熊谷めぐみ & 横井まい子|ART & ESSAY《10》|螺旋にとらわれて
貧乏な田舎牧師の娘として生まれた、若い女性である「私」は、マイルズとフローラという幼い兄妹の家庭教師の仕事を得る。不安を押し切り屋敷に赴いた「私」は、兄妹の美しさに魔法にかかったように魅了される。家政婦のグロースの協力も得て、「私」の仕事は順調に見えた。ある日、幽霊の姿を見るまでは。
ヘンリー・ジェイムズが書いた『ねじの回転』は様々な解釈を許容する。作品のほとんどを占めるのは、家庭教師である「私」の一人称の語りである。若く、美しく、雇い主に憧れを抱きながらも、大きな不安