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プラプラする人間が世界を変える?! ——“人を良くする食”の未来

QUALITIES記事「シェフ松嶋啓介が太宰府でいま問う “経済合理性”を越えた文化的価値」を読んで思う、さすらい食堂との共通点。

このQUALITIES記事を最初に目にしたのは、博報堂ケトルのチーフプロデューサーで通称「ローカルおじさん」こと日野昌暢さんのFacebook投稿でした。日野さんご自身が編集長を務めていらっしゃるQUALITIESの記事をシェアされていて、直感的に「後で読んでみたい」と感じて私もシェア投稿させていただきました。その直後、シェアに気づいた日野さんから「感想を!」というコメントをいただき、改めて私の考えをnoteにまとめてみました。ご一読いただけたら嬉しいです。

引用元:QUALITIES 九州のいいヒト、いいコト、いいシゴト

“プラプラしている人間が世界を変えろ“は私へのメッセージ?!

QUALITIES記事「シェフ松嶋啓介が太宰府でいま問う “経済合理性”を越えた文化的価値」の冒頭にある“プラプラしている人間が世界を変えろ“というメッセージは私に向けて言ってるのか?!と瞬時に感じました。完全に勘違いでしかないのですが、それが率直な感想です。だからシェアしたのかもしれません。


さすらい食堂の想い

今からさかのぼること約2年数ヶ月。2022年秋に私は「さすらい食堂」と称したインスタアカウントを開設しました。当時は移住先探しの旅のためにバックパッカーとして国内(時々海外)をプラプラしていただけですが、徐々に訪れた旅先の食材を使って料理を作り交流を愉しむ活動へと変化。今となっては各地の素敵な方々やおいしい食材と料理人の方々を繋ぐと新しい食文化が生まれる(=世界が変わる)のでは?!という想いを持つようになり現在に至ります。

オーガニックアプリコット農家@パキスタン
箱根西麓野菜の生産者さん


そんな私にとって“プラプラしている人間が世界を変えろ“という言葉は原動力(背中を押してくれる)と直感したメッセージでした。



お腹を満たすだけじゃなく、心も満たす「食」の在り方とは

この記事で取り上げられている松嶋啓介シェフは20歳で渡仏。現在はニースで「KEISUKE MATSUSHIMA(ケイスケ マツシマ)」を営む気鋭のシェフ。

松嶋啓介シェフ │ プロフィール
まつしま・けいすけ。福岡市出身。20歳で渡仏。フランス各地で修業を重ねたのち、25 歳でニースにレストラン「Kei’ s passion」をオープン。3 年後、外国人として最年少でミシュラン一つ星を獲得し、その後店名を「KEISUKE MATSUSHIMA」に改める。2010 年7 月、フランス政府よりシェフとして初かつ最年少で「芸術文化勲章」を授与、2016年12 月には同政府より「農事功労章」を受勲。日仏の食文化を守り、本当の豊かさを学ぶ料理教室ほか、団体・企業での講演会も行っている。

引用元:QUALITIES 九州のいいヒト、いいコト、いいシゴト

このようなフランスで活躍されている松嶋啓介シェフが問うているのは「経済合理性を越えた文化的価値」としての「食」の在り方。「喰い改めよ! 人を良くすると書いて食。人を良くする事と書いて食事。この漢字の意味が、今ほど切実に感じられる時はありません」とおっしゃるように現代社会における「食」”の在り方に問いかけをされています。

松嶋啓介シェフはご自身が30年近く住んでいらっしゃるフランスで、経済指標には表れない“心の貧しさ”を感じているそうです。この視点は、私が「さすらい食堂」を通じて伝えたいメッセージ (価値観)と重なるように思います。

現代の日本においてお腹を満たす事は充分できる。ただ、経済合理性を優先したいわば「工業製品化された食材」や、栄養素の表示が不透明な加工食品が多く流通している昨今、私たちは何を食べているのかもわからないまま食事をしていることが多いのではないでしょうか。そんな現代社会において、私は食事をする際にどこか満たされない空虚さのようなものを感じているが故に『お腹を満たすだけじゃなく心も満たしたい』。そのような「食の在り方」をみんなで考えていきたいというさすらい食堂の価値観は、ある種の「社会と食の結節点」であるように思いとても嬉しく感じました。

私は「食」の大本となる生の食材そのものに込められた生産者の「手間」や「時間」を感じながら、そのストーリーを含めて味わうことが最も豊かな食の楽しみ方だと思っています。

松嶋啓介シェフが指摘する「五感を使い、家の食事に時間をかける」。料理は「手間」か「時間」でおいしくなる。それらが心を豊かにするためには重要だという考えにとても共感します。それと同じように、私も食材ひとつひとつに込められた「手間」や「時間」を大切にし、料理を通じてその生産者や食材のストーリーを伝えていきたいと思っています。


ガストロノミーの究極の楽しさは五感を駆使してローカルを楽しみ、新しい食文化を創造すること?!

