カードゲームを自作するうえで大事なこと4つ
カードゲームをつくる。その前に
どうも、音ゲーもボードゲームも好きなSasakiです。この記事は某所で2017年に書いた記事の完全リライト版になります。コピペしていないどころかグレードアップもしているので読んだことある人も読んでみてね。
早速ですが、僕は昔カードを使ったテーブルゲームを一人で作った事があって、しかも現在でも購入できたりするんです。販売委託してないので、買うと僕の家から手作業で送られます(微労働)。
敢えてこの場では作ったゲームの内容には触れませんが、いずれ記事になるので・・・。
そんなわけで、どういう風にゲームを作っていこうだとか、どうすればルールを理解してもらえるか等々、ゲームを作るということを研究していた時期がありました。その中でも実際にカードを発行して新しいゲームを作る前に、既に世の中に存在するゲームを実際にやってみて「なにが楽しいのか」「どうやってゲームが進むのか」「ユーザーはそれをどう受け止めるのか」。そういった疑問を解き明かしつつぶち当たった問題について書いていこうと思うので、これからゲームを作りたいって人は参考にしてみてください。
『ハートオブクラウン』をやってみる
実際にあるゲームといっても色々な種類のゲームがあるわけですが、作ったゲームの方向性に似ている『ハートオブクラウン』(FLIPFLOPs制作)を選んでプレイしてみました。(実際のところ、研究とかそっちのけで熱狂しちゃったわけですが・・・)
それにしても、ただ一緒にプレイしてくれる人を集めるだけでは意味がなくて、プレイに対して的確なフィードバックが必要なわけです。なので一般的な人より芸術やデザインを学問として学習していて、且つそういった方向に造詣のある芸大生の友人男女数名を招聘してゲームプレイに取り組みました。
『ハートオブクラウン』のルールに関してそんなに突っ込まないので、もし知りたい場合は上記サイトに飛んだりして調べてみてね。というか買ってプレイしてみてね!!!
というわけで、この『ハートオブクラウン』(通称ハトクラ)を使ってカードゲームを作るときに考えなければならないこと4つを解説していきます。
その1 初見の時の情報量を考える
『ハートオブクラウン』は大きく見れば「カードゲーム」ですが、細分化すると「デッキ構築型カードゲーム」に分類されます。一般にカードゲームとして認識される「トレーディングカードゲーム」とは違って使用するカードがあらかじめ用意されていて、それらを使って遊ぶタイプのゲームです。『ドミニオン』がパイオニアでしょうか。
なので使用するカードの枚数はかなり膨大で、ゲームプレイに際して用意される盤面はこんな感じになります。
自分の「初期デッキ」(手前の束)。左側の「ランダムマーケット」。右側の「固定マーケットとプリンセスカード」。
これを見て「楽しそうかも!」そう思ったあなたは相当訓練されています。もっと色々なゲームをやってみて知見を深めて欲しいです。
実際にこうやって用意して一緒にやろうと誘った男女数人に呼びかけたところ、一人の友人は、
こう答えてくれました。
『ハートオブクラウン』の初期セットの総数は300枚。もちろん一つのゲームですべて使うわけでもなければ、同名カードも合わせての枚数でもあるので単純比較はできませんが、トランプの54枚の約6倍。トランプもだいたい同じ意味のカードが入ってたりするので、とても多いと言えます。
とどのつまり、一般的に見てこの情報量はかなり多いと言えます。情報量が多いとなにが起こるかと言うと、初心者のプレイ意欲を削いでしまうんです。
最終的に覚えることの量やゲームの楽しさに関わらず、初見時に入ってくる情報量の多さ(特に文字量)が、取っつきやすさに関わってくるということです。
新規の(カード)ゲームを作るなら、初心者への門戸は広くないといけません。
カードが多い事がダメだ!と言っているわけではありません。そんなことを言ってしまったら『MtG』や『遊戯王』がヒットしている理由を説明できませんから。
じゃあ逆に情報量(文字量)が少ないゲームってなんだっていうと、ボードゲームの『カタン』です。ドイツ生まれの最強のボードゲームと言っても過言ではないゲームなわけですが、やったことが無い人は今すぐやってください。
