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オーガニック野菜生産者グループ「篠山自然派」持続可能な有機農業を目指して

(読了目安6分)
篠山自然派は丹波篠山市で有機農業に従事する農業者やその支援者のグループです。

「環境にもヒトにも優しい農産物の生産を通して、循環型で持続可能な地域づくりを目指しています。農薬や化学肥料を使わない有機栽培、自然栽培を基本としています。」

篠山自然派ホームページより

副代表の酒井菊代さんは50年間、丹波篠山市で有機農業をされています。
お父様が立ち上げられた「丹南町有機農業実践会」を受け継ぎ、さらに2017年に「篠山自然派」を立ち上げられました。
今回は酒井さんにいろいろお話を伺いました。


酒井菊代さん

有機農業をはじめたきっかけは? 


 「長男が子どものころに入退院を繰り返して、その病院でアレルギーや喘息に苦しむ子どもを見て、父の有機農業を手伝うようになりました。

 元々実家は酪農を営んでいました。私は父の仕事を手伝うのが大変で「私は絶対農家にはなるまい」と保母の資格を習得。公務員の旦那と結婚し、安泰の生活を送っていました。

 1970年代の当時、農家が化学薬品や薬品をまくのは、ごく当たり前のことで皆やっていました。だけど、母は農薬を散布したあとは2〜3日寝込みました。そんな事があっても、農薬にだれも疑問を持っていなかったんです。
さらに、当時は高度経済期の影響で公害が発生し、その上ファストフードやファミレスが日本に次々でき始めて、環境も食文化も大きく変化した時代でした。
そうしていると、これまでになかった喘息やアトピー病気で苦しむ子どもが増えて「何かおかしい」と原因を探る方が多かったんです。

 そして、それは農薬が原因なのではないかという小児科の先生がいらっしゃって、その先生の下に集まっていたお母さん方が、「安全な食べ物がほしい!農家に頼みに行こう!」という話になっていたそうで、ある時開かれた講演会に、そのお母さん方と私の父が参加しました。私の父は酪農の糞尿の処理の問題を解消するために、堆肥を作ろうと思っていたころでして。結果それが有機農業の始まりになるんですが、その当時は「有機」なんて言葉すらなく、父も知りませんでした。そのお母さん方が「農薬を使わない野菜を探している」と、父と連絡先を交換したことが始まりです。


 その話を聞いて「父のやっていることはすごいんだ」と直感的に思いました。そのころ、私は長男の入退院で私は保母の仕事を退職していました。そこで、アトピーで掻きむしって血だらけになっている、よそのお子さんを見て、食べ物の安全の重要性を感じて、私も父と一緒に有機農業をちょっとずつ始めることにしました。

 そこからそのお母さん方への野菜の定期便が始まり、昨年まで続きました。(なんと50年以上!)
「絶対に農薬と化学肥料を使いません」と私たちが言ったら、向こうは

どれだけ、野菜に穴が開いてても形がいびつでも、全量引き取る。」と言ってくれて。それが私たちの約束でした。

 毎回7〜8種類の野菜と、手書きのお便りを添えて。育てるときの苦労やレシピを書いて、「美味しいうちに、キチンと食べてくさい。」という事を伝えていました。私が作る野菜で食卓ができるという責任感がありました。「菊代ちゃんのつくる野菜だから買う」と言ってもらえるのが誇らしかったです。

さともんの鈴木代表と。

菊代さんは今何を育てていらっしゃいますか? 

 酒井さんは現在、約140aの農地で水稲を70a、残りは丹波黒枝豆(黒大豆)、タマネギ、人参、 トマト、ドイツ瓜等々、40~50品目をすべて有機栽培されています。
「特にウリ系が好きです。ウリといってもいろんな種類があっておもしろい。ドイツうり、梨瓜、韓国かぼちゃ、エビスかぼちゃ、冬瓜やかぼちゃ、最近はNHK朝ドラ「ちむどんどん」の影響で沖縄のモーウイという種類を植えました。すごく大きくて大根とウリの間のような食感で。実ができたときは白いんやけど、収穫するころには焦げたような色になる。おもしろいでしょ。ウリ類は蜂などの虫に交配されないように、畑の中であえて分散して作っています。

 たくさんの種類をつくるのはリスク管理でもあります。単種だと病気になったときに蔓延して全部だめになってしまう。そしていろんな種類を植える事で勉強にもなります。」

モーウイ | くゎっちーおきなわ!沖縄食材情報サイト (kuwachii-okinawa.com)

篠山自然派の発足

 2017年、酒井さんらによって『篠山自然派』が発足。有機農家同士が情報を交換したり、新しく農業を始めたい人の相談に乗る機会が作られました。最近でこそ、LINEを使うになりましたが、発足当初からずっと、酒井さんは各会員宛てに手書きの手紙をだし、例会参加を促してきました。現在は、20代から70代までの有機農家や飲食店の経営者、地域おこし協力隊など、73名がメンバーとして所属されています。月に1回例会を開催し、有機農家の情報交換を行っています。

