タイトルの意味はよくわからんがとにかくすごい小説だ【読書感想文】東山彰良『流』(2015)
国共内戦を取り上げた日本の娯楽小説で直木賞受賞、なんてもう二度とないだろうと思うので、ずっと気になっていたが、なかなか読む機会がないまま、10年くらい経ってしまった。
予想以上におもしろかった。
Audible 様々だ。
テーマ、文体、ストーリー、どれも個人的には直球ド真ん中だ。
でも、この作家がメジャーになりきれていないのもよく分かる。
ウ◯コネタで始まって、一番印象深いシーンがゴキ◯リの大群、そしてジジイやヤクザがわらわら出てくるんだもの。女子受けするわけがない。このご時世に何考えてんだ(笑)。
『魁!!男塾』とジャッキー・チェンの香港時代の映画を混ぜて、北方謙三がノベライズしたような感じだろうか。
でももちろんそれだけじゃない。そこにそこはかとなく、ではなく、わりとしっかりと、詩情が漂っているのである。
ちょっと詰め込み過ぎだけど、信頼できる筆力だ。
93点。
それより問題は続編だ。
去年発表された、本書の続編を含む短編集のタイトルが『わたしはわたしで』。
やる気あんのか。
ゲス極じゃないんだから。
自己啓発本じゃないんだから。
実際検索したら、東山さんのこの本より先に、バービーさんの本が引っかかったくらいだ。
著者ご本人のご意向なら、失礼なことを言って本当に申し訳ない。収録作のひとつのタイトルらしいから、それを推したかったのかもしれない。
でもでもこのタイトルじゃあ、『流』のファンには引っかからないでしょう。
『流』もタイトルとしてどうかと思うが(意味分からん)、インパクトはあった。印象には残る。
『瀛』とか『滬』とか『濤』とか、続編を匂わせ、前作のファンを「なぬっ?」と振り向かせるような、意味はわからんがさんずいでインパクトのある漢字ならいくらでもあったろうに。
あるいはむしろ『ワシが直木賞作家、東山彰良である!』くらいまで振り切ってもらってもよかった。権利問題はともかく、男性ファンを振り向かせることはできたはずだ。
もしかして、女性ファンを増やしたかったのだろうか。
どっちにしても、わたしは『わたしはわたしで』をきっと読むから。がんばってね(なぜか突然オネエ)。
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