Day264:「欲望の錬金術」ー伝説の広告人が明かす不合理のマーケティング
【本について】
「欲望の錬金術」ー伝説の広告人が明かす不合理のマーケティング
著者:ローリー・サザーランド/出版社:東洋経済
【著者の主張】
人の欲望や行動をかきたてるのは、「ロジック」ではなく、「非効率」や「無駄」である。
一見不合理な「錬金術」には、ビジネスや世界を変える力がある。ロジックを取っ払ってみると、世界の見方が変わる。
【WHY】問題提起(なぜ、欲望の錬金術が必要か)
私たちは、意思決定の数字的モデルへの過度な依存がある。
私たちは、ロジックに頼りすぎることで可能性を狭めてしまっている。データやロジックではイノベーションは生まれない。
データに頼りたいという欲求のせいで、モデルの外に存在する重要な事実を見落としてしまいかねない。
科学的に見える方法を優先するあまり、もっと非合理的でもっと魔法的な解決策が考慮されていないかもしれない。
ロジカルには普遍的に適用できる法則が求められるが、人間は原子と違って、法則を広く適用できるほど行動に一貫性がない。
【WHO】
広告主、セールスマン、経営者向け
【WHAT】エリートの危険
科学の探究には異なる2つの形がある。
効果的なものは「何か」という発見と、「なぜ」効果的なのかについての説明や理解。
科学の進歩は一方通行ではない。
例えば、アスピリン。
どんな働きをするか解明されるまで数十年もの間、鎮痛剤として利用されてきた。それは、経験による発見で、説明がつけられたのはかなり後になってからだった。
もし、そんな幸運な偶然を科学が認めなかったら、科学者による業績ははるかに貧しくなっていた。
あらかじめ予測された発見ではないからと、ペニシリンの使用を禁じていたら・・。
政策やビジネスの決定はまず「理由」で「発見」はその後。というかなり無駄な方法論に過剰なほど拘っている。
進化は予測できるものもできないものもある世界で、生き残れるものを発見する偶然のプロセスである。
【WHAT】「錬金術」(コミュニケーションサイエンス)
■錬金術の法則
1、良いアイデアの逆も、また良いアイデア。
2、平均的な人間向けのデザインはするな。
3、誰もがロジカルなら、ロジカルであることは役に立たない。
4、注意の質は経験の質に影響を与える。
5、花は広告予算がある雑草にすぎない。
6、ロジックの難点は魔法を全滅させること。
7、観測に耐えられる。
8、誰もやらないからこそ、直感に反する物事を試そう。
9、合理性に基づいた問題解決は、1本のクラブだけでゴルフするようなもの。
10、あえて些細なことにこだわれ。
11、もしもロジカルな答えが存在したなら、すでに見つかっていただろう。
【HOW】
経済学の父アダム・スミスは18世紀にある教訓を残している。
実際の生活は、型にハマった科学とは異なる。
ボーイング787型機の設計をするとき、とても効果的なツールでも、顧客体験や税政策を考察するときは、うまくいかないことがある。
多くの経済学者は、アダム・スミスの教訓を無視してきた。
現実世界で人々は、経済学者が「こうするはずだ」と考える行動を人々がとる、別世界の方に関心をもつ。
■(方法1)
愚かな間違いを防ぐため、少しだけ馬鹿になることを学ぶ。
答えはわかっているのになぜわざわざ答える必要があるのかと思うことほど質問してみる。
ー質問(例)ー
・なぜ、歯を磨くのか?
・なぜ、人はレストランにいくのか?
・どうして人は列車で立たされることを嫌がるのか?
まずはじめに出てくる当たり前の答えの裏に、実は本当の理由が隠れている。
人は、自分がどう感じているかをわかっても、なぜそう感じるのかは正確に説明できない。
■(方法2)
GPS機能を無視する
私たちが求めるものと、GPS機器が考えるものは常に一致しない。
GPSは、数字的でロジカルな条件で、私たちの目的を定義している。つまり、できるだけ速く目的地につけるように。距離は副次的な変数かもしれないが、もしGPS装置が30キロ長いが、より速い道路を通って目的地まで30秒はやく着くことを指示したら、運転している人は苛立つ。(ガソリン代も高速道路料も余計にかかる)平均速度と距離を見積もる以外の変数をGPSは考慮していない。
【WHAT IF】錬金術(例)
■ひどくまずいのに匹敵するほどになった飲み物(レッドブル)
新しい飲料を試したとき、消費者は好ましくない反応を控えめに表現する。
「これは私の好みじゃない」
「ちょっと飽きる味」
「これは子供に飲ませた方がいい」
「こんな小便みたいなもの、金をもらっても飲まない」
レッドブルは、怒りに近い評価をされたけれど、成功を収めている。
■ドナルド・トランプ
ヒラリー・クリントンは、経済学者のように考え、ドナルドはゲーム理論家。1つのツイートで、ヒラリーが議会で4年間戦ってきたことを成し遂げる。
【学び】
イノベーションのために・・
・データを信じすぎない
・市場の反応を鵜呑みにしすぎない
・平均に合わせない
・背景を見逃さない
・私たちが信じていることは疑った方がいい
・現実は思うほどロジカルではない
・表面にとらわれない
【響いたメッセージ】
・エンジニアリングは魔法を考慮しないが、心理学は魔法を考慮する。
・実生活では、たいていのものがロジカルではない。サイコロジカルなのである。
・人の行動の裏には理由が2つある。表向きのロジカルな理由と本当の理由。
・最適であるようにデザインされているのではなく、有益であるように進化した。
・合理的になれば、人間は弱くなる。
・ばかばかしい呼ばわりする前に慎重になれ。(理論上で何かが意味をなすかどうかは、実際の場で役に立つかどうかほど重要ではない)
・人間の行動は背景がすべて。
【Action】
マーケティングの実践に生かす。
常識的に考えれば、、
科学的に考えれば、、
というような出来事に対して、「なぜ」を問いかける。
はやく結論を出さない。
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