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#175 佐藤竹善の魂 〜Spirit of Love〜「愛の覚悟」

今日は、ある一曲を紹介するだけの記事を書きたいと思います。僕がこの曲を知ったのは、先月つまり2025年1月です。この曲が発表されたのは1995年、30年前の曲になります。折しも、生まれて初めて書いた小説『Flow into time 〜時の燈台へ〜』が舞台とした年でした。



まずは曲紹介!

ではまず、その曲を紹介します。Sing Like Talking の『Spirit of Love』です。コロナ禍の2020年に配信のみの無観客で行われた公演「SING LIKE TALKING AP2020 Deliver You」での収録をご覧ください。

佐藤竹善さんとの出会い

Sing Like Talking のボーカル、佐藤竹善(さとう ちくぜん)さんとの出会いは、もう30年以上前になります。1992年、大好きな音楽家の谷村有美さんのラジオ番組へ竹善さんが乱入(ゲストではなく、スタジオの前を通りかかって乱入)した時の対話が最初でした。その日のラジオ録音を、今でも大切に聴いています。竹善さんは自分の音楽のルーツについて語ってくださいました。

竹善さんは青森は津軽地方の出身。音楽といえば民謡と演歌という環境で育ち、次に興味の対象となったのはゴスペルなどの黒人音楽でした。その音楽性の違いを、「後ノリをさらに後ろに持って行って、次の小節までずらしてしまうのが演歌的なアプローチ」と分かりやすく説明してくださいました。紹介した Spirit of Love も、まさに日本のポップスとゴスペルを融合させたような曲ですね。

音楽の力はどこから来る?

『Spirit of Love』を今週だけで100回くらい聴いたと思うのですが、「この曲の魅力とパワーはどこから来るのか?」について、少し思ったことがあります。それは、バンドとしての Sing Like Talking や、ボーカルの佐藤竹善さんの持つ力だけではないということ。音楽のルーツ、つまりゴスペルや津軽民謡が歴史的に育んできたパワーが全部こもっているように感じました。
 ジャズ・フュージョンサックス奏者の本多俊之さんは、「ジャンルは大切」とおっしゃっていたことがあります。「ジャンル」を「縛られる枠組み」として考えるのではなく、「そのジャンルが歴史的に育んできたものの力も受け継ぐ」と考えれば、腹に落ちます。昨年記事でコラボさせていただいた宮戸美晴さんの記事に、似たテーマ(音楽修辞学)がありました。クラシックの世界でも同じなのだろうと思います。伝統は、縛られるのではなく「力を頂く」ものでもあると思います。

歌詞の中の「ある一語」に惚れた!

僕自身は言語学や言語教育を専門とするので(とはいえ、仕事として携わっていた期間は音楽の方が長い……今はAI屋さんですが……)、どうしても歌詞に耳がいきます。そして、この曲の歌詞では「ある一語」に心を持っていかれました。その部分を紹介しますね。

The spirit of love
Will come and completely overtake you
空が少し近付いてくる
越えるときが来る

さて、この中で僕が心底痺れて、一週間で100回も聴きたくなる理由となった「ある一語」とはどれだと思いますか? 英語なのですが、訳語で理解するのが少し難しい語かもしれません。それは「overtake」です。なんと美しい言葉だろう、と思います。

英語の「overtake」はいろいろな意味を持ち、一般的には道路上で車を「追い抜く」という意味の動詞として使われます。会社の売上などが「他社を超える」の意味にもなりますが、もちろんこの歌詞ではその意味ではありません。辞書では、

to become greater in number, amount, or importance than something else

とありますが、その最後の部分、to become greater in importance than something else がここでの意味になります。説明するなら、「含まれる要素すべての動きが無力になるほどの力で対象を動かす」というような感じです。ただし、その手前の歌詞で come and とあるので、作詞者の藤田千章さん、Cat Gray さんはひょっとすると「追いついて、追い抜いてしまう」の意味でお使いになったのかもしれません。でもここはそうではなく、上の意味で理解すると、曲全体が一際輝くと思います。では「その心」を説明します。

*     *     *

愛における overtake って?

人間の感情は複雑で、愛し合っているはずの親子や夫婦、あるいは仲間同士の間にもいろいろな感情があると思います。尊敬や憧れのような温かい気持ちから、妬みや恨み、劣等感や罪悪感など、心にブレーキをかけてしまう感情もあるはずです。
 ちょうどディズニー映画『インサイド・ヘッド』のように、いろんな感情が渦巻いているのが人間だと思います。では、「愛」はその中の「一つの感情」なのでしょうか? この曲の歌詞は、「一つの感情」としての「愛」に対して、Spirit of Love「愛の魂」と歌ったのでしょうか。僕は、違うと思います。

この曲で歌われた「愛」とは、「すべてを overtake してしまうような存在」つまり、尊敬や憧れ、妬みや恨みと同列にある「愛」ではなく、それらの上位にまるで大きな屋根のように存在する「愛」を歌っているのだと思います。その「愛」が発動すれば、その傘の中に収まっているすべての感情が動きを合わせてしまう、そんな力を持った愛です。「尊敬や憧れ」の力が弱まり、「妬みや恨み」が強くなってしまった……そんな時でも、この歌の歌う「愛」が出てくれば、すべて「愛」の決定通りになる、そんな意味です。

僕はその解釈から、このタイトル Spirit of Love をもし日本語に訳すならば、「愛の魂」ではなく、「愛の覚悟」と訳します。映画『インサイド・ヘッド』流に言うならば、すべての感情の働きよりも上位となるスイッチがあり、それを動かせば全てがその決定に従う、そんなイメージです。人間が持ち得る最強の力なのではないでしょうか。うーん、そんな気持ちをくれたこの曲に感謝します!

さて、挑戦へ!

今このタイミングで、この曲に心奪われ、一週間で100回も聴くようになったのは、あるちょっとした挑戦を今始めようとしているからです。いつか note の場で発表できる日を楽しみにしています。そして同時に、もう少し気軽なことをホームグラウンドでやってみたくなりました。

🎵     🎵     🎵

Spirit of Love 演奏メンバー募集

この曲、素晴らしいですよね。僕は歌を歌うのはあまり得意ではないのですが、この曲を一緒に演奏してくれる人、いませんか? 僕は……ピアノを弾いてちょっとだけ歌って、あとは全体のまとめでしょうか。男女取り混ぜて10人ほどいると最高ですね。ゴスペル調が強いので、ピアノさえしっかり弾けば、ベースやドラムスといったリズム隊がいなくてもさまになり、手に持てるサイズの打楽器いくつかとフットストンプ(足踏みリズム)でいい感じにできそうです。

各自個人練習して、自撮り動画を撮影したものを共有、夏に日本でスタジオを借りて合わせる(=録画して note で公開!)というプランはどうでしょうか?

「興味あるよ!」という方は、下のリンクよりメッセージください✨ただ、この曲は Db major なのでフラット5つ、楽譜は読みづらいです(涙)また、佐藤竹善さんの声域は広く、一般の男性には厳しいので、音楽性を損なわないように配慮しながら、参加人数に合わせて男女の声域でうまくメロディを分担するようにアレンジします。よりゴスペル感が増すかもしれませんね。ワクワクします🎵

今日もお読みいただいて、ありがとうございました❤️
(2025年2月3日)

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ささきとおる🇳🇱50歳からの海外博士挑戦
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