「鼻水」から考える東洋医学的問題解決のアプローチ
1月17日。
仕事でもなんでも、生きているといろんな「問題」がつきものだ。
たとえば、近ごろの私は「鼻水」に悩んでいる。しかも、朝だけ。年が明けて少し経った頃から、サラサラの鼻水がよく出るようになった(汚くてごめんなさい)。
午前中早めの時間帯は、私にとってのゴールデンタイム(集中力が高まる時間)。この時間を生産性高く過ごせるかで、一日の満足度が変わってくるのだけど鼻水が集中を遮ってきて……さて、どうしたものか。。。
そんなタイミングで、つい先日、漢方のオンライン診療を受けた。
私は、月に一度、中田英之先生の漢方診療を受けているのだけど、先生から聞く症状へのアプローチは「アハ!体験」の連続で、学ぶことばかりなのです。
(中田先生のご著書)
(中田先生が院長を勤める病院)
中田先生は、元々は西洋医だったけれど、後に漢方医となった。そして近ごろは、山伏としての知見やさまざまな東洋思想をベースとした先生独自のアプローチをとっていることもあり、「山伏ドクター」として患者さんと向き合っていらっしゃる。
さて、そんな中田先生は私の「朝のサラサラ鼻水」をどんなふうに見立てたのか。
鼻が詰まっている様子を見て、まず聞かれたのはこのポイントだった
実は、年が明けてから夜寝る時間が遅くなっていた。
元々は22:30頃に寝ていたのだけど(21時をすぎると使い物にならない……苦笑)、近ごろは「慌ただしくしているうちにあっという間に24時近く!」の連続。
となると、朝の目覚めも悪くなる。いつもであれば自然に目が覚めていたのに、近ごろは眠い目を擦って何とか起き出す……という日々を送っていたのでした。
夜は「陰」の時間。本来は、身体に潤いをもたらし昼間(陽)の時間に傷ついた部分を修復するタイミング。
特に、22-2時の陰が極まるタイミングで十分に休むことができないと、相対的に「陽」(身体のなかの活動的な面)が優勢になる。そうすると、夜中に熱がこもって睡眠の質が悪くなり、寝ても疲れがとれづらくなってしまうそう。
さらに、夜に身体が修復できないと、消化力も落ちていく。
食べ物は「水分」がほとんどだから、消化力が落ちると身体が水分過多の状態になる。
(調べてびっくり! レタスの95%、お肉の6~7割が水分らしい)
と、こんな感じで身体は「水余り」の状態になる。
しかも、年末年始は、いつもより食事が豪華になる時期。「食べ過ぎ」「飲み過ぎ」を招きやすくなるから、余計に水分過多になりやすい。
じゃあ、余った水はどこから排出されるのか。
「高いところから低いところに流れる」のが自然の摂理であるように、ふつうにいけば下(排尿、排便)から出るのだろうけど、「陽」が優勢になると「気」が上がりやすくなる。
すると、余った水が、気とともに上昇して「鼻水」として出てきやすくなる。
*参考:漢方の「アレルギー性鼻炎」の考え方
さらに冬の朝、身体が冷えていると「サラサラの鼻水」(アレルギー性鼻炎のような鼻水)になりやすい。
*参考:漢方の物差し ① 熱と寒:冷えている?熱がこもっている?
……私の「朝のサラサラ鼻水」は、こうやってつくられていたようです。
こんな感じで「鼻水」をつくり出しているものがわかると、対処法もすんなり理解できるようになる。
私の「朝のサラサラ鼻水」の場合は、こんな感じ。
というわけで、処方された薬は「水の排出」「消化力アップ」がメインだった。
たかが「鼻水」と思うかもしれないけれど、実はこんなカラクリがあったとは……症状に対処するのであれば「鼻水」→「鼻水を抑える薬」となるだろうけれど、そうならないところが本当におもしろい!
基本的に、自然の流れに逆らわない(促進するようにサポートする)のが東洋医学的の特徴だろうか。
だから「鼻水」を止めるのではなくて「排出を促す」、脆弱性をつくりだす「消化力」へとアプローチしていく……この見立て、本当にすごいなと思う。
と言いながらも、こうやって順を追って見ていくと納得してしまうのは、私だけではないのでは?
「自因自果」ではないけれど、結果の裏には原因がある。
そして「原因は何か特定の一つの事柄」というよりも、いろんな出来事が連なってつくられている。
私の場合は「夜寝る時間が遅くなっている」や「食べすぎ/飲みすぎで消化力が落ちている」が原因だったけれど、この問題をつくりだしているものは、まだまだ別にありそうだ。
たとえば、、、
・夜寝るのが遅くなるのはなぜだろう?
・「眠れる状態になるまでに、時間がかかっている」のだとしたら、その状態をつくり出しているのは何だろう?
・「仕事ががんばり時」だとして、それをつくり出しているのは何だろう?
・何が「食べすぎ/飲みすぎ」を引き起こしているのだろうか?
・「食べすぎ/飲みすぎ」を引き起こしやすい環境は、どんな文化やシステムによってつくられているのだろうか?
……などなどと、症状(インテグラル理論の4象限でいう右上領域)を入り口にどんどん掘り下げていくと、
・その人の心理状態、価値観、人生観…(左上領域)
・心理状態、価値観、人生観に影響を与える文化、空気感…(左下領域)
・社会の状況、社会システム、経済システム、インフラ…(右下領域)
と、さまざまな事柄とのつながりが明らかになっていく。
中田先生は、以前、こんなことを言っていたのだけど、これって「身体」に起きてくる問題以外にも当てはまるんじゃない?と思った。
たとえば「髪」だってそうだし(髪のダメージ、薄毛の問題の一因もここにぶつかる)、「心」「関係性」「自然環境」だってそうだろう。
話を大きくしすぎ?
でも、根本から問題に向き合うって、こういった視座で眺めながら「今、自分のポジションでできる最善策」をとっていくことではないかの思うのです。
もしくは、(今の限界を知りながらも)より精度の高い布石を打っていくこと、そして、より根本的な策を打っていけるように、自分自身の知識、スキル、人脈を深めたり、広めていくことではないだろうか。
そういうアプローチができる人になりたい。
サラサラ鼻水をきっかけに、そんなことを思ったのでした。
* * * * *
ところで、この時期、私と同じような「サラサラ鼻水」に悩む方が多いように見受けられます。
花粉症が本格化する前に手を打たないと、花粉症がキツくなるそうですよ!
お互い養生しましょう。
*養生の基本については、こちらをご参照ください。