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【世界教室】世界一美味しいパスタに出会ってしまった!

2011-12年、海外から日本の学校とオンラインで繋いで行うライブ授業「世界教室」と世界の街を走って旅する「旅ラン」をしながら世界一周約40ヵ国へ🌎 海外に行けない今だからこそ、一緒に行った気分になれるバーチャル冒険記を連載しています☺︎ 世界教室&旅ランの詳細はこちら


旅中に食べて美味しかったものは、常に日記の裏に書き留めていた。マレーシアの盛り盛りご飯、タイのフルーツジュース、中国の汁なし坦々麺、ネパールのモモ、チェコのクルクル巻きシナモンパン、クロアチアのシーフードリゾット、フランスの鴨、エジプトのコシャリ...。そんな中で、世界一と思えるものはこの魚介パスタだ。

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私たちはイタリアのミラノ中央駅にいた。ここからイタリア全土へはもちろんのこと、近隣のヨーロッパ諸国に電車でどこにでも行ける。モナコ、スイス、イタリアを共にしたレンタカーとはここでお別れ。到着後の宿も事前に予約し、スペインへの準備は万全。バルセロナを目指していざ夜行列車の旅へ!

夜行列車はボックスにベンチシートが2つ、上がベッドになっていて、冷房も程よい快適な個室だった。夜8時過ぎ、電車は20分遅れで出発。一週間レンターカー泊の疲れと、この快適さもあいまって二人とも朝まで熟睡。

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朝8時半、窓から注ぐ眩しい日差しで目が覚めた。いよいよスペインか!!高鳴る期待もそこそこに、相方がある違和感に気づいた。

「あれ?!海が右に見える...。」

「???」

そう、ミラノからスペインに向かうには、右に本土、左に海が見えているはず。

142ユーロの大金をはたいて間違ったチケットを買ってしまったのか?と見返してみても、バルセロナ行きには間違いないようだ。チケットが示すバルセロナまでの時間も大体同じ。やっぱり間違いない。

どこか胸がザワつきがらも「大丈夫。きっとバルセロナへ向かっている。」と気持ちを落ち着かせる。

「でも...そーいえば、車内のアナウンスがいつまで経ってもイタリア語じゃない?」

「確かに...。」

ようやく廊下に出て人を探すも、居合わせたイタリア人には英語が全く通じなかった。こうなったら単語作戦。チケットを指差してひたすらバルセロナを連呼する。

「バルセロナ?バルセロナ?(バルセロナに行く?)」

「Si Si (はい、行きますよ)」

なんだか困っている日本人がいる、と廊下にわらわら人が出てきた。何人かのイタリア人に聞くも、みんな同じ答え。「Si Si」

「ん〜どーなってるんだ...。」

そんな時、救世主となる車掌さんがやってきた。けれど、車掌さんもやっぱり「バルセロナに行く」と言ってどこかに消えてしまった。


しかし、しばらくして車掌さんが地図でバルセロナを指さして私たちの前に現れた。


「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


私たちは、シチリア島のバルセロナに向かっていた。

シチリアのBarcellonaとスペインのBarcelona、まさかのLがひとつ多かった。どおりでみんなバルセロナで通じたわけだ。


「どーしよう。今から降りて引き返す?」

答えを出す間もなく、車両ごと船に乗って、私たちはイタリア本土からシチリア島に渡らされていた。

車掌さんのアドバイスによると、シチリア島のメッシーナで乗り換え、パレルモまで行き、そこから飛行機でスペインのバルセロナまで行けとのこと。

今夜泊まるはずだったバルセロナの宿の予約もプランも完璧だっただけに二人とも放心状態。普段なら驚きの"船の中に電車が乗る"という出来事もただ個室に引きこもってやり過ごした。

とりあえずメッシーナで下車してネットカフェに入り、情報収集。(当時はインターネットが使えるスポットを探すのに苦労した) 気がつけば昨日の夜から何も食べてない。腹が減っては...と、近くにあった港の食堂に入った。

「ボンジョールノー!」

エプロン姿の膨よかなおじさんが両手を広げ笑顔いっぱいで迎えてくれて、しぼんでいた心に空気が入れられた気がした。おじさんにおすすめされるままに、パスタを注文。

数分経ってテーブルに運ばれると、そこら中に海の香りが漂った。

「うますぎる!!!」相方が唸った。

ひとくちで、魚介のうまみを吸った程よいアルデンテの麺の虜になった。スープはいくらでも飲んでいたい。刻まれたフレッシュトマトとイタリアンパセリのアクセントもたまらなかった。

勧めたおじさんも「うまいだろ」とドヤ顔の目配せ。これまで見た事もある普通のパスタなのに、全てが絶妙なバランスだった。まさに世界一の魚介パスタだ!

"人は美味しいものを食べると幸せになる"とは、本当だ。私たちの憂鬱はこのパスタのお陰で一気に吹き飛んだ。むしろ食べ終えた時には、ここに来れて良かったとさえ思えた。

「スペインのバルセロナ行きは一旦忘れて、数日シチリアを楽しんでみよう。」

           *

食には素晴らしい力がある。

私も相方も大体一日2食なので、あと50年生きるとしても食べられるのは36,500食。一食一食美味しいもの、良いものを、大切な人と共に食べたいと思わせてくれたシチリアのパスタ。

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