国連世界観光機関より

※ガストロノミーとは、私たちが何をどのように食べるかと いう合理的な知識のことです。(食事と文化の関係を考察すること)

国連世界観光機関:ガストロノミーツーリズム発展のためのガイドラインより

さすらい食堂としては、松嶋啓介シェフが言う「価値が経済合理性にしか見い出せない社会は健全じゃない。それ以外の価値をどう見出したらいいか」という社会課題に対する、さすらい食堂なりのアプローチは一種のガストロノミー体験でもある。

料理人が国内各地の生産者の元を訪れてお話を聞くことで、その食材ひとつひとつに生産者の「手間」と「時間」がふんだんに費やされていることを知れる。ここで得られる生産者や食材が持つ独自の「ストーリー」を意識することで五感を研ぎ澄まし、甘味・塩味・酸味・苦味・うま味を繊細に味わう。これらを意識した料理人が食材を調理し、お皿で表現し、食べてくださる方々へ伝え味わう。

このプロセスの体験こそが最高の食の愉しみ方(ガストロノミーツーリズム)だと思っています。

この体験で重要なポイントがそれぞれの料理人が食材をいかに活かすか。アートと同じで料理人の腕で表現が変わる。それがまた面白い。その一つひとつのクオリティを楽しむのもいいし、料理人ごとの違いを楽しむのも面白い。だからこそ松嶋啓介シェフが指摘するように、口に入れた瞬間に「おいしい」と反応して終わりではなく時間をかけて味わう。それが「どうおいしいか」。「なんでおいしく感じるのか」を愉しむ。それこそがお腹を満たすだけでなく、心も満たす「食」の在り方であり、「食」における経済合理性以外の重要な価値だと思います。


内と外の視点が融和することで生まれる新しい価値観がガストロノミーの魅力

日本人の感覚からすると一般的な寿司も外国人料理人がアップデートするとどうなるのか?!そんな未知の食文化の創造を料理人の方々と愉しみたいのが「さすらい食堂」

食に限ったことではないけれども、何事も外を見る、外から見る(観る・視る)ってすごく大切だと最近思っています。言い換えるなら「差異を知る」ということなのかもしれない。その“差異”が何を意味しているのか、何を表しているのか。その地域の文化的価値なのか、時間軸で見るなれば衰退なのか発展なのか。そこを感じ取ることこそが「食・ガストロノミー」における醍醐味なのではないでしょうか。

(一部例外はあるかもしれないですが)その差異を感じとれる視野を持つ人は外を知っている人だと思います。だからこそ冒頭にある“プラプラしている人間”こそが世界を変えられるんだと思う。

日本の外から長年ご覧になっていた日本に対する視点・感覚・感性をお持ちの松嶋啓介シェフは強く“日本(の土地・文化・風土・歴史など)”をネガ・ポジ両面を見ていらっしゃるんだと思う。

このQUALITIESの記事では“和魂漢才”’(※)と表されているけれども、さすらい食堂としては日本津々浦々のローカル(その食材やその地域の歴史・文化・風土などを含めて)を知り、その背景を含めて調理し、その料理を通じて食べてくれる方々と交流を育む愉しさを一つの価値観としています。

そのプロセスで料理人が自身のインスピレーションを働かせて新しい「食」を創造する。その産物がいつか将来、その地域の郷土料理となることを願っています。そこが和魂漢才との共通点だと感じています。

※大陸の文化(漢才)を取り入れつつも、日本の心(和魂)を失わないという意味で、太宰府天満宮の御祭神、菅原道真公の考えを表している。

QUALITIES記事より

最後に:一緒にローカルの「食」を楽しみたい。

大変おこがましいですが、もし叶うならば、いつか松嶋啓介シェフと一緒に、ローカルの「食」を楽しみながら、新しい食文化を作っていけたら嬉しいです。そうなれるよう精進していきたいと思います。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。
末筆になりましたが、松嶋啓介シェフが企画されている「第2回大宰府食サミット」の成功を祈念いたします。

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QUALITIES記事「シェフ松嶋啓介が太宰府でいま問う “経済合理性”を越えた文化的価値」をぜひご覧になってください。

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