詩│逃亡
1.金色の雲
あの金色の雲まで
エスカレーターで上っていきたい
遠ざかっていく自分の街を
ぼんやりと眺めながら
棚に置かれた赤い夕焼けは
背の高い兄が掻っ攫っていく
誰にも邪魔されないところで
ぼんやりと腰を下ろしたい
カメラもうっかり置き忘れて
金縛りになった平面世界
空を見ていると息が漏れてしまう
あの金色の雲まで
エスカレーターで
運ばれていたい
2.北色の大地
地平線が街の灯りで燃えている
ここら一帯もうっすらと焦げついている
幻の自衛隊基地に
かつての自分の影
空は広かった
金縛りが続く中
北色の木枯らしが
マンモス団地の航空障害灯みたいな
期待を連れてやってくる
ほ、とまつれ
そうだ
北を目指そう
地球よりも遠い東北へ
カシオペアは冴え冴えしく
隣町までは二つの山
北風に立ち向かって
意気揚々と駆けていく
そうか
夜は冷えるのか
トンネルのない時代
知らない谷底で力尽きた
[ひとくちメモ]
夜も、北も、空も、人のいない土地は冷えますね。