人が風景を見て情報量が多いと感じることは稀です。風景とは認識できる言語とは違うため、読解する力を使わなくていいからです。
それと同じで『カタン』をプレイする時に盤面にある情報は、盤に書かれたカタン島と数字のみ。先ほどの例より大幅に情報量が少ないことが伺えます。
『カタン』をプレイしていたらわかることですが、「発展カードの使い方」だとか「開拓地の効率的な置き方」だとか、のちのち覚えた方がよいものはあるにせよ、いかんせん初見時の情報量が少ないおかげでかなり取っつきやすい印象を受けます。
これが、ゲームを作るとき第一に考えなければならない事象「情報量は多いか?少ないか?」です。ゲームの方向性に依存しがちな問題ですが、一度は考えるべきものとみて差し支えないでしょう。
その2 ゲーム中の動作について考える
初見時の情報量の多さを乗り越えた好奇心旺盛な若者たちにも、まだまだ試練は降り注ぎます。次はゲームをプレイする際の動作について考えます。
先ほどの『カタン』を例に取って考えてみましょう。
『カタン』はサイコロを振ったり駒を配置するボードゲームです。
なのでゲームの進め方としては、以下のようになります。
「駒を手に持ってプレイヤー自身が盤面に置く」という動作は物理的動作に他なりません。盤面を見ればこれまで置いてきた駒がそのままあるわけですから、一目で状況や点数が分かるわけです。
対して『ハートオブクラウン』ひいては「カードゲーム」はどうでしょうか?
カードゲームの進め方として一般的なものは以下のようになります。
これは一体なんなのかというと、特殊効果の処理・実行・解決は物理的動作ではなく精神的動作だということです。
つまりゲームの中の文字量が多いということは、プレイヤーに対して多くの精神的動作を強いるため、その文字の多さに比例してゲーム理解の速度も落ちるし、理解が遅いとプレイを諦めて離れてしまう可能性があるということです。
その点『UNO』はほとんど文字が入ってなくてすげぇよなってなるわけなんですが、無かったら無かったで困ることも多く、例えば『UNO』をプレイしているときにこんな発言が飛び交った経験ないですか?
答えは「NO」(引いたプレイヤーの次のプレイヤーから再開)なわけですが、これはルールブックに記載されています。
記載されてるんですが、プレイするときに律儀に説明書を携えてルールを理解している人がどれくらいいるかと言うと、そんな人はプレイヤー人口で見ても一握りしかいないと思います。
ならどうなっていればいいかと言うと、ぶっちゃければカードに書いてあればいいんです。これはテキストを記載する利点です。
しかし『UNO』にテキストが書かれていないのは、「カードの上下を気にしなくてもよいように」だとか「グローバルな販売を考慮している」等が関わっているんだと思います。
だから、上記の事象も鑑みて自分が作りたいゲームに文章が必要だとするならば、わかりやすい文章を書けば良いとも取れるわけです。
文章がルール理解を鈍化させる可能性は否定できませんが、「カードを1枚引く」なんて文章は誰が見てもわかります。なので簡潔な短文なら載せるべきです。
これがカードゲームを作るとき、第二に考えるべき事象「テキストの量はどれくらいか?それに付随する精神的動作はどれくらいか?」です。
これは作り手の工夫で良くも悪くもなる重要なファクターであります。素晴らしいクオリティのカードゲームを作りたいならかなり作り込むべき要素でしょう。
次の項では実際に『ハートオブクラウン』をやっていて起こった「テキストの問題」について記述します。
その3 特殊効果のわかりやすさ・有用性を考える
先ほどカードに書かれたテキストを「特殊効果」と呼びましたが、これはカードゲームの真髄でもあります。これがあるおかげで、相手の盤面を崩したり、自分の布陣を強化できたりするわけです。さっきはテキストのこと悪く言ってごめんね〜。
そんなわけで『ハートオブクラウン』には「プリンセスカード」という種類のカードがあります。ゲーム中1回しか購入できない特殊なカードで、勝利に関わる大事な相棒です。(姫を購入とは・・・?)
