Day:260『知識創造企業』ー日本初のイノベーション理論
【本について】
タイトル:知識創造企業
著者:野中郁次郎 竹内弘高 出版社:東洋経済新聞社
Q.日本企業の成功要因は?
A.人間知(普遍で基本的)
個人の「知」をベースにした組織的知的創造
知識創造→連続的イノベーション→競争優位
【WHY】なぜ、知識創造プロセスが必要か
■組織的知識創造プロセス(SECIモデル)
世界は過去25年の間に、インターネットとビックデータの到来によって根底から劇的な変化を遂げた。知識の風景も大きく変化し、知識がいっそう豊かに、グローバルに、複雑に、オープンに、深く、互いに繋がっている。その結果、データや情報との区別がつきにくくなっている。
ナレッジマネジメントの知見を応用していきたい戦略、起業、情報技術などの分野の若い研究者やマネージャーのためのガイド(仕組みやプロセス)がない。
【WHAT】
イノベーションの力学(日本企業のイノベーション)
■イノベーションのメカニズム
イノベーションは、バラバラのデータや情報をつなぎあわせるだけでなく、人間一人ひとりに深く関わる個人と組織の自己改革で、社員の会社とその目的への一体化とコミットメントが必要不可欠。
■知識創造理論(SWCIの要素)
共同化、表出化、連結化、内面化
新しい独自知識は組織の内部と外部の濃密な相互関係なしに創造することはできない
ーミドル・アップダウンマネジメント
マネージャーの主な仕事は、組織に属する個人の解釈によるばらつき(混乱)を目的のある知識創造へ転換すること。
トップは、一見バラバラのビジネス活動を1つにするような共通項を含む大きなコンセプトを創り出すことで方向感覚をもたらす。
→(例)ホンダ・シティ・プロジェクト「冒険しよう」
第一線社員に彼らの体験の意味が読み取れるように概念枠組みを与える
ー形式的・論理的ではない部分にもっと関心を向け、メタファーや絵や体験から得られるきわめて主観的な洞察、直感、勘などに注意する
■知識創造
日本企業成功の根本要因
・専門家だけの仕事ではなく、組織や社会メンバーの誰でも参加できる人間同士の「共感」から始まるもっとも人間的な社会現象で、体験や試行錯誤が欠かせない。
・新しい知識を創り出し、組織全体に広め、製品やサービスあるいは業務システムに具現化する組織全体の能力。
・知識創造は、個人、グループ、組織の3つのレベルで起こる。
・アイデア以上にアイデアル(理想)を創ること。
・他から学んだ知識や技能などは内部化する。
ー知識創造3つの特徴
1、メタファーとアナロジー
2、個人知から組織知へ
3、曖昧性と冗長性
■知識
日本と西洋の知識観
西洋
知識を所有し、処理する主体は「個人」
豊かな認識論の伝統がある
ー二元論
「知るもの」(主体)「知られるもの」(客体)ーデカルト
ー知識を獲得する方法
・合理論
知識は、概念、法則、理論などの精神が創り出した概念から演繹的に導き出される
・経験論
知識は個別の感覚経験から帰納的に獲得される
日本
個人と組織は知識を通して相互に作用し合う
「主体一体」「心身一如」「自他統一」
日本的知識観の基礎と日本的経営の方法
ー知識変換の4つのプロセス
暗黙知から形式知へ
形式知から形式知へ
形式知から暗黙知へ
暗黙知から暗黙知へ
■ポスト資本主義社会
ドラッカー
新しい経済においては、知識は単に伝統的生産要素としての労働、資本、土地と並ぶもう1つの資源というより、ただ1つの意味ある資源である。
知識がもう「1つの」というより「唯一の」資源であるということが、新しい社会の特徴。
知識社会では、知識労働者(ナレッジワーカー)が最大の資源。
知識を経営する知力こそが、これからの経営者にとって欠かせない能力。
将来の国際競争は、国が創り出す知識の優劣によって争われる。
トフラー
知識は高質な力の厳選であり、くるべき「パワーシフト」の鍵
知識は、経済力や軍事力の付随的要素から本質そのものへ
