学校からの特別許可(第7話)
SNSで大反響だった実話
「小5と余命宣告」続編(第7話)です。
父ひとり、子ひとりの家庭で育った娘が
小5の時に、その父の余命宣告を受け
その後の覚悟と成長を描いた実話。
脚色は一切なし。
むしろ、各方面に配慮し
わざわざ抑えて書いているくらいです(笑)
ということで、
これは長~く続く連載ものです。
初めての方は、1話からどうぞ。
不安定な情緒とライフライン。
そんな中、
一人で過ごすことも増えてきた。
当然だが、
父が入院している間は
一人で生活をしている。
もう中学生にもなれば
どこかに預けなくても
大丈夫だろう。
と。
何よりも私自身が、
ヨソの家でお世話になることも
転校することも、とても嫌だった。
学校で仲の良い友達と過ごしたいし
何よりも、部活動(バレーボール)に
ハマっていた。
物で溢れかえっていた汚い部屋
食事が出てくる訳でもない。
誰もいない。
けど、
ここがいい。
ここが、落ち着くんだよ。
近所のスーパーに行けば
弁当も総菜も
缶詰もレトルトも売ってる。
そして、何よりも
給食があるっ!!
当時は、校内の給食室で
給食のおばちゃんたちが
作ってくれてたからね。
出来立てほやほやで、
ホントあったか~い。
おいしかったなぁ。。。
「なにもしてもらえなくて可哀そうな子」
と自分を見る周囲の大人、
先生たちの視線は、十分感じていた。
けど、
それを鼻で笑うように
私の心の中は
全く正反対だった。
「なんでも自分で選べる自由がある」
学校で、たまーにある
給食が出ない日。
他の生徒たちは、
家で用意してもらった
お弁当を持参して食べる。
でも、私と
もう一人の男子(同じく父子家庭)は、
給食の時間になったら
近所のスーパーに
自分が食べたいものを
買いに行っていいんだ!
「下校時の買い食いは絶対禁止!」
なんて、厳しく言われている中、
私たちだけは
まだ学校が終わっていないお昼に、
買い物をするために
学校を抜け出すことができる!
全校生徒が700人近くいる中の
わずか2人にだけに出された
学校側からの特別な許可。
「いいなぁー」
「ズルいなー」
って他の子たちの声を背に
2人で走り出していく!
あの優越感っ!
あの特別感っ!
あの時だけは
いつものスーパーへの道が
輝いて見えた。
あれは、本当に
鳥かごから羽ばたいていく
2羽の鳥みたいに。
「じゆーーーだぁああーー!!」
ホントにその心からの喜びの声を
叫んだか叫ばなかったかは
覚えてないけど(笑)
楽しかった
思い出の1つであることは確か。
他の子が羨ましい。
って思ったことなんて
数えきれないほど、ある。
あり過ぎて、
いちいち覚えてもいない。
けど、それ以上に
自分の持っている「自由」の方が
何百倍も、魅力的だった。
〇〇をしないと
お母さんに怒られるから。
テストの点が悪くて
落ち込んでる。
本当は塾なんか行きたくないのに
親に行けって言われてて…
自分に自信が持てない。
両親が仲悪くてよくケンカしてる。
もうすぐ離婚するみたいで
どうしよう。。。
などなど。
他の友達が話してくれた悩みなんて、
1度たりとも、気にしたことない。
悩みは人それぞれ
目の前の現実から
なにを受け取り、どう捉えるかは、
ほんとうに 人によって違うもので
更にその状態や時期によっても異なるんだ。
そんな友達の話を聞きながら
感じていたのは
あぁ、悩んでるのは
私だけじゃないんだ…
両親揃ってて
家族で旅行とか行けて
毎日ご飯も出てきて
十分幸せそうに見えるのに
悩むことがあるんだな…
という少しの安心と
そんな平和な悩み、持ってみたいよ。
という 妬ましさ。
思い知らされるのは
どんなに仲良く過ごせても
結局、自分と周りは違うという現実。
だから、
みんなと「同じであること」を
求めてくる学校はウザかった。
とにかく当時は
自分以外の誰かに
とやかく言われたり
何かを勝手に決められて
押し付けられるのが
本当にイヤだった。
だから、
「誰にも文句なんか言わせねーよ!」
子どもながらに
この「自由」に付いてきた「責任」も
きちんと背負う覚悟を決めていた。
そんな、
決して悲観的ではない
むしろ
たくましく生き延びてる日々の中
また更なる出来事が、起きる。
「これはすぐに手術ですね。
今日、入院してください。」
その言葉を、医師から告げられたのは
父ではなく、わたしだ。
幸か不幸か、
その父が入院中に。。。