そのうちの一人(二人か)「双子の姫 レイン&シオン」を見てみましょう。
このテキストを見た友人一行の頭の上には「?」が浮かんでいました。ガチで。
Xとはなんなのか?カウンターとはなんなのか?追加のターンとは?
そんな感じでした。
話は逸れますが、僕が好きな『MtG』のカードのひとつに「Time Walk」というカードがあります。
このカードは、カードゲーム創世記(MtG創世記ではありません)に作られた最強カード群「パワー9」のうちの1枚で、くそ強いカードです。どうでもよいですが、この不気味なイラスト、ぞくぞくしますよねぇ。大好きです。
さらに余談ですが、カードゲーム創世記に作られた&くそ強いカードというのが相まって骨董品レベルに高額で取引されます。
・・・まあ何が言いたいのかというと、ターン制ゲームにおいて追加ターンは鬼強いってことです。このカードはその事実が判明する前に印刷されたので常軌を逸した強さなんです。
ポケモンで相手を怯ませるのってめちゃ強いでしょ?追加ターンなんてあったらバランス崩壊でしょうねきっと・・・
話を戻してまとめると、カードゲームに馴染みの無い人からすれば、カードゲームで代数を使うとか、ゲーム外サプライを使うとか、追加ターンが強いなんてことは分かんないということです。
これはカードゲーム経験者である自分含め全員が陥りやすい罠で、「トークンやコイントスを使うことがある」だとか「追加ターンは強い」といった常識のように思えたことがうまく伝えられないことがあるのです。
また『カタン』と比較してしまいますが、「10点取れば勝ちというルールの中で開拓地を作ると1点もらえる」という事実は勝利に直結していると直感で理解できます。
しかし追加ターンはどうでしょうか。追加ターンに有用性を求めるならば「追加ターンを行うまでの流れ」「相手の動き」「追加ターンを使って得られる恩恵」等々を考えた結果勝利に近づく・・・という少々回りくどいともとれる思考(=精神的動作)が必要になるわけです。なので初見で能力を理解しにくいんです。
ちなみに、デュエマを昔やっていたという友人にレイン&シオンについて問われた時、咄嗟に
と返したら、ひどく納得してくれました。ボルバルザークは偉大です。
(実際には特殊効果は全然違うんですが・・・)
これがカードゲームを作るとき、第三に考えるべき事象「テキストはわかりやすいか?その特殊効果はゲームにおいて有効に働くか?」です。
一般的に山札からカードを引いたり、追加ターンが貰えることはゲームで有効に働きます。それをどう伝えるかが鍵となるわけです。
また、上記のような特殊効果は一般的なカードゲームではありふれたものです。
どのように他のゲームと差別化を図り、その独自要素をゲームで有効に働かせるか。そういった「特色づけ」の側面もはらんだ課題と言えるでしょう。
その4 ゲームに臨むプレイヤーを考える
これまではルールやゲームデザインについて書いてきましたが、最後はゲームをしているプレイヤーに考えを寄せてみましょう。
僕の考えた理想のプレイヤー像は以下の通りです。
この2点です。当たり前じゃんアゼルバイジャン🇦🇿。
そう思ったあなた、まだまだ甘いですよ。
これはつまりどういうことかというと、例えば二人で戦うカードゲームがあるとします。自分の手番はもちろん自分が盤面を展開するわけですが、
相手のターン中はどうしますか?暇だからスマホでもいじりますか?
