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|影山多栄子の小部屋|

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人形作家・影山多栄子が物語世界を旅しながら、共に時を刻んでゆく人形たちを発表します。
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#アート

ディケンジング・ロンドン|TOUR DAY 3|骨董屋《1》

* *  ツアーDAY 3——本日はレスター・スクエアからスタートです。小説『骨董屋』より、少女ネルの祖父が営む骨董屋に到着しました。  軋む扉を開けて薄暗い店内に入り、目が慣れてきた頃に奥の方に見つけたのは、はっとする清廉な白を纏った、影山多栄子さまの静かな面差しのお人形。そしてその横には、ちいさな木彫りの個性的な面々が集合していました・・・ * * * ネルと骨董屋  『骨董屋』は、語り手がロンドンの街中で少女ネルと出会う場面から始まる。道に迷ったという彼

二人展《空はシトリン》|巻頭エッセイ|森 大那|曲がり角へと歩いてゆくだけ

 宮沢賢治は鈍い。それは彼の武器だった。  これまで宮沢賢治は、その作品群が無数の観点から読解されてきた。のみならず、遺された膨大なテクストは後世の人々の創造の源泉となり、あらゆる芸術ジャンルで派生作品が創られている。  彼に匹敵するほどのフォロワーを生み出せた作家は世界規模でも例がほぼ見当たらず、わずかにアメリカのエドガー・アラン・ポーが思い浮かぶだけだ。  しかしそれは、彼が時代のなかで先進的であろうとしたからではなかった。反対に古くあろうとしたのでもなかった。  宮沢

影山多栄子 & 永井健一二人展《空はシトリン》 |展覧会のご案内

オンライン開催 at MAUVE CABINET * 霧とリボン実店舗は休業中のため ご入場頂くことはできません  無国籍な美意識と民芸の伝統が交差する人形作家・影山多栄子さまと、鉱物的感性で人物や事象を夢想する画家・永井健一さま。宮沢賢治『春と修羅』から着想した、具象と抽象が明滅するふたりの作品世界をお届けします。  人形作品全20点、絵画作品全16点に加えて、ポプリブランド・Du Vert au Violetを交えた3組のコラボレーション作品1種(限定数販売)をお披露

影山多栄子 & 永井健一二人展《空はシトリン》 |開催方法と作品販売

オンライン開催 at MAUVE CABINET 霧とリボン実店舗は休業中のため ご入場頂くことはできません 霧とリボン 実店舗「Private Cabinet」に作品を展示、会場の様子や各作品の紹介を写真と文章で、会期中、ここMAUVE CABINET(note)にてオンライン配信、アーティスト作品を順番にご紹介します(8/2休)。尚、配信予定の事前告知は行っておりません。会期当日、霧とリボン ツイッターにてお知らせします。 [お昼頃]霧とリボン ツイッターにてその日

レース模様の図書室、再訪|影山多栄子《1》|図書室の精霊

Text|KIRI to RIBBON  クレマチス・アーマンディの白い香気が過ぎ、花水木の開花と共に草花が煌めきを増す頃——鬱蒼の緑の奥にひとときひらかれる図書室があります。そこは一風変わった図書室。書物と一緒に、書物と暮らしてきた少女たちの営みが、レース模様に編まれて並んでいます。精霊たちも住んでいるようです。  1年の時を経て、ふたたび扉の前に立ちました。あの日と同じように、小鳥の囀りが聞こえてきます。  季節は巡り、様々な物事が移ろい、変化を余儀なくされる中、少女

レース模様の図書室、再訪|影山多栄子《2》|誰かのお人形、誰かの忘れ物

TextKIRI to RIBBON  雨の一日になりました。  図書室の菫色はいっそうグレイッシュに落ち着き、時間もゆったり流れています。いつも聞こえる少女たちの囁き声もなく、図書室には雨音だけが響いています。  少女たちのいない図書室を訪ねてみましょう。 * * *  英国文学の書架に置かれたままのお人形がありました。  いつ、誰が置いたのか、誰の持ち物なのか——ある時ひとりの司書が持ち主を探すべく、古い関係者にもあたって調査したことがありました。しかし、お

レース模様の図書室|影山多栄子さまのご紹介

影山多栄子 Taeko Kageyama | 人形作家 →Blog  山吉由利子(球体関節人形)、宮崎優人(市松人形)に人形制作を学ぶ。石粉粘土と布を中心に様々な素材を使い、ひとりひとり違うお話を感じさせるような可愛らしさと不思議さを持った人形作りを心がけています。 [個展]2003年 「うきわ」(ギャラリー古桑庵)、2004年 「まくら」ギャラリーNonc Platz。以後数年おきに個展を開催。ほか企画展、グループ展など多数。2007年創作人形専門誌「Doll Foru