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カムカムエヴリバディを見ながら考える、「あなたの名前」のたいせつさ。
たぶん、何年か前なら、勇ちゃんは「朝ドラ主人公の夫」としてじゅうぶん合格点だったと思う。
主人公をあだ名で呼んでからかう幼なじみ。私のことを嫌いなんだわ、と思いつつもなんとなく気になり始め、大人になってから「実は俺はずっとお前のことが…」などとピンチの時に「守ってくれる」人。うん、いけそうな気がする。
でも私は、勇ちゃんを「うわ、嫌だって言ってるのにあだ名で呼び続けるのうざい…」と感じ、彼に「アンコ」と呼ばれ続けたヒロイン「安子」が彼を選ばなくてホッとした。
そう思って当たり前、あなたは正しい!と、ドラマ側から認めてもらえたような気がする。
今の朝ドラで求められてるのは、勇ちゃんではない。
安子を「自分の言うことを聞き、家の中で自分が守るべき弱い存在、彼女をどう呼ぶかも自分の自由」としていた勇ちゃんの否定は、ドラマ内の古き男たちへの決別でもある。
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勇ちゃんなんて(当然)眼中になかった安子が恋をした稔は、「英語を学ぼう」「ジャズを聞こう」と、彼女を新しい世界へいざなう。
次に出会ったロバートは、彼女の英語力に感嘆し、あずきの声のおまじないを英訳し、一緒にテキストを作る。
二人とも安子の強さを信じて、強さを愛して、ひとつの場所に閉じ込めなかった。
そして二人とも安子を「やすこ」と呼ぶ。やさしい声で。
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という「安子編」が終わり、安子の娘「るい」が好きになったのは「ジョーさん」だった。
母との別れから、言葉も笑顔も少なくなったるいの心の鍵を開ける「錠」のような「錠一郎」。その名前には、彼を助けて育ててくれた「定一さん」が含まれている。そして「るい」という名前にこめられた父母の愛を見つけて「サッチモちゃん」と呼んでくれるのも、ジョー。
名前には、育ててくれた人の気持ちが入っている。…やっぱり、それを無視して安子をあだ名で呼び続けた勇ちゃんは、この物語の真ん中には立てない。
(あ、そういえば、ベリーもトミーも、名前を変えることで、違う自分を生きていた)
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そして3人目の「ひなた編」…この「ひなた」という名前も、(昭和に、こういう名前の女の子はあまりいなかったかもと思いつつも)なるほどふたりに生まれた子ならこれしかない、という命名。あなたに、ひなたの道を歩いてほしい、という愛。
そして成長したひなたの前にあらわれた、舌打ちしがちな大部屋俳優。
いがみあう彼と、とうとう名乗り合うところまで来た、今週のカムカム。
彼らはお互いをどう呼び合うことになるのか。
できれば、やさしい声でたいせつに、あなたの名前を…と思うけれど今のところそんなきざしは…ないですね。
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