朝ドラ「らんまん」に登場!石版印刷の世界
近頃の密かな楽しみ、それは朝ドラ「らんまん」を見ること。
元々は、天使すぎる子役時代からその成長を見続け、「SPEC」ニノマエで心を掴まれた天才・神木隆之介(枕詞長すぎですがどうしても言いたかった)の演技を楽しみに見始めたのですが、ストーリーも大変面白い!
特にここ最近は、個人的に大興奮の内容が続いています。
なぜなら、石版印刷が登場したから〜!!
神木くん演じる槙野万太郎が植物学の雑誌を刷るために、当時最先端の印刷技術だった石版印刷を学ぶという流れで、石版印刷工場のシーンが多数出てくるのです。
昨年開催した「あたりまえの分解展 紙と印刷のDIY」の会場が、石版印刷の工場をリノベーションした鶴身印刷所さんで、実際に石版印刷の道具や印刷の様子を目の当たりにしたことのある身としては、なんだか嬉しくて。
ま、会期中は参加できてないんですけど…泣
(詳細は下記の記事をご覧ください)
しかも今回、鶴身印刷所さんが撮影に協力しているそうじゃないですか!
これはテンション上がらずにはいられません。
そういえば展覧会の準備にあたり、石版印刷を体験させていただいたり、色々と写真を撮ったりしたなぁと思い出したので、この機会に一部ご紹介したいと思います。
石版印刷とは
まずは石版印刷について少し。
6月9日の放送で職人が説明していましたが、石版印刷は水と油が反発する性質を利用しています。
印刷の大まかな流れは下記のようになります。
決して石を彫っているわけではないんですね。ここが木を彫って刷る木版画とは大きく異なる点で、画期的とされていました。
少し話がそれますが、ドラマ内で絵師の岩下さんが、木版画が廃れて職人の仕事がなくなることに言及し、それに応じて万太郎が「仕事がなくなったとしてもその技術は新しい世界で芽吹く」というようなニュアンスの発言をするんですよね。
当時最先端だった石版印刷も、現在は商用で使われることはありません(芸術の分野では生き残っています)。石は大変重く、また高価だったため、徐々に亜鉛やアルミの版に変わっていったからです。
ですが、石版印刷の技術は今の主流であるオフセット印刷に受け継がれていきます。石版印刷がなければ、オフセット印刷は発明されなかったでしょう。
万太郎の発言は、木版印刷の終わりと石版印刷の始まりだけでなく、石版印刷の終わりとその先も示唆しているのかなぁ、なんて思ったのでした。
鶴身印刷所さんでの石版印刷体験
前置きが長くなりましたが、ここから石版印刷の写真を載せていきますね。
「あたりまえの分解展 紙と印刷のDIY」の企画段階で、鶴身印刷所さんで石版印刷体験をさせていただいたときのものです。
まずは石版印刷機から。
ここにインキのついた石と紙をセットし、ハンドルを回して圧をかけることで印刷されます。
こちらが石版。テスト刷りのために新たに製版していただいたものです。
万太郎もなでていましたが、表面がツルツルで触りたくなるんですよね~。
石版にゴムを塗る作業中。
インキの佇まいも素敵です。
ハンドルを回していざ印刷!
実は、石版印刷は布にも刷れます。
というわけで、この日は紙ではなくTシャツにプリントしてみました。
めちゃくちゃいい感じ!
鶴身印刷所さんでは昔、実際に使われた石版も見ることができます。
石だからというのもありますが、やはり歴史のあるモノは重厚感がありますね。
ドラマをご覧になっている方はわかると思うのですが、セットの石版印刷の再現度、めちゃくちゃ高くないですか?
それに印刷の説明もすごく丁寧で、感激しながら見てました。
鶴身印刷所さんをはじめとする石版印刷の専門家が関わっていらっしゃるので、当然と言えばそうなのかもしれませんけれど。でもやっぱり、リアリティを追求し、細部にこだわって製作されているのを感じます。
だから視聴者が物語の世界に没入できるのでしょうね。
と、ここまで知った風に書いてきましたが、実は鶴身印刷所さんにお邪魔する前は、石版印刷についてあまりよくわかってなかったんですよね…。印刷の歴史についての文章を読んで、「そんなのあるんだ」くらいで。
でも実際に見て経験して、そしてドラマを見て、改めて先人たちの知恵と努力が生んだ技術のもとに、今の便利な生活が成り立っているのだと実感しました。
私も、なにか後世に芽吹くような仕事ができるように、頑張らないといけないな。
さいごに
関西近郊にお住まいで、らんまんを見て石版印刷に興味を持たれた方はぜひ一度、鶴身印刷所さんに足を運んでみてはいかがでしょうか。
定期的に石版印刷のワークショップを実施されていますし、そのほかのワークショップや展示も面白そうなものがずらり、ですよ。
家主の鶴身さんはとってもキュートな方なので、鶴身さんともお話ししていただきたいなあ。
私自身は今、遠出しにくくてなかなか行けないのですが、再訪できる日を夢見て頑張ります。