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14ひきのシベリア鉄道1 〜 家出する刺身 (2022.7.9)

↑↑前回のおはなし


さて、長い前置きを経てようやく本編に入る。

二週間と少しの旅、こんなにこまめに大移動をするのは初めてのことで何を用意したらいいものかわからないまま当日になった。

ペテルブルク出発

ペテルブルクを出発するのは9日の深夜2時頃。実質8日の続きみたいなものだ。

私がモスクワに行く時は、たいてい夜行で向かう。それも、ゆっくり準備ができるので終電…と呼んでいいのかわからないけれど、2時過ぎの電車に乗る。

普段はラドガ駅から2時4分発、これが夜行では多分最終で、この後は早朝からサプサンが続く。

7月は大学生も休みに入るし人々の移動が多いのか何なのか理由はわからないけど、このいつもの列車とは別にモスクワ駅からも2時10分発という電車があった。

モスクワ駅の方が家から近いので迷うことなくそっちにした。

当日、思わぬ事態でこの選択に感謝することとなった。

珍しく早めに準備を終えて歩いていけるほどだったが、荷物が重いのでタクシーを呼ぶことにした。

ら…なんと、529Р(約1200円)。いつもなら倍以上の距離のラドガ駅でももう少し安い。

金曜の白夜のせいかタクシーが足りず、値段が高騰していた。

高い、高すぎる…一昔前なら空港にだって行ける値段だ。

もやもやしながら少しでも安くなることを期待して、結局カザン聖堂まで歩いたところでタクシーを呼んだ。451Р(約1000円)とほとんど安くはならなかったが時間と値段を考えたらここらで手を打つしかない。さっそく悲しい。

しかし気が効く運転手に当たり、最短距離でいい位置に車をつけてくれたので、荷物を抱えて歩く距離はその後ほとんど発生せず、よかった。

そんなわけで無事、私にしてはかなりの余裕を持って到着した。

最後までマクドナルドとして営業していたモスクワ駅のвкусно и точкаは看板は外されずに豪快に白いビニールに包まれており、変な光景だった。

手が空いてないので何も買わず真っ直ぐ電車に乗り込んだ。

ホームは1番端っこ。

研修の人なのかバイトなのか、これまでにない若さの人にパスポートのチェックをされる。

パスポートの番号が違うけどいいよ乗って!と言われる。え?いいの…?こういったコントロールはロシアはかなり厳しいので面食らった。

あと、パスポートの番号が間違ってる可能性というのはかなり低いはずなので困惑した。何故なら事前にアプリに登録してあって、もう十何回もその情報を使って購入して問題になったことがないから。

とりあえずいいらしいので、乗った。

ロシアの長距離寝台は乗ってから再度パスポートチェックがある。今度はまためちゃめちゃ若いバイトリーダーみたいな男性が来た。パスポートの番号は因みに、結局合っていた。さっきのは何だったんだ…

乗組員や車掌的な人も若いが、周りの乗客もかなり若いし女性ばかりだった。

私の中でプラッツカルトといえば上段に収まりきらないおじさんやお兄さんの半ケツか通路に突き出した足を眺めるのがお決まりになっていたので、不思議な感覚だった。(ロシアの男性の屈んだ姿勢の時のズボンの半ケツ率は異常)

2時すぎという遅い時間出発だったが年齢層が低めなせいか結構長い間賑わっていたように思う。

私はいつも通り入口通路側のお気に入りの53で就寝。

午前5時半頃、目覚める。

ノブゴロドを少し過ぎたあたり、オクロフカ駅。

ふとホームを見るとベンチとゴミ箱にРЖДの文字が切り抜きになっている!


