大敵を欺き小敵を畏れよ
敵軍が大勢でもたいしたことはない。軍勢が少ない場合こそ用心してかかるべきだということ。転じて、弱そうに見えても、なめてかかると、取り返しのつかないことになるという戒め。(日本)
この言葉は、
『太平記』の中で、
楠木正成(1194~1336)が
引用したことば。
「敵は小勢だ、蹴散らしてしまえ」
と気負い立つ味方の武将に、
「合戦の勝負必ずしも大勢小勢に依らず、
ただ士卒の志を一にするとせざるとなり
(合戦の勝ち負けは軍勢の大小によるとは限らない。
ただ兵士の心をひとつにするかどうかだ。)
されば
『大敵を見ては欺き、小勢を見ては畏れよ』
と申すこと、これなり」
と言って、一瞬軍を引いたとあります。
この場合の
「欺く(あざむく)」は、
侮る(あなどる)、
「バカにする」の
意味であって、
計略によって
「だます」という
ことばではないことに
注視しておきたい。
これに類することわざで
「小敵をば欺くげからず」
というのが
『曾我物語(そがものがたり)』
に見える。
類語
・大敵と見て懼る(おそる)べからず
・小敵と見て侮らず
・小敵欺くべからず
・小敵と見て侮るな
企業戦略のヒントを
得ることもできます。
それは、我々の
努力における成功は、
それが大規模であれ
小規模であれ、
我々の資源の規模にのみ
依存するものではない
ことを強調しています。
その代わりに
重要なのは、
チーム内で統一された
ビジョンと
コミットメントを
育むことです。
楠木が武士たちに
願いを合わせるように
助言したように、
私たちは
共通の目標に向かって
労働力を合わせるように
努力することが肝要。
企業の戦場では、
課題に直面することは、
私たちのリソースの
大きさにかかっている
のではなく、
チーム全体の願望を
結集する能力に
かかっています。
強大な敵に遭遇したときは
「欺く(あざむく)」
小さな力に直面したときは
「恐れる」 という
楠木の助言のように、
それぞれの状況の
ニュアンスを尊重して
適応していきたいところ。
一見取るに足らない
課題に直面しても、
謙虚さの重要性を認識し、
それらを過小評価する
ことを控えたい。
逆に、手ごわい競争相手に
直面したときは、
圧倒するのではなく、
出し抜くという
戦略的アプローチを
採用する手も考えられます。
このアプローチには、
数よりも知恵と団結が
優先される企業精神が
凝縮されており、
歴史的な英知に
反映された
時代を超えた
原則を反映しています。
『士卒の志を一にするとせざるとなり』
この一文にすべての
答えがある気がしています。
ちょうど、墨攻の合戦でも、
敵将の多くの部下が
国の命令で帰国するなか、
命令を無視して残った
小数の敵を見て、
「勝った!」と
湧きたち油断する民衆に
渇を入れるシーンがありました。
一番盛り上がる
最終決戦の3巻か4巻での
お話しです。