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書評 イノベーティブをかなえる組織

山口周さんは本業は、組織改革のコンサルタントです。
そんな方の組織論のご著書を紹介いたします。
『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』

個人ではすごい実績の紹介

「日本人はイノベーティブでない。」への反論です。
・自然科学におけるノーベル賞数、1945年〜4位。2001年〜2位。
・黒澤明監督『羅生門』 1951年の公開でグランプリ、さらに1982年で行われた過去50年の中でも、なんと「グランプリ of グランプリ」
・近年2012年全世界358人の映画監督による「最高の映画」で、
小津安二郎監督「東京物語」が1位。
※以下。「2001年宇宙の旅」「市民ケーン」「81/2」「タクシードライバー」
・美術(浮世絵)の世界的影響
・アニメ、漫画の世界的影響
・桂離宮のすごみ、フランス国立近代美術館の坂茂

イノベーションのための「新参者」

The Beatles(リヴァプール)・ルネサンス(フィレンツェ)・ダーウィン(地質学者)・・・「異分野の知の融合が新しい知の創発を促す」

多様性とは・・・「属性」でなく「意見(思考・感性)」の多様性を

組織が個人をダメにする
権力格差とは・・・「偉い人の言うことに従う、反論しない指標」日本上位
※「危ないと思ったら自らまず動け」あるいは「有事は権威に盲従せず、自分の頭で考え、本物のリーダーに従え」のJAWSと、反対のGOZZILA
※偉い人の言うこと・メディアの言うことを信じ続ける日本

イノベーションに相応しくない日本の社風・人口構造
積極的に下位の人のフィードバックを求められるか(聞き耳のリーダー)

創造性は、報酬(特に予告された)は、逆効果
衛生動機・自発的動機・内発的動機→これこそ想像力の源
もう一つの動機 親和動機・パワー動機・達成動機→これこそ想像力の源

人事の落とし穴:よくできた優等生に、よくできた仕事を。
仕事の種類(課題解決 or 好奇心駆動)によったバランスある人事を

イノベーションのための「目利き」

・電話機なんて売れません・・当時全米一のウェスタンユニオン社
・iPhoneを欲せたか・・消費者はイノベーションを見抜けない
・ハリーポッターの苦労
・The Beatlesの勘当 EMIに出会う前

「拾う神、捨てる神」の重要性・・・ネットワークの密度で損失を防げ

場作り、制度作り・・
3M社の「15%ルール」(遊び)と「新製品で売上シェアの40%目標」(規律)
※反転する日本・・業務に遊びはなく、人事に温情あり(規律なし)

「なんか分からなけど、凄いところにたどり着きそう」
=野生の思考「ブリコラージュ」(物を持ち帰る態度)
合理的な解は、他社と同じ回答になる上、スピードも遅くなる
思い入れを持った個人がいて、平均9.2年かかる開発〜事業化
→最適な決め方はない。けれど「決め方の決め方」は見出せる。

ケネディの例
1 仲良し集団による忌憚ある意見
2 外部からの孤立
3 リーダーシップ みんなそっちを見てしまう
4 ストレスから解放されたい
※詳しくは本書へ

ここから、「良い結論は、メンバーのリテラシーでもリーダーでもなく、決め方で左右される」ことがわかります。

リーダーの役目
論理で判断できない、論理で整理できない例外事項について意思決定する。

ここまで踏まえて・・・
それでも筆者は、リーダー(ヒーロー)に頼らない、集合的意思決定の可能性をもう一度探ります。

集団的知性
多様性 ・ 独立性 ・ 分散性(独自の情報収集)・集約性(まとめ) 

コンドルセの法則 または コンドルセの陪審定理
「集合での判断で、正解率は上がっていく」
※6つの前提
上の4つに加えて、解にとって必要情報・解自体の存在の計6つ

人口予測すらできないエキスパート
ミリオネア「オーディエンス」の正解率、とその背景

イノベーションのための「リーダーシップ」

最適なリーダーは文脈で決まる
※筆者「進化論的に言えば当たり前でしたが、確かに・・」

6つのスタイル 「船を作る」
・指示命令  木を切ってきさせる
・ビジョン  海へ行く情熱を駆り立てる
・関係重視  「お父様もお母様も誇りに思うはずです」
・民主    「みんなどういう船がいいか教えてくれ!」
・率先垂範  自ら率先して作り出す
・育成    まず座学から始めよう

世界のイノベーティブな会社では、ビジョン型が最も高く、率先垂範が最も低くなっています。
日本では、率先垂範型が最も高く、ビジョン型が最も低くなっています。

その背景
1989年・・世界の時価総額ランクTOP30の内、21が日本企業!
それまでアメリカを追っかけていれば良かっただけだった為、ここで路頭に迷います。

処方箋
「共感」を得られるビジョンを打ちたてよ!
・where 視覚に訴えるヴィヴィッドな未来を、突き詰めて価値を考えよ
・why 「なんで動かなきゃいけないの?」を納得させる
・how 「こうやったらうまくいきそうだ」を示す

本題:イノベーティブな組織の作り方(まとめ)

人材採用
新卒一括採用=類似性バイアス
SPIで特性が浮かび上がるか?
面接で問うのは・・
「新しいアイディアの情熱、創造性、人と違う考えをしてきた実績」

人材育成
常に自分の意見を口に出すように・・システムに出力する
シニアに人の意見を求めるように、心の内を探索するスキルを

人材登用
1 キャリアをデザインする登用・・・
キャリアのどの段階で、どのような経験をさせ、そこから何を学習させるか
一所懸命にしない登用を
2 適正と仕事のマッチング
「動機の違い・どのような状況下で成果を出せるか」を考慮した割り振りを

評価・報酬システム
MBOでいい場合と、ダメな場合。
イノベーション部では、予定調和的な評価軸では悪影響です。
数年の時間軸を設けたり、プロセスでなく能力をベースにした評価にしたりするべきでしょう。
もしくは評価を保留するのも手です。

人参がイノベーション人材には不要、むしろ悪影響であることは前述の通りですが、彼らが欲しいのは面白い仕事とそれをやる環境です。

以上、まとめとなります。
お読みいただきありがとうございました!
佐々木真吾

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