ひとしきり眺めて、また寝る。

次に目覚めたのはモスクワ州はアンドレエフカ、もうすぐ到着。

いつものことながら数分で突然都市っぽくなる。

モスクワ到着

ついたが、電車から降りるや否や荷物が重すぎて何もやる気が起こらない。

今回一緒に旅に出る旅の同行人がレニングラード駅まで来てくれたので合流し、カザン駅の横らへんにある施設を案内してもらい、昔ながら(私のイメージ)のフードコートでフォーを食べる。




汁が妙に甘いけれど、分量は十分なので許す。

スーパーなどでおやつやラーメンなどを調達し、いよいよ駅へ。

シベリア鉄道本線はヤロスラヴ駅発だが、今回はカザンに寄るのでカザン駅に向かう。

今回は見るだけのヤロスラヴ駅


レニングラード駅から見たカザン駅(左)
近寄ったカザン駅


カザン駅に入るのは初めて。外側も美しいし、中も美しい。

高さ…!


ホームは少しこじんまりとしている印象を受けた。屋根があるから?

旅を控える人々を眺めるだけでも楽しい。


ホームに抜けてからはそうでもなかったが、入口はかなり混雑していた。

あるいは、そう感じるのは普段人の少ない夜中にしか乗らないからかもしれない。

食堂車を発見。偶然、聞かずとも場所を把握できた。

今回は16時38分発。

またもや若い人が多い。それも、少年たち。

とんでもなく賑やかで、出発前も出発後もワイワイザワザワ。

夏休みだろうか。

兵役なのかなんなのか、お見送りの少年2人が動き出す電車の横で敬礼しながらいい笑顔で行進していた。

普段なら微笑ましいだろうが、何とも言えない気持ちになった。

彼らはこれから、どこに行くのだろうか。


モスクワ〜カザン


ペテルブルク〜モスクワ間はほとんどインターネットが使えるけど、モスクワからカザンに向かう路線ではわずか数分で消え去った…

モスクワ州クラスコヴォ

景色はペテルブルク〜モスクワ間と基本的に似たようなものだった。

乗車時間は12時間と少し。これもペテルブルク〜モスクワと大差がない。
いまひとつ実感はまだないが、いよいよ旅が始まった。

席は通路側上。いつもと反対、通路の突き当たりらへん。

下段は若いお姉さん。ひたすら動画を見ている。私が寝ても覚めても…

こんなに電波がないのにどうしてるんやろう。

コンパートメント側は子どもたちとお母さん。子どもたちはお姉さんと小さい妹。妹は小さいので振る舞いがやや自由めで、お姉さんもお姉さんとはいえまだ未就学児じゃなかろうか。

この子がまた朗らかというか大らかというか、感じのよい子だった。メガネの奥の目がキラキラしている。

小さな妹がお姉ちゃんの顔を文字通り踏んだり蹴ったりしても、あははと笑っている。何という懐の深さ!見習いたい。

20時前、ウラジミール州ヴェコフカ駅の夕日
ペテルブルグに比べてとても早い日没

いい時間になってきたので、先ほどチェックしていた食堂車に向かう。

赤を基調にした内装。テーブルには簀巻きみたいなランチョンマットがあった。

人も少なめで開放的なそこで夕陽を眺めながらロシア料理を堪能した。

サリャンカとボルシチ

白い美しい器に入ったオーソドックスなスープは雰囲気を差し引いても十分に美味しかった。

食後もしばらくそこで夕焼けに染まる空と、時々見える川を楽しんだ。

夕陽で背を燃やすダックスフント
木の精霊、雲の精霊がこっちを見ている
白いたくさんの花の正体が気になる
ムーロム近郊のオカ川
実際はもうちょっと柔らかい色だったはず…
21時過ぎ、随分暗くなってきた


席に戻ってゴロゴロしながら風景を眺める。

出発の時点ではあれほど騒がしかった若者たちは食事をして戻る頃にはぐっすりと寝静まっていた。

先ほどの小さなお姉ちゃんとは時々会話…というほどではないが目でやりとりをした。夜中にトイレに行って戻ってくると、何故かこの子は起きていて、その時もにっこりとこちらを見ていた。妹とお母さんはよく眠っていたが。

私ががっつり眠っている間にその家族は下車していて、朝起きると見知らぬ人が乗っていた。いや、さっきの家族も見知らぬ人ではあるのだが。

さて、いよいよ一つ目の寄り道都市、カザンへ降り立つ。



おまけ資料


ゴロゴロ動画①

ゴロゴロ動画②


食堂車のメニュー、英語あり。



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