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【読書感想文】母の待つ里 ~ふるさとがくれる温もりと癒しの物語~

本を手に取ったきっかけ

先日、NHKドラマの宣伝でこの作品を知り、浅田次郎さんのファンとしてすぐに興味を持ちました。
これまでに彼の作品を数多く読んでいますが、『母の待つ里』は未読だったため、手に取ることにしました。

著者紹介

浅田次郎は、家族や友情、人生の儚さを描く国民的人気作家です。
感情豊かな人間ドラマを得意とし、読者を引き込む魅力があります。
初めて読んだ作品は映画化もされた『鉄道員(ぽっぽや)』で、感動的な短編でした。
以降、『壬生義士伝』や『蒼穹の昴』などの壮大な長編、コメディ要素も交えた『プリズンホテル』など、多彩な作品を楽しんでいます。

「母の待つ里」あらすじ

40年ぶりに戻った故郷で、待っていたのは年老いた母――。
大手食品会社の社長、松永徹。退職後に妻に離婚された室田精一。そして、親を看取ったばかりのベテラン女医・古賀夏生。還暦を迎える3人が、懐かしい山里で過ごす不思議な一夜。「彼らの心を包み込む温かさ」が物語の核心です。

心の隙間を埋める「ふるさと」の力

この作品は、都会で成功を収めた3人の男女が人生に疲れを感じ、心の隙間を埋めるために「里帰り」をする物語です。
彼らはそれぞれ、地位や名誉を手に入れたにもかかわらず、孤独を抱えています。
そして、縁もゆかりもない田舎で、彼らは自分の故郷だと思い込み、他人を「母」として過ごす奇妙な一泊二日の体験をするのです。

この「母」は、無条件に彼らを受け入れ、素朴で深い愛情を注ぎます。読者としても、彼らが感じる懐かしさと安らぎに共感し、自分自身の心が癒されていくような感覚を味わえます。
浅田次郎の描く故郷の風景は、私たちの心に眠る日本の原風景ともいえるでしょう。

方言と美化された田舎

関西出身の私にとって、東北弁のセリフは少し読みにくく、物語への没入感が若干妨げられました。
しかし、方言に慣れていれば、さらに深い感動が得られたかもしれません。
また、田舎を美化しすぎている部分も少し気になりました。
村の厳しい人間関係や「よそ者」への冷たい対応など、現実的な側面ももう少し描かれていれば、よりバランスの取れた作品になったかもしれません。

読後感と社会問題への問いかけ

この作品は、都会で生きる人々の心に温もりを与える優しい物語です。登場人物たちは優しさに満ち、読者も安心して彼らに感情移入できます。
さらに、定年退職後の人生や熟年離婚、過疎化といった現代社会の問題が巧みに織り込まれ、単なるハートウォーミングな物語にとどまらず、私たちに「本当の幸せとは何か?」という問いを投げかけます。

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彩花サトコ
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