「なりたい自分になれたのか?」という質問に対して
バリスタの仕事中に、同じお店で働くパティシエさんから聞かれた質問でした。
夜、閉店作業をしている最中、なんとなく「なんで今の職業を選んだのか」の話になり、自然と学生時代を振り返りました。
その質問を投げかけてくれたパティシエさんは「かっこいい仕事だと思ったから」という理由で料理の道へ進んだそう。
私も編集ライターの仕事を選んだ理由はだいたい同じ。クリエイティブな仕事が「なんとなく楽しそうだと思ったから」。最初に就職した会社の配属先が「たまたま編集部だったから」。編集者として働いてみたら「いろんな媒体、人と携われて刺激的だったから」。
そんな理由で、かれこれ10年以上同じ職種で仕事を続けています。そこからバリスタの仕事にもつながったわけで…。
それから、「なってみたからわかること」も、たくさんあります。
パティシエの子にとっては「同じお菓子を繰り返し繰り返し作る退屈さ」は、なってみなければわからなかった現実だったとのこと。でもやっぱり日常的にお店に並ぶお菓子は量産しなければいけないわけで…。
反対に「一番楽しい瞬間は?」と聞いてみれば、「新しいスイーツの開発」との答え。「でも考え抜いて提案した新作が、あっさりボツになった時の苦労の報われなさに何度も落胆してる」と付け加えました。
「パティシエの仕事が、体力と根気が、こんなに必要な仕事だとは、学生時代考えてもいなかった」
そう話してくれました。
「佐藤さんは、なりたい自分になれましたか?」
そう聞かれて、即答はできませんでした。
編集ライターという自分で選んだ仕事を、フリーランスという自分で選んだスタイルで続けて、時折大好きなコーヒーを淹れる仕事もさせてもらって。
でもやっぱり「現実」に直面して落胆したり、気落ちすることもあります。
きっとこれは一生続いていくのかもしれません。目標という峯に向かって進んでいる時が一番楽しくて、到着してしまうと「なんだこんなもんか」と思うこともあれば「もっと先に行きたい」と新しい目標物が見えることもある。
「今の自分に大満足!」と言い切れる人って少ないはず。みんな何らかのジレンマを抱えながら、長い道のりの中の、小さな「やった!」とか些細な「嬉しい!」を糧に進んでいくんですよね。だからこそ楽しいのでしょうね。
普段、自分がインタビュアーとして人に質問をする立場が多いですが、時折こうして、ハッとさせられる質問を向けられると、色々人生のことを考えちゃいます。
ーーなりたい自分になれましたか?
「理想の自分」を明確に描けていない私にとっては、「今後」を考えさせてくれる良い質問となりました。
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