見出し画像

グーグル翻訳、独日と独英、ときどき重訳【ドイツ語】niederlassen(J.R.R. トールキン『ホビットの冒険』)

Und so stehen sie da bis auf den heutigen Tag, ganz allein, wenn sich nicht ab und zu ein Vogel auf ihnen niederlässt; (p.64)
こうしてトロールたちは、今てもその場所にそのままの姿で、誰にもかまわれることなく、さびしくたたずんでいるのです。時おり飛んてきた鳥が、その上にとまって羽を休める時以外はね。

J.R.R. TOLKIEN / Der HOBBIT oder Hin und zurück (1937, 1965)

押しも押されぬファンタジーの名作の独訳版より。

13人のドワーフと1人のホビットを捕らえたトロールたちは、どうやって食べるか、切り刻むか潰すか、茹でるか冷やすか、それともマリネにするのか、を相談する。

そこにやってきた魔法使いガンダルフの機転によって、太陽の光を浴びたトロールたちは、そのまま石になってしまう。

『ホビットの冒険』は、トールキンが自分の子どもたちを楽しませるために作ったお話が元になっているそうだが、この「今でも……」の部分に、その名残がある。

つまりこの作品は小説ではなく、「今」と地続きの、血湧き肉躍る「おはなし」なのだ。

さて問題は、文末の動詞 niederlassen である。

グーグル翻訳で和訳すると「解決する」と表示される。

しかし独和辞書を調べてもそんな訳は載っていない。niederlassen は「座る」「(鳥などが降りてきて)止まる」「定住する」といった意味だ。

ここでピンとくる。

グーグル翻訳で英訳すると settle と表示される。この単語には「座らせる」「定住する」のほか「解決する」という意味もある。

以前グーグル翻訳を使った中国語の英訳について書いたことがあるが、つまりグーグル翻訳は、外国語を和訳しているフリをして(?)、いったん英訳したものを和訳、つまり勝手に重訳することがあるらしい。

翻訳の精度を上げるためなのかもしれないが、なんだか腑に落ちない話ではある。

なんかズルっこくない?

カニの甲羅を割って食べたあとで、それがカニカマだったと気付いた、みたいな。カニを獲りに行ってるフリをして、スーパーにカニカマを買いに行って、バックヤードで甲羅に詰め込んでサーブしているのだ。金返せ!つってもタダだし、みたいな。違うか。

いいなと思ったら応援しよう!