人生最大の親子ゲンカ（第19話）
SNSで大反響だった実話
「小5と余命宣告」続編（第19話）です。
父ひとり、子ひとりの家庭で育った娘が
小５の時に、その父の余命宣告を受け
その後の覚悟と成長を描いた実話。
脚色は一切なし。
むしろ、各方面に配慮し
わざわざ抑えて書いているくらいです（笑）
ということで、
これは長～く続く連載ものです。
初めての方は、１話からどうぞ。
通帳から、突然消えた
私が身を粉にして働いて
必死で貯めてきたお金。
通帳の一番最後の列に印字されていた残高は、
わずか3桁、100円ちょっと。
しかも引き下ろされてから、
数日経っていた。
なにが起こったんだ？
現実を整理するのに、時間がかかった。
犯人は、もちろんわかっている。
思い当たるのは、一人しかいない。
でも、ちょっと待って。
どういうこと？
なんで？
どうして、他人がそんなことができるの？
頭の中が、一気に騒がしくなる。
アレコレ考えるも、
怒りのエネルギーに負ける。
すべての思考が停止した。
一瞬にして、頭に血が集まって
ほんとうに頭が爆発しそうだった。
目や耳まで真っ赤になった顔で
父親の部屋に怒鳴り込んでいった。
「てめーー！どういうつもりだ！」
「なに勝手に使ってるんだよ！！」
怒りに震えながら、大声で問い詰めた。
この時、致し方なかった理由と
ごめん。の一言があれば
また違う展開になったかもしれない。
が、いつも通り、
はらわた煮えくり返る
言葉しか返ってこなかった。
「中学生であんな金持っていたって
使い道ないだろうから、オレが借りてやった」
「今度返してやるよ」
ふざけるな！！
さっさと返せっ！
今すぐ返せっ！
「もうとっくにない。」
「ないものは、ない。」
この言葉、どれだけ悔しかったか。
あまりの悔しさに、涙が止まらなかった。
私がその金を集めるのに、
どれだけ頑張ってきたか...
見たいテレビも、
あえて目に入らないようにして。
部活後、どんなに疲れて眠たくても
こわくても、イヤでも
１日も休まず、仕事に向かい…
全ては、少しでも稼ぐために。
お菓子はもちろん、
弁当やサンドウィッチなんて買わない。
菓子パンやおにぎり、缶詰、カップラーメン。
ジュースを買うのがもったいないと
飴と水をいっしょに飲んで...
オシャレはしなくても、生きていける。
もちろん洋服だって、買わない。
全ては、少しでも貯めるために。
ものすごいお金への執着を持って
出来る全てのことをしてきた。
恥も、欲も、プライドも
不必要なものは全部捨てて...
そうやって、
貯めた金額は
約40万円。
それを、悪びれる様子もなく、
勝手に奪い取られた。
悲しくて、悔しくて、情けなくて...
頭に血が昇りすぎていて、
もう理由もわからない。
とにかく、目の前の相手にムカついて
泣きながら、包丁を投げつけていた。
「なんで、オマエ死なないんだよ！
さっさと死んでくれよーーー！！」
大泣きしながら、叫んでいた。
こうやって、
いつも私が望まないことしかしないのなら
さっさと死んでくれ。
長生きなんてしてくれなくていい。
これが、当時の気持ちだ。
「オレが死んだら、生命保険が下りるから
それでチャラになるから、いいじゃないか。」
ほんと、イヤなことしか言わない。
そんなことが聞きたいんじゃない。
ものすごい頭にきてるけど
親の口から、そんな言葉を聞いて
嬉しい子どもなんて、いねぇんだよ！
怒りに任せて、振り投げた包丁だって
絶対に、身体に当たらない位置を狙う。
殺したいほど憎いけど、
でもやっぱり、親なんだ。
認めたくないけど
殺したところで、
後悔することなんて
目に見えている。
どんなにあがいたところで
結局、私はなにも持っていない。
殺す勇気も
許す余裕も
この親をどうにかする知恵も。
そして、
必死にしがみついてきた
自らの夢（＝ 金）まで失った。
部屋に戻って、布団に顔をうずめて、
思いっきり泣いた。
血が昇りすぎて、頭もガンガンしていた。
声と涙が枯れるまで、泣き続けた。
ただずーーと泣き続けている暇もない。
時間になれば、仕事に行く。
この事件を境に、
父親への不信感と警戒心は更に増し
関係も、かなり冷めたものになっていった。
どんなに私が彼を「他人扱い」しても
通帳の名義が私の名前になっていても
結局、子どもの貯金は親のものになってしまう。
探せばすぐ見つかるような場所に
通帳と印鑑を一緒に保管していた
自身の甘さも十分に悔やみながら
その対策を講じた。
さらに
こんな内情なんて知りもしないくせに
「お父さんのこと、もっと大事にするんだよ」
なぁんて余計な言葉を掛けてくる
周りの大人たちへの攻撃性も増していった。
大人びた雰囲気と特殊な存在感。
同級生と笑い合う無邪気な笑顔の裏に
冷酷さを秘めたアンバランスな中学生。
よりロボットみたいになっていく。
後に、職場で
「鉄仮面」「赤い血が流れていない」
「本当に人間？」
と言われるほどに...