ハットリス
ハットリスとは、皆さんご存知のテトリスの兄弟ゲームである。
作成者も、もちろんアレクセイ・パジトノフ氏による本家本元の作品だ。
テトリスといえば、「ソ連が冷戦時代にアメリカの兵士をテトリス中毒にして骨抜きにするために作ったゲーム」なんていう都市伝説が語られるほど、世界的に大流行したゲームである。
小学生の頃、友人の家に行くと、その友人の母親専用のゲームボーイが寝室に常備されていた。
ゲームボーイには一年中テトリスのソフトが差し込まれており、寝る前にテトリスをプレイするのが彼女のルーティンだったのかもしれない。
そんな老若男女に愛されたテトリスの兄弟作品が、このハットリス。
出来の良い、シュッとした兄貴分のテトリスに対して、このハットリスは…癖が強い。
テトリスと同じく「落ちものパズルゲーム」ではあるが、落ちてくるのはブロック(ミノ)ではなく、シルクハットや山高帽などの帽子。
同じ種類の帽子を5つ重ねると消えるというルールだ。
まぁ、やってみればわかると思うが、このハットリス、これがまた微妙な出来だ!
テトリスにある「4列同時消し」のような爽快感もなければ、街中のビルがテトリスに見えてくるあの中毒性も、まったくない。
ゲームのタイトル画面に出てくる、帽子を抱えたオジさんの顔も、どこか真剣さが足りない、絶妙に気の抜けた表情をしている。
私はこのハットリスを初めて見てプレイしたとき、その微妙さ加減に思わず大爆笑してしまった。
テトリスという偉大な兄を持つ弟ハットリス、その出来の差がツボに入ったのだ。
嘘みたいなパチモノ感丸出しのゲームタイトル。
パズル要素も、何となく楽しさが伝わらない。
そして気の抜けた音楽。
きっと、真剣に「テトリスとは違うパズルゲームを作ろう」と考えていたのだろう。
だが、すべてがどこか変な方向に向かってしまったのかもしれない。
その日は、高校の部室で先輩たちとファミコンをしていたので、みんなワイワイしていたこともあり、全ての要素が噛み合って私は腹の底から笑った。
過呼吸寸前になるくらい笑ったのは覚えている。
周りからは、「そんなに面白いか?」と疑問に思われたかもしれないが、私にはツボだったのだ。
そんな私の笑いのツボを見事に突いてきたハットリスが、今年発売予定のNintendo Switch用ソフト「テトリスフォーエバー」に収録されるという。
ハットリスは、おそらく今遊んでも微妙だろう。
だが、本家テトリスやボンブリス、バトル外伝などは、今でも楽しく遊べるだろうし、機会があればぜひ触れてみたい。
最後に一応言っておくが、私はハットリスが好きだ。
こういった怪作ゲームに出会った時にしか得られない、独特の心の栄養素があると思っている。
次の怪作との出会いを、私は今か今かと待ちわびている。
完
※追記
改めてハットリスのBGMを聴いてみましたが、結構よかったです。
ツカカカッカッ