Day223 「ハーバードの美意識を磨く授業
【本について】
タイトル:ハーバードの美意識を磨く授業
ーAESTHETIC INTELLIGENCE
著者:ポーリーン・ブラウン
出版社:三笠書房
【WHAT】
ハーバート・ビジネス・スクールで衆目を集めた授業
「ビジネスにおける美意識」
【WHY】(なぜ、美意識が必要か)
■5つの理由
1、正解の無価値化
2、論理的・理性的な情報処理スキルの限界
3、全産業のファッションビジネス化
4、利便性から情緒への価値源泉のシフト
5、人工知能との仕事の奪い合い
その他、
・ビジネスでは常に新しい視点が求められる(AIにはできない)
・ビジネスは「生身の人間」(五感・感覚)を相手にしている
・美意識の力を認め、正しく理解したことが、著者の職業人としての成功の鍵だった
・財務的価値=美意識の価値(「財務分析+戦略分析」「直感+美意識」でビジネスの問題はほぼ全て解決できる)
・多くの企業がレゾン・デトール(存在理由・存在価値)を失っている
【WHAT】(美意識をビジネスに生かすために大事なこと)
■美意識とは、第二のAI(美的知性)、人間にしか担えない直感と感性、AIを超えるもの
●美意識とは、人が自らの感覚を通じて、対象や経験を理解し、知覚することで得られる喜びや満足感
・・美意識を理解することが利益になる
・・人はもうモノを求めていない
●美意識に支えられたビジネス
・・美意識があるか否か
・・美意識があるものは感動をよび、長く残る(サスティナブル)
●消費対象のシフト
・物→変化に富んだより意義のある経験へ
・人が高いお金を払うもの(感覚上の満足に対して、機能などではない)
■美意識の4つの重要なポイント
■愛着と利益を生み出すための重要な問い
・自社の商品が思い出深い経験になるか
・自社の商品がどう生活や人生が向上するのか
・自社の商品でどんな体験ができるのか
【HOW】(どうやって生かすのか)
・人々がどんなものを望んでいるのか的確に掴む(市場支配力)
・第二のAI=美的知性を磨くには
・能力の境界線の理解
・消費者の心の理解(洞察力:心の奥底にあるものを見抜く力)
・・現場に出向き、顧客の購入の動機や願い、夢を深く理解すること
⇄データ分析・ファクト分析ばかりに焦点
・ブランドコードの確立
●優れたコードに備わる4つの基準
■ブランドコードとは
ブランドの哲学や美学を表す、そのブランド特有の識別子
(その他)
・環境から得た情報にレバレッジをかける
・良質なものへの感性を確かめる
・戦略的に見た目を整える
・味覚を研ぎ澄ませる
・波長を合わせる力を伸ばす
・ムードボードを作る
●重要な問い
【WHAT】(要点)
「強力なコード」「五感を刺激」「巧なキュレーション」など審美的な基準を全てクリアしたら、あとは、表現していくこと(アーティキュレーション)言葉にしていくこと!
●伝わるメッセージを作る4つの問い
【WHAT IF】(成功企業と要因)
●直感と感性
・ルイ・ヴィトン:継承と革新の両立、一貫性して「世界を巡る旅」の素晴らしさを追求
(広告キャンペーンのイメージ、店舗内のモチーフ、特設展示会のキュレーション)
●伝統とブランドコード
・アップル、ディズニー(没入型体験、来園者=ゲスト)、アディダス(ブランドコードを重んじながら、常に独自の美意識を磨き、製品の魅力、製品への憧れを高める努力を欠かさない)
●五感
・グッチ:アグリー・ファッション、斬新で異端、ありとあらゆる方法で感覚を刺激→醜さが人の感性に訴えるような質を持つ
・ココ・シャネル:インビジブル・デザイン
・・最高クラスの企業は、人知れず五感にインパクトをもたらす体験を提供している
・・美意識とプライドを満たす
・ロールス・ロイス:贅沢な新車の香り
客がプラスティックの放つ匂いを好まず、贅沢な新車の香りが損なわれ、売り上げが激減
→かぐわしい木の香りへ
・ナイキ:五感を刺激するすごいビジョン
「Just do it」
・アップルストア:空間や建築デザイン
購入に踏み切る前に製品にふれ、滑らかで鏡のような手触りを感じることができる
・ベン&ジェリー
常識をひっくり返したアイスクリーム
ベン・コーエンは、幼少の頃から重度の味覚障害があったので、不利を逆手にとり「質感」にこだわった
→舌で楽しめる大きな塊をアイスクリームに入れる
→少し風変わりな素材を入れて、それまでになかった味の組み合わせを編み出した
・ジョー・マローン:刺激的なメッセージ
食べ物を思わせる香りから、爽やかで優雅なパッケージング、シンプルなロゴ、美しいボックス(共感覚に訴えている)
●ブランドコード
・エルメス:コードが換気する「欲望」と「空想」
・アマゾン:ロゴに隠されたコミットメント
・ダナ・キャラン:強さとセクシーさ
●演出・表現
・ラルフローレン VS トミーヒルフィガー(アプローチの違い)
●空間
・モンクレール:見事にデザインされた空間
【WHAT】(響いたメッセージ)
・ビジネスをものにすること
(顧客に提供すべき価値を真に理解し、的確に認識し、大切にすること)
・模倣から永続的価値のあるものが生まれることはまずない。模倣品の価値は、時と共に下がっていく。
・一流は停滞したままではいない。
【アクション】
”AESTHETIC INTELLIGENCE”
美的知性を磨きビジネスに生かすために、考え抜く。「アートの感覚でいいんだ」というのが本を閉じて初めに抱いた感想。ビジネスは、アートな部分を出したら失敗すると思っていたので。
とはいえ、芸術家のようにビジネスを創っていても、それだけではビジネスは永続できない。やはりデータやファクトをみる必要性もある。(ここのバランスが大事)
「美意識」は、私たちが失いかけている人間らしさを取り戻し、かつその力で、これから先、消費者が求める体験を創り出していくために、今後さらに必要スキルになっていくと思う。
アーティスティックインテリジェンス(美的知性)を磨き、消費者が求めている体験・感覚を的確に把握し、提供価値に変えていく。私だけでなく、一人でも多くの商品・サービス提供者が、「美意識」の必要性を認識し、ビジネスに取り入れていくことができたら、サスティナブルな社会はもっと急速に広がっていくと思う。
★表紙が素敵!