マガジンのカバー画像

西日の中でワルツを踊れ

28
「西日の中でワルツを踊れ」をまとめています。
運営しているクリエイター

2023年6月の記事一覧

【小説】西日の中でワルツを踊れ25 死者に会えるくせに、神様を信じてる女の子。

前回  外へ出ても紗雪の姿はなかった。  当然と言えば当然だが、落胆しなかったと言えば嘘…

さとくら
1年前
8

【小説】西日の中でワルツを踊れ24 声があった。熱くも冷たくもない光の中で。

前回 「よぉ、お二人さん。辛気臭い話は終わったかぁ?」  着くずしたスーツにオールバック…

さとくら
1年前
8

【小説】西日の中でワルツを踊れ23 そうして『川田元幸』くんは今、ここにいる。

前回  事態を正確に理解したのは、藤田京子の部屋を去って数日が経過した頃だった。職場に一…

さとくら
1年前
7

【小説】西日の中でワルツを踊れ22 僕はずっと僕でいられるわけじゃないから。

前回  川田元幸くんの家のリフォームをしている間、彼と話をした覚えはなかった。  ただ、…

さとくら
1年前
9

【小説】西日の中でワルツを踊れ21 望んだものを得るのは『しからしむ(そうなる)』…

前回  山本に連れられて辿り着いたのは岩田屋中学校だった。  僅かに開いた校門から敷地へ…

さとくら
1年前
6

【小説】西日の中でワルツを踊れ⑳ 強く願おうと思う。呪われるくらいに、強く。

前回  待て、待て、待て、待て――。  ぼくが川田元幸だとすれば。  紗雪を否定し、川島…

さとくら
1年前
12

【小説】西日の中でワルツを踊れ⑲ 人殺しの「名前」をぼくは口にする。

前回  運転席に山本が座り、ぼくと田宮は後部座席に並んで座った。田宮は、とりあえず町中を走れと山本に言った。 「分かりました」  車が走り出してから、田宮は運転席を蹴った。 「おい、運転手。お前、なに者だよ? チャンさんと顔見知りみてぇだけどよぉ?」  山本は何の動揺もなく返答を口にする。 「私は少し前まで中学校の校長をしておりました。なので、この町に残った元生徒の成長を地肌で感じており、顔も広いのです。チャンさんとは、うちの生徒が一度お世話になったことで知り合いました」