2002年頃の愛媛は松山、道後温泉。元花街にひなびたコンパニオン派遣事務所があった。18歳の主人公は事務所から派遣されて、地元の若者に混じってケンブンの宴会場で働く。ある日、人手…
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道後温泉物語 4話 阿婆擦れ
道後温泉の裏には花街がある。温泉本館の側道をゆるゆる登っていくと、左手に上人坂なる路が現れる。さらに登ると、一遍上人の宝厳寺に辿り着く。上人坂は昭和の時代にはネオン坂と呼ばれバーやパブが軒を連ねていた。私もここの【バー姉妹】といううらぶれた看板と、宝厳寺の大銀杏のおかしな取り合わせを、上人坂下から見上げたスケッチとして描いた覚えがある。
それくらい、かつての道後は、俗世間と聖なるものが分け隔てな
道後温泉物語 2話 冷静と情熱のあいだに
道後商店街の黄ばんだアーケードを抜け、農協の脇の小路に入る。澄んだ水が流れる側溝沿いに歩くと、左手に巨大な四角い建造物が見えてくる。建物の手前で、バイトリーダーのタケウチさん(推定20歳)がくるりと私の方を振り向いた。日本人形みたいな顔立ちだ。やたらと目の上が青く唇が紅い。「新人さんこれが【ケンブン】、今日の派遣先よ」ケンブンってなんのことや?と思いつつ、ついていく。通用口の脇にでっかく【愛媛県民
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