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ほんとうの気持ち(第24話)

SNSで大反響だった実話
小5と余命宣告」続編(第24話)です。

父ひとり、子ひとりの家庭で育った娘が
小5の時に、その父の余命宣告を受け
その後の覚悟と成長を描いた実話。

脚色は一切なし。
むしろ、各方面に配慮し
わざわざ抑えて書いているくらいです(笑)

ということで、
これは長~く続く連載ものです。

初めての方は、1話からどうぞ。




中3の1月に、

いきなり涌いて出てきた

高校受験問題。


なにをどう勉強していいのか

わからないまま

ただ教科書をパラパラっとめくって

ため息と悪態をつき…


目の前の現実から逃げるように

仕事に行く日々。



それでも

そんなんでも

できる範囲で、やるしかないよなぁ


諦め と

開き直り と

短時間の集中モード

を繰り返し

あっという間にやってきてしまった

受験当日。


この日ばかりは、
フツーの中学生だった。


「おはよう!

 いよいよだねー

 いやぁ、緊張するねー!!」


駅のバスターミナルで

緊張のあまり、少し興奮気味に

言葉を交わした相手は

いっしょに会場に行くために

待ち合わせて合流した友だち。



彼女は、小さい頃からの友だち。


父親と、彼女のお母さんが

古くからの知り合いで

近所ではなかったが、

よく家に遊びに行っていた。


学区が違うため

小学校も、中学校も、

同じ学校に通うことはなかったが

高校はいっしょに行こう!

と一緒に受験することになった。



心強い…

安心する…


あーゆー場に、

1人でも友達がいてくれるだけで

ほんと救われる。



試験の合間の休憩時間は、

その友だちと窓際でおしゃべりしながら

周りを観察する。


みんなすっごい真面目そう。

みんな何かしらの事情を抱えて

がんばってる子ばっかりなのかなぁ


この中で、

約半分近くも落とされるって聞いてた。



どっちか1人だけ受かるって

絶対ヤだよね~


なんて、不安が漏れる…



もし どちらか一人…ってなるなら

それなら、私の方だなぁ

成績も素行も悪すぎたから

落ちるなら、絶対私の方だよ。


と 言いながらも


じゃ、もし落ちたら・・・?


いや、それはそれで、

アリなんじゃない?


「入れなかったんだから、仕方ないでしょ?」


と周りを納得させられるだけの

既成事実ができて、

当初の望みどおりに、

好きなだけ働けるようになるんだから。



だから、

受かっても、受からなくても

どっちでも良い。



はずなのに



だから

そんなに緊張する必要もない!



はずなのに…



だから

不安に思うこともない!



はずのに


落ち着かない・・・







やっぱ、行きたいな…



これが、

心のずーーっとずーーっと

奥に隠していた本心だったから。



この友だちが

一緒に受験すると決まってから

楽しみになってきてしまった。


それまで想像すらしたことなかった

高校生活というものが…。



その友だちがいるなら

やっぱり行きたい…




全日制とは違うからか

テストはそんなに難しい感じもなく

面接も、真面目さを精一杯演出できた。

出来る限りの力は尽くした。


もう後は、祈ることしかできない。

合格発表まで、落ち着かない日が続いた。




発表の日。


県内の公立高校が

一斉に合格者を発表する。

自分だけでなく、

公立受験した3年生全員が

ドキドキしている日だ。


当時は、インターネットなんてないから

わざわざ高校まで行って、

掲示されたボードで番号を確認しないと

合否がわからない。


朝一で登校するも、

各家庭でそれぞれの学校に

確認しに行くため、すぐに下校。

「合格者のみ、13時に体育館集合。」

と言われ、一旦みんな帰宅した。



ウチからその高校までは少し距離があった。

バスを2本乗り継いで行くくらい。


優しい担任は、わたしに


「オレが代わりに見に行ってくるから、

 おまえは家で待ってろ。

 わかったらすぐ家に電話するから

 絶対に、おとなしく待ってろよ!」


と、自宅待機を命じた。


「わかった。」


言われた通りに待っていたが

電話が全然鳴らない。。。

待っている時間がものすごく長く感じる。


あとほんの1時間くらい待っていれば

必ず掛かってくるってわかっていたけど

その1時間をただじっと待っているのは

耐えられなかった。


そして、もう1つ。


その連絡を、素直に信じられないと思った。

もし、不合格だったとしたら、

それが本当か、きっとそれを疑うだろうと。

他人を、しかもその言葉だけを信じるなんて、できない。


ましてや、こんな重要なこと。

やっぱり、自分の目で確かめないと!


人を信用していなかった。

特に、大人は…





担任から、電話が掛かってくるであろう

1時間後はもちろんのこと、

集合するように言われていた

13時までに戻ってくることすら、

絶対ムリだとわかっていたけど、

私は、家を出た。



ただ、待つ。

なんてこと、私にはできない!



担任の命令を無視して

バスに乗って、高校に向かった。




→ 人と違うということ(第25話)


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