知識が他の資源のすベてにとってかわる
クウィン
企業の競争力や生産力は、土地や工場や設備などのハードは資産より、知的能力やサービス能力にある
■知識と情報
知識:情報が創り出した信念
情報:情報は行為によって引き起こされるメッセージの流れで、メッセージの流れから創られた知識は、情報保持者に信念として定着し、コミットメントと次なる行為を誘発する
→ある事物を解釈するための新しい視点をもたらし、前には見えなかったものを見えるようにし、思いがけないつながりに光を与える。
→情報は知識を引き出したり組み替えたりするのに必要な媒介、材料。
■人間の2種類の知識
形式知(西洋哲学的)
暗黙知(日本哲学的)※こちらがより重要
・・パーソナルナレッジ
・・信念、ものの見方、価値システム
・・無形の資産
もっとも効果的に学べるのは「直接体験」から。子供は試行錯誤を繰り返しながら、食べ、歩き、話すことを学ぶ。頭だけではなく、「体」も使うこと。日本人は、心も体も使って学ぶ。
日本哲学「心身一如」「自他統一」
⇄ラーニングオーガニゼーション(学習組織)
システム思考(部分より全体を見るための認識枠組み)ーピーター・センゲ
日本思考の特徴
2つの知の相互作用という「ダイナミクス」が重要
【HOW】
組織的知識創造(イノベーションスパイラル条件)
■知識創造の2つの次元
認知論的次元と存在論的次元
認知論的次元
知識は主体と知覚の対象である客体の分離を前提とする。
知識は、知覚の主体が外にある客体を分析することによって獲得される。
知識を創造するのは個人だけ。
組織の役割は、クリエイティブな個人を助け、知識創造のための良い条件を創り出すこと。組織的知識創造は、個人によって作り出される知識をそして汽笛に増幅し、組織の知識ネットワークに結晶化するプロセス。
存在論的次元
「暗黙知」「形式知」(マイケル・ポランニー)
暗黙知について
「我々は、語れる以上のことを知っている」
知識は、人間が客体に棲みこむこと、つまりコミットメントと自己投入を通じて直接的に関わることにより獲得される。
何かを知るということは、その部分部分を暗黙的に統合することによって、その全体のイメージあるいはパターンを創り出すこと。
■4つの知識変換モード
共同化、表出化、連結化、内面化
■5つの組織的要件
意図・自立性、ゆらぎ、創造的カオス、冗長性、最小有効多様性
→これらの条件が関わり合うことによって、イノベーションが起こる
【WHAT IF】
成功要因(メタファー)
ラグビー:「ボール」に着目
チームが回すボールの中には、「会社はなんのためにあるのか」「どこへ行こうとしているのか」「どのような世界に住みたいのか」「その世界をどのように実現するのか」についてのチームメンバーの共通理解が入っている(理論、価値、情念が詰まっている)
どのように
リレーのように順次線形に動くのではなく、連携プレーから生まれる。チームメンバーの間の濃密で骨の折れる相互作用を必要とする。
【響いたメッセージ】
「どうして1日の終わりにここに橋をかけたのですか」
「大切な若者を危険な目に遭わせるわけにはいかない。若者も、薄暗がりの中ここを渡らなくてはならないのだから・・・」
企業組織は、単に知識を処理だけではなく、知識を創造する
日本企業は「最後には勝つ」という固い決意で、さまざまな障害や逆境を乗り越え、国際競争を戦ってきた
企業は「どこで」競争するかより「いかに」競争するかを選択する
【学び】(イノベーションのために)
個人から始まる
メタファー・アナロジーは、暗黙知を伝えるために有効
対立も受け入れる
カオス、冗長性がイノベーションの元になる
チームや組織は同じ方向を向いていること
トップと現場をつなぐ
分離から統合へ
私たちの仕事は未来に橋をかけること
組織の一人一人を尊重すること
イノベーションは人間と人間の「知」の融合から創られる
【Action】
チームメンバーの理解のため、意見の出し合いの時間を週に一度は持つ