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【消えた職業】タイピスト

私は長く京都府庁に勤めていたんですが、奈良女子大とかお茶の水を出た女性でもあの頃はタイピストになった、昭和初期は。部長も課長もタイプを使えないので、その能力を持っていた彼女らは特別扱いでした。お昼休みでも五分早く入る。課長がわざわざお昼休みを伝えに行くんですから。うちの課にいたのはハセさんという美人で、私はもう少年のように憧れた。(水上勉)(p.332)

山田詠美対談集 『メンアットワーク』

タイピストって懐かしい響きだ。確かにそういう職業があったのだった。エレベーターガールとか、バスの車掌さんとか、そういう職業が成り立つ余地があったのだ。優雅だったとさえ思える。

当時のタイピストのステータスって、今でいうとプログラマーとかウェブデザイナーみたいな感じなのだろうか。

20年ほど前に読んだビジネス書には、「英語とパソコンを使えるようになる必要はない。使えるやつを使えるようにな人間になれ」なんて景気のいいことが書いてあったが、あれを書いた方はその後どうされているのだろう。

パソコンができないと話にならないことになってもうずいぶんになるし、英語ができるなんて大したスキルじゃなくなるのも時間の問題だ。っていうか、もうなってる。

ともあれ、若い男性の憧れの的になるような、タイピストという花形職業が、かつてはあったのである。

そして今ある花形職業のうち、十年後に残っているのはいくつあるだろうか。

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