 8月の例会ではお茶農家や養蜂家、カフェを営む方など全員で約30名ほどが集まりました。会が始まると、ほんわかした雰囲気から一転、真剣な雰囲気に切り替わります。

 学校給食への有機野菜の普及や丹波篠山市でのイベントの情報、レストランなどの飲食店への卸しの共有など、内容は多岐にわたります。学校給食は以前の記事で紹介した中末農園の中末智己さんの担当です。それぞれ市や店舗との連携に担当がつき、問題点はみんなで話合います。

 「一人ひとりそれぞれのやり方を持っているのが有機農家。一緒じゃないといかんという感じはない。いろんな意見があって面白い。夫婦で登録していても一人ひとりが意見を持っているから、名前もきちんとそれぞれ記名します。」と酒井さん。

子ども達に野菜を食べて感じてほしいことは?

 「難しいことは何も言えないんだけど。子ども達に野菜の話をするときは、人参の種と根と葉が付いた人参をもっていくの。種から人参のいい匂いがするよ。花が咲くころは花も持っていく。
 
それを見せながら、『みんなに食べてもらおうと思って人参になるんじゃないのよ。種から育って花が咲いて来年も人参になろうと思ってなっている。みんなはその一番いい時に食べているけど、みんなのために人参があるのじゃないのよ。そう思って食べなきゃだめよ。「美味しい」って思ったら人参さんが「よかった」と思って身体に栄養を残してくれるのよ』って。

みんなが生まれてきたのもそうよ。だから、そうやっていいものを食べたら、いい子になっていい頭になるんだよ。』と言います。そうしたら、給食の後、みんな私のところに寄ってきて「おいしかった!おいしかった!と言ってくれます。」

中末さんの人参。絵本で出てくるような葉つきのニンジンに息子も大喜びでした。

園児が芋ほりに行くと、ツルや葉は全部きれいに切り取られているでしょ。だからどうやったら芋ができるか知らない。せっかくの芋ほりなんだから理科の授業とかで取り上げたらいいのになと思う。だから、私が話すときはできるだけ全部の部分を持っていく。時間はかかるけど、そうやってすることで、子どもたちに『いただく事の大切さ』が伝わると思うから。」

 絵本からではなく本物から学ぶ事の大切さ。私も、実際に中末農園の畑を見せていただいたときに、里芋やゴボウなど身近な野菜なはずなのに、葉を見て何の野菜か全く分かりませんでした。私は自分の息子に何ができるかを考えさせられました。

酒井さんは現在4世代、10~92歳のご家族で住まわれている。
「わちゃわちゃしてるよ。笑。お米と野菜が美味しいから調味料が少しでいいですね、って嫁も言うてくれる。孫の代までいい種を引き継ぎたいね。やっぱり種が大事よ。次の世代の野菜を育てるためには輸入ものじゃなくて、残せる種は残したい。それは重要な作業だね。

 篠山自然派は、月に1回は丹波篠山のトヨタカローラで直売会を実施。
野菜や加工品、スイーツやお弁当が並び、生産者さんと直に話すことができます。(Facebook「篠山自然派」で最新の情報が習得できます。)
「自然派の活動はそれぞれに任せている。手の足りないところは私がするけど、このままの流れで続けていきたい。」

50年有機野菜を作り続けてきた酒井さんが想う『有機』の本質

 日本はアトピーを治すために子どもに野菜をというけれど、本当は違うと思うんよね。『土を守るために』私は作ることになったって、勉強してきたから言える。この土が守られているから、あなたたちが食べている野菜は安心ですと言える。 地球の環境問題を考えたときに、野菜に繋がることが当たり前になっているのがヨーロッパの考え方やね。それは、私自身がいろんな人と話して、いらない事もやってきて学んできたから分かったことです。だけど、その思考を広めていくには日本はまだまだ遅れているのよね。教育を巻き込むとより複雑になってしまうの。だから今日も私は畑の隅で種をまき続けるの。

取材あとがき


 中末さんのお話、そして酒井さんからお話を伺って、自分の中で漠然としてい有機野菜のイメージや自分が食べているものを作っている農家さんへの感謝の想いが深くなりました。特に、お2人とも『土を守る』と仰っていいたことが印象的で、私にとっては新しい発見でした。激動の時代を生きぬかれ、野菜を通して人々に活力を与えられてきたお2人の話は、力強い情熱と誇りを感じ、篠来たるを通じてよりたくさんの人にこの想いが伝えることが私の使命だなと実感いたしました。 


篠来たるホームページ


今年度募集の特典として、年払いを選択していただいた方には
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想いと販売内容を読んでいただいた後に、販売ページに移動できます。

篠来たる販売サイト

直接のご購入はこちらのURLから。
※2024年度の募集は10月から9月までの1年間です
※先着15名です
※農業の端境期である3~4月は野菜が不足するため、オーガニック野菜の代わりに丹波篠山ならではをお届の加工品をお届けします。

 


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