そんなわけにはいかないでしょう。
これは『遊戯王』などの1対1で行われるカードゲームによくある傾向ですが、相手の手番でも自分が行動しなければならないことがあります。それは「自分が張ったトラップの発動」だったり、相手がした行動に対して「この行動はトラップにかからず成立しますよね?」という問いかけに対する返事だったりします。
この「相手ターン中にしなければならないこと」があるおかげでゲーム全体の緊張感が高まるので、集中力が高まったり、相手に不快感を与えないようにしようという思いやりが生まれたりするわけです。
しかしこれが悪い結果として「1ターンに使用する時間の肥大化」を招いたりするわけで、公式なバトルの場では「制限時間」が設けられたりして、素早いプレイが求められます。(用意したルールのしわ寄せをユーザーの努力に託すのは疑問符がつきますが・・・面白さの向上に付随して生まれた結果なので仕方ない点もありますね)
話を『ハートオブクラウン』に戻してみると、このカードゲームは相手のターンにできることがかなり少ないです。その割に自分の手番に考えることがかなり多く、プレイヤー数は4人も居ます。なので相手の手番ではぶっちゃけ暇です。
プレイしてくれた友人の中にも、自分の手番以外で外野の友人と喋ったり、スマホを触ってしまうといった様子が伺えたので、これははっきり言って悪い点です。しかしながらこれはテーブルゲーム。賞金や世界大会出場がかかった大試合というわけでもないので、音楽をかけながらやったり、多少関係ない話で盛り上がっても良いとは思います。
しかしながら、自分以外の手番でゲームに集中していないということは、その分だけルールや盤面の理解が遅くなったり、そんな状態で自分に影響のある攻撃カードを使われたら、また一から状況を説明して・・・と、時間も無駄に消費してしまいます。
そしてなにより、呆けてしまっているプレイヤーは真剣にプレイしているプレイヤーから見ると、その真偽に関わらず腹が立ってしまうものなんです。
『人狼』で初心者が考えなしにゲームを進めようとしたら、熟練者が叱責する明確な理由はコレです。プレイヤーにはできる限り最速で最適な動きをして欲しいと思うのが他プレイヤーの真の気持ちなのです。
こういった現象を避けるには、ゲームを作る段階で対策を取る他ありません。
例えば「長ったらしいテキストと長ったらしい精神的動作そのものをなくす」だとか「自分の手番でできることを少なくしてローテーションを早くする」なんかが挙げられます。
「山札を切る」動作はどうしても時間を食うので、カードを山札に加えるなら「山札の一番下に加える」に置き換える等、工夫できるところがあります。
手番を短くするという点では、『UNO』なんかはわかりやすいです。自分の手番でできることはカードを出すことだけですからね。ターンが短いので自分の番が回ってくる時間がとても早く、集中力を切らす暇がないわけです。
もうひとつ工夫するならば、「手札」のようなプレイヤーが保持するカードを用意するなどが挙げられます。
手札があると、それを見てどうしようかああしようかと考えを巡らせるだけではなく、強制的に手が塞がる状況を作れるので他のことをやりにくいってわけです。手札なんて置いちゃえばいいじゃん!ともなりますが、『UNO』のように手番が短ければ置く暇もありません。『UNO』の完成度が高すぎる件について。
「ゲームマスターを決める」とか「カードのプレイ時には宣言を入れる」など後発的な解決策もありますが、あくまでカードゲームを作るときにどうすればいいかという課題を探っているので、できるだけ制作時に考えたいですよね。
そしてその製作者の考えはプレイ時に如実に現れてくれます。もちろん何も考えていない場合は、「作った人はなにも考えてなかったんだ・・・」という事実が現れます。絶対考えるようにしましょう。
かくしてこれがカードゲームを作るとき、第四に考えるべき事象「ゲームに臨むプレイヤーはどんな状態になるか?」です。
ここまで読んだあなたはもう立派な製作者です。ぜひこの世に新しいカードゲームを作ってプレイヤーを沸かせてやりましょう!
まとめ
いかがでしたでしょうか?文字ベースで書きすぎたので読むのが疲れたと思いますが、ここまで読んでくださりありがとうございます。
ちなみにこの記事のリライト元は5部編成になっており、これはその1部目にあたります。この記事はおよそ7000字使っているので、残りの文字数は未知数です!
またちょくちょくリライトしていこうと思うので、お暇なときに読んでみてください!
おわり
次の記事↓