ハムスターに感化される売れない芸人の話 8.親離れ
生後十七日目
サイトにも依るが、
出産後3週間を過ぎたら親子、もしくは男女を別ケージで飼うことが推奨されている。
生後1か月ほどで繁殖機能を有するので、親子兄弟でもその数を増やしてしまう恐れがあるためだ。
親離れの時期が近づいている。
ハムスターの親離れは、今生の別れだ。
現在子供たちは成長し、自力で餌が食べられるようになったとはいえ、
まだ動き回る親の乳房に必死で食らいつき、差し詰めショルダーバッグのように過ごす姿を未だ我々に見せる彼らが、
近いうちに二度と親と会えなくなるのである。
ハムスターの記憶力は決して良いとは言えない。
最小の種類であるロボロフスキーは尚更。
給餌する僕の手にも、なんだこの大きな生物は、この世の終わりだ、みたいな顔で硬直、もしくは生存を懸けた全力疾走する姿を見せてくれる。
そんな時もあれば、餌をくれるやつだと伺う様な様子で近づいてくることもある。
果たしてこの子たちは親と離れた後、親と離れたという認識を持ち続けるのだろうか。
親に会いたいという気持ちは生まれるのか。
子に会いたいという気持ちは生まれるのか。
良いことか悪いことかは、各々の事情があるが、
僕らは親のことを忘れない。
そして存命であれば会うことが出来る。
コロナ禍で里帰りが推奨されないご時世だ。
ふと、あと何回親の顔を見るのだろうかと数えてしまう。
ハムスターは親を忘れてしまうかもしれない。
僕らは忘れられない。
親も忘れられない。
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