さい。一日数回、更新してます。