なぜマスクをしないのじゃ? (高幡不動尊のマスク仁王さんに祈る)
わからない!
わからない。なぜマスクをしないのだろう。同じ職場で働いているのに。
わからない。なぜマスクをしないのだろう。今は2020年7月。都内のコロナ新規感染者数は連日3桁を超えてるのに。
わからない。なぜマスクをしないのだろう。ニュースは見ないのだろうか。「夜の街」(←この言い方は嫌いだが)で若い世代に感染が多発していて、それが高齢者まで広まると、医療がひっ迫して、死者が増える。そういう説明をいちいちしないと理解してもらえないのだろうか。
わからない。なぜマスクをしないのだろう。高温・高湿度の時期、マスクをすると熱中症の危険もある。だから一日のうち時々マスクを外して涼むというのなら理解できる。でも、それが丸一日マスクなしで過ごす理由になるとは思えない。
考えても考えてもわからない。ついこの前まではマスク着用率がほぼ100%だったのに、いつの間にか気づいたら、2割程度になっていた。
わからない。なぜマスクをしないのだろう。先週から研修でやってきた大学生2人もまったくマスクをしない。集団の中にマスクをしない人が出始めると、人はどんどんマスクをしなくなるのか。
おそるおそる呼びかけてみると...
おそるおそる一斉メールを送ってみた。「マスクをしてください。雨が降ったら傘をさすように。車に乗ったらシートベルトを締めるように」
びっくりするほど反応がなかった。
誰からも文句も苦情もなく、賛成の声もない。そして、マスクしない派の面々は、あいかわらず着用しないままだった。
次の日。おもむろに立ち上がって、大声を出した。「みなさんに聞きたいことがあります。マスクをしない理由がありますか?」 これは心の奥からの疑問だった。
私が想定した反応は、「息苦しくて、熱中症になりそうなので...」と不満を吐露されるとか、「うるせんだよ、そんな面倒なものやってられるかっ!」と逆切れされる、などだった。
ところが、反応は思いもがけないものだった。数人は困り顔で言葉につまり、数人は「しまった」という表情でおもむろにマスクを取り出し、顔にかけたのだった。気づくと、例の大学生までマスクをかけていた。
そんななか、一人だけが「マスクするのはわずらわしい」と答えてくれた。反論だけど、ありがたかった。
私は弁がたつほうではない。しかし、必死で訴えた。「時々マスクを外すというのは、ありうると思う。だけど、まる一日マスクしない人がこんなに多いのはおかしくないか?」と。
そして、最後に一言しぼりだした。「マスクをしてください」と。
この直後の数時間だけ、マスク着用率が99%となった。100%にならなかったのは、「わずらわしい」と答えた人だけ頑なにマスクをしなかったからだ。しかし、翌日は時々マスクをしてくれたので、まあよかったのか。
そして、もともとマスクしない派の面々は、翌日にはだらしない顎マスクとなり、その翌日にはノーマスクとなっていた。。。
ニューノーマルは疲れる。さて、次の手はどう打つか。
【拝観案内】
高幡不動尊(東京都日野市)
山門の仁王さんは疫病退散を願って、マスクをしている。近くで見ると、真っ白な雑巾をリメイクしたようなマスクだった。多摩の仁王は違う! かっこいい!! 正当な理由なくマスクしない衆生をどうか叱りつけてやってくださいませ。(仏像エッセー)
2020.6.28筆者撮影